『軽い男じゃないのよ』- 今月のMOVIE REVIEW | Purple Screen Feature vol.2
🎬Purple Screen Features🎬
ジェンダーイシューに興味がある方、イベントに参加はできないけどセレクトされた映画を知りたい方、純粋に映画が好きな方etc...に向けて、Purple Screenメンバーが毎月一本の映画をピックアップして皆さんにお届けします🎁
毎週日曜日に開催しているPurple Screenは、映画や映像コンテンツを「ジェンダー」の観点から議論し、共に考えたり学んだりしたい人たちのためのムービークラブ。詳細はこちら👇
今月はPurple Screenを主催する、REINGのEdoのおすすめです。
🎬今月の映画🎬
『軽い男じゃないのよ』(原題:I am note an easy man)
『軽い男じゃないのよ(原題:I am note an easy man.)』は、ラブコメディで古典的な比喩が面白い映画。女嫌いの主人公が頭を打ってしまい「女性が支配し、男性が客体化されている」という、現実とは逆さまの世界で目を覚ますシーンから物語は始まる。本作品の面白さは、嫌われ者の主人公が彼がこれまで女性に対して行ってきた扱いを自身が経験するところだが、より興味深いポイントは他のところにある。
それは”女性が権力を握っている世界”を観ることの重要性だ。初めは衝撃的で非日常的なシナリオのように思えるが、映画が進むにつれて”非日常”から”日常”へと変化していく。このような世界があり得ることを教えてくれるし、現実世界においてもチャンスさえあれば力関係が逆さまの世界に慣れることができるのではないだろうか。とはいえ、この二項対立の面白いところは、本作品が”女性の支配する世界”をパラダイスだとかジェンダー問題の解決策として提示しているわけではなく、あくまでも現在の家父長制の残る社会とは異なる選択肢の1つとして提示していることだ。
私たちは「フェミニズムは男性に対する運動である」という一次元的な議論を過去を省みて、両方の世界をそれぞれ問題視している。劇中では、女性だけで統治されていれば社会は確かに違っていただろうということを伝えようとしているが、その方が良くなるとは言っていない。 最初は女性の主人公がパワフルな女性として描かれているが、最終的には男性が支配していた世界での男と同じように嫌な女であることがわかる。 両方の世界の欠点を見せることで、この映画は、誰もが平等にチャンスを与えられて初めて社会が改善されることを示唆しているのかもしれない。権力の力学は危険であり、進歩とは、その力学がより公正な均衡に達するのを助けることを意味する。一つのグループが完全に権力を握っているときには社会は何も良くならず、すべてのグループが尊重されて平等な立場になり、権力が多様化したときにのみ、真の意味で進歩したと言うことができるのではないだろうか。
映画製作の観点から見ると、この映画は確かに革命的な傑作ではないが、多くの観客にジェンダー問題をより身近なものとして考えてもらうきっかけを作ったという点において、ジェンダー関連の映画の中で大きな価値のある作品だと私は思う。
Recommender: Edo Oliver
Writer : Ai O’Higgins
Editor:Yuri Abo
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