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しぜんのかがくep.72、73(2\7,2/14)ハ歯huh🦷の防災のおはなし

2・14はバレンタインデー。チョコレートを大切な人、お世話になった人に贈る方もいるでしょう。義理チョコ、友チョコ、お世話になったあの人へも、誰もが笑顔になりますね。
私はチョコレートが大好きで(何度もお話していますが)、毎日、高カカオポリフェノール(72%)のチョコレートをいただいています。甘ーいチョコレート、これからも食べたいですよね。

かこさとしさんの絵本に「はははのはなし」
があります。
私自身が子どもの頃読み、自分の子どもにも読み聞かせた、思い入れのある本です。歯を磨いていても、なぜ虫歯になるのか?歯はなぜ必要なのか?が、子どもから大人でもわかるように、科学的にわかりやすく説明されています。「はっはっは」と笑って物語が始まるのですが、一人泣いている男の子がいます。甘いものを食べ過ぎて虫歯になってしまったんですね。歯が痛くなると大人だって泣いてしまいます。病気にもなってしまいます。
歯は健康に生きていく上でとても大切なものですが、災害時は特に歯のメンテナンスができなくなり、虫歯や病気、命に関わる状況(災害関連死)になってしまうこともあります。
今日は、災害時の歯にまつわるお話をします。

災害時の歯磨き事情

災害が起こるとライフラインが止まり、飲料水や生活用水である、水の確保がとても難しくなります。以下の写真は、2011年東日本大震災時の釜石市の避難所の食事の状況ですが、一週間は歯ブラシが届かず、歯が磨けない可能性があります。災害には、水が確保できても、命を繋ぐための飲料水が優先となり、歯磨きのための水がその場にあるかどうかもわかりません。

2011年東日本大震災時 釜石市 避難所の食事 (いのちのつなぐ未来館の展示の一部を抜粋)

災害時に起こりやすい、お口のトラブル 

特にたくさんの人が生活する避難所で、お口のトラブルは発生しやすくなります。どんなトラブルが発生するか?を紹介します。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
 口の中には、歯や歯茎、舌、頬の内側など口腔内のあらゆる場所に数百種類以上の細菌が生息しています。その細菌が、食べ物や唾液と一緒に気道に入ること(誤嚥)がきっかけになって、口の中の細菌が肺に入り込んで起こるのが、誤嚥性肺炎です。
災害時は、水が不足し、トイレも流せなくなり、衛生状態が非常に悪くなります。特に避難所生活では、トイレに行くのを我慢して水分を取らなくなってしまう人が出てきます。水分を控えると唾液が減少し、口の中に細菌が繁殖しやすい状況になります。唾液には抗菌作用(リゾチーム、ラクトフェリンが細菌の細胞膜を破壊する)があるんですね。
 避難生活での災害関連死のうち、30年前の阪神淡路大震災での死因別割合(2004年5月14日神戸新聞記事)では、高齢者が「肺炎」で死亡する割合が全体の24%と非常に高くなっています。(心不全16%、心筋梗塞10%と続きます。)

虫歯
甘いものは、脳や心のエネルギーとなり、災害時には心の栄養として準備しておきたいものです。ただ、甘いものは食べ過ぎると虫歯になります。
災害時は、精神的に不安な状況でもあり、特に子供は(大人も)、甘いものを食べ過ぎてしまう傾向にあります。特に避難所では、物が充足すると甘いお菓子などが手に入りやすくなってしまいます。
(※甘いお菓子に入っているブドウ糖は、トリプトファン(アミノ酸)を脳内の神経伝達物質である安心ホルモン(セロトニンやドーパミン)の分泌に関わります。安心感を得るために食べ過ぎてしまうんですね。)

かこさとしの絵本「はははのはなし」では、お菓子やジュースに入っている甘い砂糖が口の中で酸に代わり、「歯」が溶けて穴が開くと紹介されています。砂糖は、細菌(ミュータンス菌)の働きによって、酸を作り、歯の表面を覆っている硬いエナメル質を溶かしてしまいます。

