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星川サラ『きみとのShining Days』全曲レビュー ーー恋する乙女は止まらない
『きみとのShining Days』は、にじさんじ所属のバーチャルユーチューバー星川サラが2023年4月に発表した1stアルバムである。
1. 恋の押し売り
作詞・作曲・編曲:HoneyWorks
昔からHoneyWorks好きを公言してきた星川さんにとっては、夢がかなった一曲。HoneyWorksはこれまで、陽キャと言われている人たちでも、人前ではいいにくいことを歌詞に込めてきた。例えば『可愛くてごめん』では、他の人よりも自分が可愛くなったことを思いっきり誇る曲であり、Vtuberやアイドルの世界でも有名な『ファンサ』では、エゴサでひっかかったアンチのコメントに対しても戦って、
HoneyWorksは、「承認欲求だ!」とか「出しゃばってる!」とか言われて怖がっている子たちに、「君たちは出しゃばっていいんだ!」と思いっきり背中を押してくれる存在なんだろう。
そして、HoneyWorksが星川さんに渡した曲は、もはや解説も必要ないくらい、明確に星川さんが鳴りたい姿を映した曲だった。
「私、君に出会えて変わったの! そりゃあ悩んじゃうこともあるけど...もっともっと可愛くなりたいって思うし 何より君に好きって言ってもらいたい!」
この曲もまた、欲張りで活発な女の子たちの背中を押す歌になっているのだろう。
(2021年に星川さんはHoneyWorksのトリビュート盤に参加している)
2. 愛ゆえ
作詞:すぅ
作曲:クボナオキ(M-AG)
編曲:クボナオキ(M-AG)、サトウコウスケ(M-AG)
跳ねるようなボーカルラインが、ドキドキしている乙女の心情を表したような楽しい一曲。Aメロ⇒Bメロ⇒Cメロのつなぎ方があまりに滑らかで、知らず知らずのうちに聞いているこっちがノリノリになっていそうである。
サビでは「You」「ごめんね」「けどね」「愛」と頭の4音符を強く印象付けるようにメロディを配置している。
3. ないしょの香り
作詞・作曲:カノエラナ
編曲:EFFY
1~2曲目とストレートに明るい曲が続いたが、3曲目では小悪魔的な一面をのぞかせる歌が入っていた。音符通りに歌う歌のうまさというか、この曲は聞いているとシャイな男の子を翻弄している女の子が思い浮かぶような、声優的な歌のうまさを感じる一曲。
4. チェリーなシークレット
作詞:やぎぬまかな
作曲・編曲:宮野弦士
3~4曲目と、連続で秘密をテーマにした曲。エレクトーンの小刻みに刻まれた音から始まった曲は、「どんどん」「だんだん」「ぜんぜん」と韻踏みや文字数によって造られたリズムが心地よい。
チェリーというのは、結構ストレートに性的なモチーフでもあり、この曲全体もそういうイメージで聞けるのだが、この曲では星川さんの声があかるいせいか、意外と不破湊さん的な闇の帝国感はない。
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— 宮野弦士(みやのげんと) (@GentoMiyano) July 24, 2023
5. POPPIN’
作詞:JUN
作曲:久保田真悟(Jazzin’park)、栗原暁(Jazzin’park)
編曲:久保田真悟(Jazzin’park)
一聴した時にびっくりしたが、全部英語で歌われている一曲。
ただし、使われている単語はまっすぐで、女の子がいかに美しくありたいか、そして、誰にも私を止められないとまっすぐ歌われている。
型にはめられない自由さが、はじけるようなチューンの中にいっぱい詰め込められている一曲。
6. きみいろ
作詞・作曲・編曲:秋浦智裕
6曲目は、きみとわたしの物語を少しずつ綴るような、静かなバラードになっている。ただ、このアルバムを通してエレクトーンやオルガンの音が使われているのは、女の子のキラキラした世界を表したいという星川さんの希望を音楽家の人たちが叶えた部分もあるだろう。
Vtuberで直球のラブソングを歌う人はこれまであまりいなかったが、その中でこの曲はハッキリ人に「大好き」を伝えようとしている。
今の時代には貴重な、どこまでもまっすぐ好きを伝えるラブソングである。
7. こころミルキーウェイ!
作詞:宮嶋淳子
作曲:小幡康裕
編曲:山下洋介
6曲目から続いて、もっともっと「好き」を伝えるために、作られた曲。
1曲目や2曲目はほんの少し恥じらいを感じるところがあったが、この曲まで率直でストレートにラブを伝えようとする曲はなかなか珍しい。
おそらくアルバム曲の中で一番キーが高い曲でもあるが、その分歌う時の一生懸命さも伝わってくる。このアルバムのレビューは他のアルバムレビューに比べて語数が少なくなったが、それはこのアルバムが悪いわけではなく、ここまでまっすぐに「好き」を伝えようとした素晴らしいアルバムに、これ以上の言葉はあまり必要ないな、とちょっと思ってしまったからである。
星川サラは、にじさんじ所属のバーチャルライバー。バンダイナムコのプロジェクト「電音部」のキャラ「大賀ルキア」担当。日英ハーフであり、英語もできる。2024年にはにじさんじGTAの大会も主菜した。