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しぜんのかがくep.71(1/31) 観天望気&災害から命を守る諺(ことわざ)

雲や空、動物の行動や植物の状態、自然の姿を見て、これから天気がどう変わるか、何が起こるかを予想することを「観天望気(かんてんぼうき)」といいます。
現在のような気象予報の情報がなかった時代、昔の人々は、天気を予測するのに風の向きを感じ、空を見あげて天気を予想していたんですね。
例えば「ツバメが低く飛ぶと雨」「夕焼けが綺麗だと次の日は晴れる」など聞いたことありますか?
また、災害から命を守るために先人が伝えてきた、諺(ことわざ)も地域に残っています。例えば…「二百十日は農家の厄日」「津波てんでんこ」などです。
科学的に正しいものばかりではありませんが、いくつか面白いもの、科学的に根拠があるものもあります。次にご紹介していきましょう。

科学的に根拠がある諺

○空に飛行機雲が残ると雨

飛行機✈️は上空一万メートルの高さを飛んでいます。気温はマイナス40度くらいなので、飛行機からの排気ガスに含まれる水蒸気が冷やされて水滴や氷の粒になり、飛行機雲が目に見えるようになります。
飛行機雲が長ーく残っているのはその上空の湿度が高いことを示します。飛行機雲がすぐなくなる時は乾燥しているのですね。
低気圧や台風が近づき、多くの水蒸気を含む湿度が高い空気が上昇していると、雨になる可能性がありますね。

○夕焼けが綺麗だと次の日は晴れ

春と秋によく当たる諺ですね。春と秋は梅雨や秋雨前線の時期。低気圧と高気圧が交互に日本に近づいてくることが多く、周期的に天気が変わります。
地球の自転による偏西風によって、日本列島では西から天気が変わります。


西側に見える夕焼けが綺麗だと、天気が晴れる高気圧が西から近づいていることになりますね。反対に朝焼けが綺麗だと、高気圧が遠ざかっているため、次に低気圧が来る(高気圧と低気圧が交互に来る)ので、雨が降ることを予想できるのですね。

○燕が低く飛ぶと雨が近い

この諺は春のみ通用するのかもしれません。燕は春に南の方(東南アジア)から子育てのために日本にやってくる渡り鳥ですね。
燕が低く飛ぶ理由は、その餌の昆虫にあります。ツバメの餌となる羽のある小さな昆虫(例えばハエや蚊など)は、空気中の水分量が多く空気が湿っていると、湿り気で羽根や身体が重くなり高所を飛べず、低所を飛ぶようになるんですね。そうすると、それを餌にするツバメも必然的に低く飛ぶようになります。

○遠くの音が聞こえると、天気が悪くなる

気温によって、音の聞こえ方が異なるので、このような現象が起こります。気温が高いと音が早く伝わります(空気中の分子を振動させながら、音は伝わります)。分子の動きは温度が高いと激しくなり、早く伝わるようになります。気温が1℃上がるごとに音速は約0.61メートル毎秒速くなるそうです。
また、空気中に水蒸気が多いと乾燥しているより、音は伝わりやすくなります。音の伝わる速さは空気中では約340m/秒、水中では約1,500m/秒と、水中の方が4〜5倍速く伝わりますので、水分が多く含まれている空気は音を伝えやすいんですね。
低気圧(天気が悪くなる)が近づいてくると、上空に湿った温かい空気が流れ込んできます。地上付近は反対に気温が低くなり、音は上空を伝わって、水平方向に遠くまで聞こえるようになります。

参考URL(図で見るとよりわかりやすいです。)

https://www.club-t.com/tabinotomo/science/20181110.htm

雪の中の静けさが私はとても好きです。雪の結晶が音の振動を吸収するので、音が遠くまで伝わりづらくなるからですね。雪は積もると地面を反射する音も吸収するので、より「しんとした静けさ」となります。

ほんとかな?でも知っておくと、ためになるかもしれない諺

○ネコが顔を洗うと雨

空気中に湿気が多くなると、ネコのヒゲが伸び、それが気になって、猫は手を顔に近付けるそうです。低気圧が近づくと猫は不安を感じ、ストレス解消のために毛づくろいを始めるという話や、湿度が高くなることで顔についたノミの動きが活発になり、顔がかゆくてこするようになるという説もあるそうです。でも、猫は自分の体を舐めることでセルフグルーミングしており、寝起きや食事の後に毎日行うそうなので、本当かな?と思ってしまいますね。

○星がよくまたたくと、風が強くなる。

星は、太陽と同じ恒星で自分で光を出しています。その光が地球上の空気を通ってくる時に、大気中の温度や湿度、気圧の変化によって空気の層が揺らぎ、星の光の屈折率が変化するため、星の光は瞬いて見えるんですね。
風が強くなると空気の層が揺らいで早く瞬くように見えるかもしれませんが…その違いはよくわかりませんね。

○モズの早贄(はやにえ)の高さで冬の雪の多さがわかる。

モズは、10月から12月ごろにかけて、捕らえた餌を木の枝などに、餌である昆虫や小動物(カエルなど)突き刺す早贄という習性があります。冬の餌がなくなる時期に食べるための保存食、縄張りを主張していると言われています。確かに雪に埋もれると、早贄は見えなくなりますよね。だから高いところに早贄を突き刺す?早贄の高さが、雪の積雪量になるとは?占いのようなものかもしれませんね。
1月には、この保存食の早贄は食べてしまうそうです。2月の繁殖期に備えて、より栄養を蓄えたオスは、メスへの求愛のための鳴き声が早口になりモテるという研究結果があります。

