「今まで通り」での数字達成に限界を感じている営業マネージャーへ(前編)- 営業現場で起きている課題

こんにちは、水嶋玲以仁(みずしま れいに)です。

今日は、私達が提唱している「営業のデジタルシフト」の意義について、セールス、つまり営業現場の観点から語ってみたいと思います。

セールス部門とマーケティング部門を比べると、一般的にデジタル活用や新しい手法に対するアンテナが高いのはマーケティング部門です。インターネットが普及し広告の在り方が変わって久しい今、マーケティング業務とデジタルは切っても切れない関係性ですし、時流を見極めた施策を打つ必要があるのですから、ある種当然です。

「デジタルを活用してもっと売れる仕組みを作っていきたい」と私達にお声がけを下さるのも、まずはマーケティング強化のご要望からであることも少なくありません。

一方で、生の顧客に相対し、モノが売れるまでの泥臭いプロセスを日々実践している営業からすれば、「広く認知されたからと言ってそれで簡単にモノが売れるわけではない」シビアな感覚があるのも事実で、だからこそ「デジタル化」という言葉には抵抗感を持ちがちです。

また、1:1の人間同士のコミュニケーションにおいては時流性よりも関係性の構築が大事な分、各々の営業マンがそれぞれのキャラクターや得意に合わせて洗練してきたやり方を大きく変える必要を感じにくいのも、マーケとの大きな違いでしょう。

私がこの記事で伝えたいのは、そんな営業の人たちこそが「営業のデジタルシフト」の必要性を本当に知っている人たちであること、だからこそ営業部門が主体性をもってデジタルシフトをリードするべきだということです。

これまで大小様々(従業員200人規模~数万人規模まで)、業種もITから金融までと、数多くの日本企業の営業プロセス改革に関わってきましたが、どの会社の営業マネジメント層にも共通する悩みがあります。

今日は、そうした現場の営業部門の方々が抱える苦労や問題、その解決の糸口について書いていきたいと思います。

本記事は、主に営業のマネジメントに課題を持つ中堅~大企業の営業マネージャーの方向けをイメージして書いたものですが、様々な規模・業種の全ての営業に関わる方にお役立ていただける内容かと思いますので、是非ご一読ください。

もう限界だ!がみんなの本音

営業はいつの世も会社の売上の要です。その分会社からの期待は大きく、受注をとってきた時、難攻不落と思われた顧客を開拓できた時、目標を達成した時、担当顧客に感謝された時…様々なタイミングでやりがいを感じられる仕事であるのは間違いないでしょう。

ただその期待の大きさの分だけ、営業マネジメントという仕事が年々苦しさを増す仕事であるのもまた事実です。

会社という生き物は、右肩上がりの成長を求められるのが常です。必然的に、営業現場には毎年、積み増しされた営業目標が降りてくることになります。さらに昨今の人材市場の流動性からすれば人の定着も不安定で、営業目標と見込み数字のギャップにくらくらしていたら、追い打ちをかけるように優秀な部下の離職希望なんかが飛び込んできて、案件を一人で回せる人員が少ない、常に人手不足で苦しい、マネージャーの自分も業務に忙殺されている…というのは、営業マネージャーからよく聞かれる悩みです。

どうしても生まれる「行きやすい顧客」と「行きにくい顧客」

そうして目標数字の達成と目の前の案件対応に追われていれば、つい犠牲になりがちなのは「新規開拓」です。世にいる営業マンのうち「自分の担当範囲の案件可能性は網羅できています!」と断言できる営業マンが一体どれだけいるでしょうか。どうしても営業マンにとって「行きやすい顧客」と「行きにくい顧客」は生まれます。

長い目で見れば必要だとわかってはいても、優先度の高い案件がそばにあれば、実るかわからない見込顧客への活動にかける工数に限界があるのは至極当然のことです。

いくら優秀な営業マンであっても「全部やれ」は無茶ぶりなのです。手元の案件を成約に導くために丁寧に顧客の話を聞き、資料を作り、契約交渉をし、想定外のトラブルにも対応しながら、数字を管理し経営に報告し、一方で新規顧客も地道に開拓し続ける…なんてことは、例えスーパーマンであっても難しいでしょう。

でも会社は常に「今期の数字は確実に達成しろ」「来期はもっと高い数字目標になるからを積上げも頑張れよ」と現場に求め続けています。

いよいよ、これまでの営業方法では通用しない時代に移行した

そんなただでさえ厳しい営業現場にさらに追い打ちをかけたのがCOVID19です。COVID19が社会にもたらした変化は、営業の現場を様変わりさせました。顧客側の受けた経済的打撃で買い控えが起きたというような直接的な影響もありますが、これまで当たり前だった「営業のやり方」も大きく変えてしまいました。

