プロジェクトはどうやって生まれるのか | 日本初の山小屋再生が始まるまで #冷泉小屋再生プロジェクト
初めまして。冷泉小屋再生プロジェクトです。
このnote は長らくクローズしていた歴史ある乗鞍岳の山小屋「冷泉小屋」の再オープンを目指す、日本初の参加型山小屋再生プロジェクトの記録です。
冷泉小屋とは?
長野県松本市と岐阜県高山市にまたがる乗鞍岳の中腹にある山小屋。小屋のすぐ脇に湧いている4℃の硫黄冷泉が名前の由来。2006年から閉鎖中。
新オーナー村田淳一にとってもなにせ初めてのことだらけ。目の前には(文字通り)山がそびえ立っています。山を愛する人も、新しい挑戦が好きな人も、なんとなくこのプロジェクトが気になった人も、一緒に登り道を歩んでいただけると嬉しいです。
第1回は村田淳一にプロジェクトが生まれた経緯をインタビュー。なぜ彼が新オーナーになろうと思ったのか?プロジェクトの発端は?を振り返ってみました。
インタビュアーは広報係・石原です。知り合いのSNSでこのプロジェクトを見て「これは何か面白いことが起こるかも!」という予感で広報係として参加しました。登山経験ほぼゼロの私が見た冷泉小屋再生のプロセスをお伝えしていきます。
乗鞍岳は…興味がなかった!?でも山遊びのポテンシャルが高い
――村田さんは映像制作会社のプロデューサーで、山小屋とはかけ離れた職業に思えますが、趣味の登山で乗鞍岳に行っていたのですか?
いや、乗鞍岳って興味なかったんです。
――えええ!?(笑)
普段1か月に1回くらいは登山しますが、乗鞍岳は登ったことがなかった。3000m級なのに頂上近くまで道路(乗鞍スカイライン)が通っていてあまり登る距離がないことと、尾根を伝って歩く縦走ができないので、そんなに魅力を感じていなかった(笑)。
ご縁があっていつのまにかプロジェクトが始まってて、その中で欲張りにいろいろ遊べるポテンシャルがある山だとわかったんです。
登山初心者でも登れる。山小屋に泊って早朝にゆっくりご来光を見に登ってもいい。道路があるからスポーツバイクを楽しむ人もいる。もちろんガチで登りたい人は麓から登ってもいい。
――山遊びっていろいろあるんですね。村田さんが山遊びや登山を始めたきっかけは?
小学校の合宿がアウトドアだったり、カヌーやバイクでツーリングをしていたりして若い時からよくアウトドアには触れていたけど、登山は10年くらい前からです。
カヌーも趣味ですが、高校生のときに野田知佑さんの『日本の川を旅する』を読んで以来、ずーーーっとやりたかったけど、30歳になって「サラリーマン転覆隊」に誘ってもらうまで、入り口がなかったんです。登山もやりたいとはずっと思っていたけど、きっかけがなくてなかなか始められなくて。
野田知佑『日本の川を旅する』https://amzn.to/3nuz3El
「サラリーマン転覆隊」とは?
日本で一番過激でヘタなカヌーチームとも言われるアウトドア冒険隊。モットーは「命の保証はない!感動の保証はある!」
https://www.facebook.com/tenpukutai1988
そんな中、両親がリタイアして長野県安曇野市に引っ越してから登山を始めました。北アルプスの穂高や燕岳、常念岳などの登山道がすぐそこにあるのに「これで登山しなかったら帰省するたび後悔するぞ!」と思った。
2011年秋にサラリーマン転覆隊メンバーであり秋田公立美術大学の阪口正太郎さんに蝶ヶ岳と常念岳に連れて行ってもらいました。でも二人ともヘタレだから、歩く距離はちょっとだけで、午後から山小屋でずっと酒を飲んでました(笑)。
「すき焼き鍋と生卵と牛肉を背負って登る」
――その当時の印象的な登山経験はありますか?
2回めは山梨の瑞牆山・金峰山に独りで登って、「まだいける」と信じて赤岳に登ったり、槍ヶ岳でテントが重すぎて日暮れまで目的地にたどり着かなかったり…
マッターホルンに登りたいと言い出した転覆隊隊長の本田亮さん とトレーニングで、奥穂高で雪と氷の練習をしたときは、山開き取材に来ていた記者さんに取材されて新聞記事に載りました。(※上記が当時の写真。手前の白ヘルメットが本田さん、奥の青ヘルメットが村田)
つらかったけど、そのあと飲んだビールは美味しかったなあ~。
――初心者にしては大胆な登山プラン…常に美味しいものとお酒がそこにあったんですね。
転覆隊では美味しいモノに本気なので、山頂ですき焼きをするために、専用鍋と牛肉と生卵で背負っていったこともあります。一度ペットボトルでウィスキーを持っていったけど「酒に対するリスペクトがない」と反省して、それ以来瓶で持っていき、瓶は持って帰ります。2キロの酒を諦めるくらいなら2キロ体重を減らすくらいの気持ち(キリッ)。山と、おいしい酒と食べ物。それが原点。
――登山を続ける魅力ってどこにあるのでしょうか。
週末にバスですっと行ける、ぎりぎりまで仕事してても気分を切り替えられる、自然に触れられる登山はやっぱりいいなあと思います。
あと…時間が分断して意識が前後で変わるんです。
歩き始めて最初の1時間くらいは仕事のことや辛かったことをずっと考えて、気持ちの滓(おり)が表面に出てくるんですが、歩いているうちに無になる。考えているようで考えていない状態になり、そのあと頭がすっきりする。
「山はいいけど、山小屋は嫌だよね」そんなシンプルな気持ちがスタート地点
――趣味で登山をしていたところから、今回のプロジェクト結びついたきっかけはあったのですか?