感染症など病気への感染リスク

口の中が不潔になり細菌が増えると、病気にもなりやすくなります。例えば、今の季節(冬)はインフルエンザウイルスへの感染リスクが高くなります。口腔内の細菌が出すタンパク質分解酵素は、人間の口の中の粘膜細胞を壊し、ウイルスが細胞の中に感染するのを促進します。

インフルエンザウイルス 出典:国立感染症研究所ホームページ

ウイルスは、細胞の膜がなく、他の細胞の中に入り込んで感染し、増殖します。インフルエンザウイルスが感染するということは、ヒトの細胞の中にウイルスが侵入し、細胞が破壊され、その機能を失うことです。

特に歯周病になってしまうと、それに関連する細菌が強力なタンパク質分解酵素を持っているので、口の中の人間の細胞の膜が分解され、ウイルスが侵入しやすくなり、病気にかかりやすくなってしまいます。

お口の健康を保つために準備しておきたいもの

歯を手入れするグッズは、歯ブラシだけではありません。以下のものも準備してみましょう。

  • 歯ブラシ または、歯磨きシート ※歯磨きシートは指に巻きつけて使います。歯ブラシがなくても歯を清潔に保つことができます。

  • ウェットティッシュ

  • 液体歯磨き

  • キシリトールガムなど(唾液を出すため)

  • 入れ歯洗浄剤(高齢者の方) ※入れ歯ケースを忘れずに。高齢者は、災害時に入れ歯を洗浄できずに、口の中に入れっぱなしにすると、細菌がより発生しやすくなります。

  • (あれば、とても便利)デンタルフロス、歯間フロス
    水が少しあれば、食事の後に口を濯ぐだけでも歯をキレイにする効果があります。

参考HP:
SUNSTAR 覚えてください、防災にオーラルケア
https://jp.sunstar.com/bousai/

歯の博物館に行ってきました。

名古屋にある歯の博物館に行ってきました。
1. 愛知県歯科医師会「歯の博物館」※歯に関するミュージアムとしては、予約なしで入れる日本唯一の博物館
2.愛知学院大学 歯学部歯科資料展示室 

こちらは、「歯の虫」です。(ep.69で取り上げた地震虫ではありません。)歯の虫が人を貪り食う様子が表現されています。古代バビロニア時代(紀元前5000年頃)から18世紀頃まで、「歯虫(Tooth warm)」という歯に住みついた邪悪な虫(悪魔)が虫歯や歯痛の原因であるとされていました。

歯の虫が人を貪り食う様子
歯の痛みの苦しみが地獄に例えられています。

むし歯の治療として歯に穴をあけた際に、歯の中の神経を虫と勘違いしたとも言われています。
歯をキレイにすることは災害時も、日常でもとても大事です。

では、私たちは歯はいつから磨くようになったのでしょうか?
それは紀元前に遡ります。
紀元前500年頃、インドでお釈迦様が弟子の口の中が臭すぎて耐えられなくなり、菩提樹の小枝の一方を噛み、房状にしたもので歯をキレイにすることを説いたのが始まりとされています。その後、日本へは鎌倉時代の僧侶、道元禅師が楊子を使った歯の磨き方を著書「正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)」の本に記しました。坐禅を学び、どんな苦行も苦にならなかった道元ですが、唯一耐えられなかったのが弟子の口臭だそうです。

一般に歯磨きが広がったのは、江戸時代。房楊枝(柳の木を割ったもの)が主流となり、現代の歯ブラシが普及する明治時代まで使われていました。

歯木、房楊枝

防災ひとこと  災害時もハ歯huhと笑っていたい。

かこさとしさんの本では、最後は、「はっはっは」と笑って終わります。
口の中のケアは、私たちの健康を守るために、災害時は特に大事となりますね。普段も美味しい食事が食べられるよう(もちろん美味しいチョコレートも)、災害時こそ、歯を大事にして、健康に生活できるよう(笑っていられるように)にしたいですね。

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神田沙織 がりれでぃ スピンオフ
ナチュラル・サイエンス・ラボ
しぜんのかがく

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