リモート時代は、これまで通用していた「寝技」は使えません。会社に人がいるのが当たり前ではなくなり、電話も通じなければ、「ちょっと立ち寄ってみました」では会いたい人に会えない。対面でなくなった分、かつてはその場の空気・長年の経験から得られる肌感から感じとっていた先方の反応がつかみづらくなったのも大きな打撃です。

マネジメントの立場でも、部下との対面コミュニケーションが減ったことで、日々の営業活動や案件の状況がことさら見えづらくなったとの声も聞こえます。

COVID19の感染者数が落ち着いてくれば、徐々に元の世界に戻るようにも思われますが、営業の変化は不可逆です。リモートワークが残り続ける企業も多いでしょうし、そもそも、COVID19以前から営業の前提条件は既に変わりつつあったからです。

10年前と比較しても、顧客の購買行動自体が大きく変化しています。BtoCにおいては特に顕著ですが、この記事が読んでいるあなたも何か欲しいものがあるときは特定の営業マンからではなく、まずはネットでの情報収集もしくは知り合いからの客観的な意見を得ようとするのではないでしょうか。

BtoBにおいても、サブスクリプションモデルが主流になり乗り換えが容易になりつつある現在は、顧客の購買行動はよりBtoCに近づいていると言われています。要は情報の「透明性」や「分かりやすさ・明瞭さ」というものがより重要になっているのです。

以前は、顧客のメインの情報源は営業担当であり、良くも悪くも顧客の耳に入る情報を営業がある程度コントロールできました。しかし今の顧客は様々な情報ソースに触れている分、相対する営業に対しても情報の分かりやすさや透明性を求める傾向にあります。

そうした顧客に対応するように、競合も確実に変化しています。今はどこも潜在顧客との接点作りとしてデジタル活用に力を入れるのは当たり前です。

ためしに商材に関連するキーワードでWeb検索をしてみてください。まず目につくのは競合と自社のどちらか?自社のサイトは見やすいか?製品の魅力が伝わっているか?製品の詳細情報をもっと知りたいと思った時にアクションを起こしやすいか?…を改めて客観的な目線でチェックしてみましょう。

まず目につくのが競合で、かつ競合が印象よく顧客が求める情報を分かりやすく開示しているようであれば、その時点で一歩先を行かれているのは間違いありません。

「ブラックボックスが当たり前」のこれまでの営業活動

長年、営業活動はある種の営業マンの属人的な「魔法」もしくは「聖域」として扱われてきました。先方のキーマンと個人的な関係がガッチリできていたり長年担当しているなどで「その顧客に関しては誰々に聞け」と会社の中で生き字引のように扱われている営業マンがいたりしますが、誰もその活動を客観的には評価できません。

そうした営業マンの勘所は思慮に富み、きめ細やかなサポートも可能にすることは間違いありませんが、一方でその属人性は担当営業の異動や離職で「顧客情報」「顧客との関係性」という会社としての資産を失いかねないリスクもはらんでいます。

またマネジメントの観点からしても、個別の案件については部下からの感覚的な報告頼みになってしまうのも、これまでの営業現場のあるあるでした。

営業はもっと楽に、もっと進化できる

営業の人手不足、新規開拓に割くリソースの確保の難しさ、属人的な関係性…そうした様々な営業現場の課題に対する解決策が、私は「営業のデジタルシフト」だと考えています。

数字達成への手を尽くし限界を感じている営業マネジメントにこそ、私は「もっと広くマーケットをカバー」し「より高い数字目標の達成」を「今より楽に実現」することは決して無理じゃないと伝えたいのです。

そう断言できる背景には、私自身がMicrosoftやGoogleといった外資系企業で徹底的に仕組み化された営業プロセスを学んできたことがあります。日本企業と外資系企業の文化の違いはあれども、そうした仕組み化のエッセンスを導入することで、日本企業ならではの営業のきめ細やかさや手厚さを活かしながら、より生産性の高い営業組織を作ることは可能です。

とはいえ、単に「営業のデジタルシフト」と言われても、日々の営業活動をどう変えられるのか、イメージするのは難しいでしょう。

これからその方法論を語っていきたいと思いますが、ここまでで少し長くなってしまいましたので、詳細は別の記事に分けさせていただきます。

次の記事では特に営業の方々向けの目線から、基本的なキーワードの説明と、その具体的な内容についてお伝えします。

↓後編はこちら↓

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営業のデジタル化についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

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