2018年にアウトドア向けアプリなどを開発しているYAMAPさんが、知り合いの会社に「新しい技術で山を新しくするPRをしたい」と相談したことがきっかけです。僕も山好きで、当時仕事で新規事業開発を担当していたのでプロジェクトに参加しました。
ミッションは、今の登山人口は50代以上が半分を超え高齢化が進んでいるので、登山を楽しむ人のすそ野を広げること。
一方、AIなどが入ってきて産業が変わったら、レジャーはむしろ身体を使って自然に触れあう方向に進むだろうから、登山のポテンシャルはあると考えました。技術を活用して、新しい登山者を呼ぶような魅力的な価値を提供することはできないかと議論し始めました。
その中で出てきたのが「山登りはいいけど、山小屋は嫌だよね」というひとこと。狭いし、きれいじゃないし、消灯時間は早いし…!夜に酒を飲む楽しみがないじゃないですか。
――(やっぱり夜はお酒が飲みたいらしい…)
もっと登山の拠点を便利に快適にできないかと考え始め、山の麓にある別荘を買い取って宿泊施設や登山者の荷物を運搬する拠点にするというアイデアや、既存の山小屋をリノベーションするというアイデアが出てきました。
ちようどそのとき白馬村の八宝池山荘と冷泉小屋が経営を譲りたいと聞きつけて候補に挙げていました。ですが、冷泉小屋は現地に行って見たらボロボロだし、小さいし…その時の優先順位は低かった。
――当時はあくまでも企業のプロジェクトの候補として冷泉小屋に出会ったんですね。
そう。
検討した結果、企業プロジェクトはクロージングしたので、本来ならそこでおしまいでした。
山小屋の経営は、なんと世襲制
――それで個人でオーナーになりたいとすぐ手を挙げたんですか?
いや、そんなこともなくて(笑)。
自分でやるなんて思ってなかった。
――(あれれ笑)
実は山小屋の経営は、世襲制。国立公園や国有林にある小屋は、林野庁(農林水産省の外庁)から土地を借りて営業しています。その経営権は林野庁が管理し、世襲制になっていて、親から子へ譲渡したケースしかありません。個人が簡単に譲り受けられるものではないし、経営も難しい。
だから一度は諦めたのだけど、でもずっとどこかで引っかかっていた。
それには現在の冷泉小屋の経営権を持っている筒木東洋男さん(写真右)の存在も大きいです。現在は乗鞍の麓にある旅館金山のオーナーをされていますが、彼の「冷泉小屋を続けてほしい」という強い思いと、存続のためなら世襲にこだわらず譲りたいというオープンな姿勢が素晴らしいなと思ってました。
――(注)日本には200以上の山小屋があると言われていますが、経営難で廃業するケースも多数あります。またコロナ禍で拍車がかかっているともいわれています。
なにより、あるすごく天気がよい日に乗鞍岳に登ったら、頂上は360度見渡せたんです。穂高から八ヶ岳から、富山のほうまで。「ああ、この風景はここにしかないな」と思ったこと。
それに冷泉小屋の目の前には小屋の名前の由来になった「冷泉」が湧いています。夏でも4℃くらいの冷たい硫黄泉なんですけど、見ているうちに「これ温泉にして入りたいな」と思っちゃって(笑)。
じわじわやる気になって、結局「やるしかないか」という状況になってました(笑)。オンラインイベントを2020年5月にやって、これで「やらねば」モードに入りました。
「どうするか」を考える、イチからのチャレンジ
――ついに始動してしまった冷泉小屋再生プロジェクトですが、今後どのように進んでいくのでしょうか。
「どうするか」自体を考えることからです。
林野庁にとっても現オーナーの筒木さんにとっても自分たちにとっても初めての「山小屋移譲」ですし、建築とか資金とか、運営とか…
もう…意外と大変!!!
――”プロジェクト”というと手順が決まったものを想像しますが、プロセス自体も手探りでクリエイティブですね。その「意外と大変」を次回聞かせてください!
日本初の山小屋再生プロジェクトはまだまだこれから。参加型のプロジェクトです。
オンラインイベントを見たい、運営に携わってみたい、投資家になりたいなど、さまざまなカタチでご参加いただけます。
SNSでも随時情報発信中です。
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