こんなメロスは嫌だ。#熱海出張3

え、これ間に合わなくね?

いやいや。気づくのがあまりにも遅すぎる。
今こうやって振り返って書きながらも、自分への怒りが湧いてくる。

早速電車のドアが開いて急ごうとした。

しかし、ここは品川。品川オブサラリーマン。

階段の昇降や歩行、すべてのスピードが集団のなかで決められてしまう。誰か一人だけが急ぐことは許されない世界。
一定のスピードでしか動くことができない世界を歩く。
じれったい。心は焦る。

エスカレーターのように、小さな段差を等速で一段ずつ登っている頃、流石にこれは無理だと開き直った。払い戻しや時間の変更をしようと、スマートEXを開いた。

まさにその瞬間だった。

僕が階段を登り終わったとき、少し道がひらけたのだ。
現在9:02。

なるほどね。これが人生というやつだ。

人生がなぜ試練の連続と言われるのか。そのとき僕は改めて理解をした。

簡単に諦めさせてくれないから、人生は試練の連続なのだ。
スマートEXを開いて今まさに諦めようとしたその瞬間に、なぜ道が開けてしまうのだ?暗いトンネルの先に見えた小さな光が、絶望に見えた。

もうしょうがない。急ぐしかない。僕は自分の足を必死で振った。これでもかと足を前に出した。歩行という定義からやや逸脱したステップで急ぐ。

そして9:03。
発車の1分前になんとか改札に到着した。
ホームに駆け上がると、ちょうど新幹線がホームに向かって減速を始めていたところだった。

良かったぁ。

僕は間に合った。

…。

…。

いや。
これ間に合ってない。これは間に合ってないぞ。

ここから先は

852字
安い

都築怜の自撮り展

¥120 / 月 初月無料

不定期更新

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?