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サクと、ナツと、水泳と、

「サクって何時に寝るの?」
「サクってどんな食べものが好きなの?」
「サクってJr.オリンピックに出られると思う?」

サクのことが気になって仕方がない男の子がいる。学校も水泳教室も同じ。
とりあえず、その子のことは“ナツ”と呼ぶことにする。

サクがまだ水泳の選手クラスに上がる前に、サクと同じ時間帯でナツが泳いでいるのを見かけたことがある。
ただ泳ぐことに飽きたのか水中ででんぐり返しをしたりふざけていてコーチから注意されていた。
プールの上から観ている私達と、背泳ぎをしているナツの目があうとピースをしてくれた。

サクが選手クラスに上がって時間帯が変わってから見かけなくなってしまったが、ついこの前ナツもサクを追いかけるように選手クラスに上がってきた。

以前のふざけてばかりいた様子から考えると、その後はかなり頑張ったに違いない。そして、多分、元々の運動能力も高いのだろう。

「サク勝負だ!」とサクに競争を持ちかけるらしいが、いつもサクの圧勝に終わるようだ。

「あんなやつ相手にならないよ」とサクは鼻で笑っている。


さて、先日のこと、コーチからサクに選手クラス(特進)への異動の打診があった。
選手クラス(特進)は、水泳教室で最も上位のクラスで、中学生や高校生までいるクラスになる。時間も夜20時までとかなりハードとなっている。

私はサクに、サクがやる気があるならサポートしてあげたいと思っていると伝えた。
(本当は、そこまでハードにやるのは早い気もするし、家族みんなで食卓を囲むことができなくなることを寂しく思っているが、そのことは言わなかった。)

サクも迷ったようだが、今日、コーチに選手クラス(特進)へ進む意思があることを伝えたということだった。


そして今日の水泳教室の帰り際に、ナツにもそのことを伝えた。ナツは「え、うそ…」と言って固まってしまったらしい。

やっと追いついたと思ったら、またサクが先に行ってしまった。しかも今度は追いつくためにはさらに高いハードルがある。ナツもそのことがわかっているのだろう。

多分、ナツはサクのことが好きだ。
もしかしたら初恋かもしれない。


大変だろうけど、それでも君が頑張ってサクに追いついて、そして、いつかサクを追い抜かすような物語を見てみたい。男ならそうでなくちゃね。

サクとナツと水泳の物語がどうなるのか楽しみにしている。




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