モズの『はやにえ』の機能をついに解明!―はやにえを食べたモズの雄は、歌が上手になり雌にモテる― 大阪市立大学
https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2019/190513

防災に関係する諺

○二百十日は農家の厄日

これは、以前「しぜんのかがく9月ep.10防災まめ知識〜台風の備え〜」

でもお話ししましたね。立春(2月4日)から数えて二百十日の日が、太陽暦では9月1日ころにあたり、220日目の二百二十日とともに、台風が来襲する「厄日」とされています。
富山の「おわら風の盆の祭り」は、米有力紙ニューヨーク・タイムズ電子版(1月7日)で、世界の旅行先で「2025年に行くべき52カ所」に選ばれていますね。、富山の魅力を「混雑を回避しながら文化的な感動とグルメを楽しめる」と評価されています。

○津波てんでんこ

「津波てんでんこ」は、三陸地方で古くから伝えられてきた「命てんでんこ」に由来する言葉で、「津波が来たら、それぞれが別々に逃げる」という教訓を伝える言葉ですね。明治29年、昭和8年の明治三陸沖地震から言い伝えられてきました。岩手県釜石市の子供達は、2004年から防災教育でこの言葉を学んでおり、3.11の震災でも多くの人の命を救ったことで、とても有名な諺になりました。先人から伝わる言い伝えが、現代にも伝わったからこそ、人の命を救った事例となりますね。

○蛇抜けの前には、きな臭い匂いがする

「蛇抜け」については、1月17日のしぜんのかがくep.69でもお話ししましたね。「土砂災害」を表しています。長野県南木曽町(なぎそまち)に伝わる言い伝えです。
土砂崩れの直前には土のにおいがするんですね。これは、ゲオスミンという化学物質だそうです。物質名は「大地の臭い」を意味します。
土の中にいる土壌細菌が作り出す匂いで、雨が降った後は、特に土から蒸発する水分と一緒にゲオスミンが放出されます。カビ臭いような独特な香りで、なんとなくわかる人もいるかもしれませんね。
特に土砂災害の前などは土が雨の水でかき混ぜられ、強く感じられるそうです。人間は特にこの匂いに敏感で、5ppt程度の濃度でもそのにおいを感じることができます(アルコール臭の8万分の1でも検知可能)。

土砂災害警戒区域に自宅がある人は、この土の匂いや、地鳴りや山鳴りがする(例えば、山全体がうなっているような音がしたり、地震のようにふるえる、木がさける音や、木の根が切れる音がする)ときなど、いつもと違うと思ったら、すぐに避難を開始してほしいと思います。

○白い雨が降ると蛇抜けが起こる。

長野県南木曽町(なぎそまち)の言い伝えだそうです。雨が滝のように降ると周りが白っぽくなって見通しが悪くなり、地面からの雨粒の跳ね返りの飛沫(しぶき)で白い雨に見えることがあります。
おおよそ1時間に50ミリ以上の雨が「白い雨」になります。このような雨が降ると、傘が役に立たず体がずぶ濡れになってしまいます。
このような雨が長く続くと「蛇抜け」=土砂災害が起こる可能性が高まります。

○夏は積乱雲から涼風が来る。

これは、実感としてわかる人もいるかもしれません。夏の積乱雲は背が高く、激しい上昇気流が発生します。上空に行くほど冷やされて発生した氷の粒が、上昇と下降を繰り返すことで重たくなり、地上に降りてきて、雹(ひょう)や霰(あられ)、または大粒の雨となります。これと一緒に冷たい雨が降りてきて地表に吹き付けます
このように、積乱雲から流れ出た冷気の先端部分で周囲の湿った空気が持ち上げられて発生する特徴的な形をしている雲のことを、アーククラウドと言います。周囲に向かって冷たい空気が勢いよく吹き出し、ガストフロントという突風を引き起こすことがあります。

○白雲糸を引けば暴風雨

白い糸のような雲というと「巻雲」ですね。かなり高いところ(5,000 m ~ 13,000 m)にある雲です。上空の風が強い時や、南から発達した低気圧が近づいている時に、この雲ができます。

温帯低気圧が近づいてくるときには、まず巻積雲(イワシ雲、うろこ雲)が広がってきます。やがて巻層雲から高層雲と、現れる雲が変わっていくと天気が崩れるサインです。

参考文献:ことわざに学ぶ気象災害から命を守る知恵 河出書房

防災ひとこと

感覚を研ぎ澄まし、自然を感じて災害を防ごう。

観天望気や災害に関することわざは、先人が経験から伝えられてきたものです。現在の気象予報や警報は、気象衛星やスーパーコンピューターなどの観測技術によって、かなり正確な予測ができるようになってきました(昨年(2024年)から気象庁で運用が開始された線状降水帯などの予測はコンピューターの精度の向上によります)。
ただし、それらの情報はあくまでまだ広範囲(狭い範囲でも1キロ四方くらい(局地モデル))の地域の予測であり、自分の本当に身近な周りの環境の変化については、自らの五感に頼るしかないと思います(特に土砂災害の前兆、大雨が降る前など)。昔の人ほどは難しいかもしれませんが、今回のことわざを思い出して、五感を研ぎ澄まし、自分で判断して、早めの避難を心がけ、自分の命を守って欲しいと願っています。

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神田沙織 がりれでぃ スピンオフ
ナチュラル・サイエンス・ラボ
しぜんのかがく

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