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9月1日震災と火 しぜんのかがく9月ep.09 防災まめ知識 〜通電火災に気をつけて〜
防災の日
9月1日は何の日でしょう?「防災の日」ですね。1923年(大正12年)今から100年前に起きた関東大震災が起こった日です。今年でちょうど100年という節目の年となります。東京、神奈川、千葉県などで10万人以上の方が亡くなった大災害でした。「防災の日」は、1960年(昭和35年)に国の閣議で決定されました。
大正12年に起きた災害なのに、防災の日を決定した年が37年後でかなり遅いと思いませんか?実は防災の日でもある9月は地震だけでなく台風の災害も過去にありました。
昭和34(1959)年9月26日の「伊勢湾台風」によって、戦後最大の被害(死者、行方不明者5,098人)となったことが「防災の日」の決定に一押ししました。
伊勢湾台風の次の年に地震や風水害等に対する心構え等を育成するため、昭和35年に防災の日が創設されたんですね。現在の災害対策の基本となる、国の「災害対策基本法」もその次の年の昭和36年に制定されました。次の回で伊勢湾台風の話もします。
昭和57年からは、9月1日の防災の日を含む一週間(8月30日から9月5日まで)を防災週間と定め、各地で防災啓発の行事や訓練が行われています。是非機会があればご参加ください。
火災と関東大震災
「地震が起こった時は慌てず火の元を確認しましょう。」聞いたことはありますか?関東大震災は大正12年(1923年9月1日)の午前11時58分に発生。ちょうどお昼時でした。当時は七輪(炭火のコンロ)や竈(かまど)で直接火を起こしていたこと、住宅は木造が多く、火種となる木に火がついて地震の後すぐに各地で火災が発生しました。
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実は現代の私たちは「地震が起こった時は、慌てて火を消しにいかないでください。」が常識です。ガスの使用量を測定するマイコンメーターが各家庭にもありますね。震度5以上の揺れを感知すると自動的にガスを止めてくれる安全装置がついています。東京ガスのHPによると、昭和58年(1983年)からマイコンメーターの設置を開始したそうです。現在では、都市ガスではほぼ100%普及しています。
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火災はなぜ起こるのか?火災の3要素
関東大震災の犠牲者は、10万5千人という明治以降、記録されているなかでは最悪の死者行方不明者数です。ほとんどの人が火災により亡くなりました。出火点は134箇所となり、9月3日午前10時まで46時間ほど燃え続けたそうです(参考:広報ぼうさい No.40 2007/7)
「燃焼の3要素」と言って物が燃えやすい条件があります。「可燃物」「酸素」「熱」です。
「可燃物」とはコンロからでてくるガスや、車に入れるガソリン、ろうそく、バーベキューで使う炭など、燃えるもののことです。「酸素」は空気中に含まれていますね。「熱」はマッチやライターの炎、電熱線、レンズで集めた太陽の光などで熱を加えることにより、可燃物と酸素を高温にして結びつきやすくします(着火剤とも言います。)
反対にこの3要素を取り除くと消火になります。
「除去消火」とは「可燃物」を取り除く。つまりガスを止めることです。実は、消防士がいなくてホースで水をかけることができなかった時代、江戸時代の消火方法は燃えるものを取り除くため、火がこれ以上燃え広がらないように周りの家を取り壊していました。
「窒息消火」とは、空気(酸素)を遮断することです。電気設備が多い場所や地下、立体駐車場の消火方法として二酸化炭素を噴出する装置がついていたり、油火災などは泡が出て空気を遮断する装置もあります。もし地下で火災があった場合、サイレンはなりますが、二酸化炭素で地下が満たされると窒素するので、すぐに逃げてください。
「冷却消化」とは温度を下げる。例えば、水をかけることです。
でも、家庭で天ぷらなど油で調理している時、火のついた油に水をかけては行けませんよ(食用油は、360℃以上で火種がなくても発火します)。食用油は水より密度が小さく軽いので浮きます。そして、水は一気に100度以上になるため、一気に水蒸気になります。水から水蒸気になると体積が1700倍になるので爆発します。余談ですが、2014年9月27日御嶽山の火山噴火(死者行方不明者63人となりました)は、水蒸気爆発といって、マグマで急激に水が水蒸気になることで爆発しました。
(参考動画)【衝撃】消防士が実演!天ぷら油火災に水を入れたらどうなる? 名古屋市消防局 2分13秒〜
https://youtu.be/kY7EtKi9kkI
火災旋風
関東大震災では、「火災旋風」が発生しました。旋風とは、荷車、人を飛ばすほどの大きな風の渦巻き(直径50メートル以下の渦巻)です。「可燃物」とは家財道具です。物が燃えた「熱」により上昇気流が発生しました。そしてこの時弱い台風が接近しており、風がとても強かったことも影響します。空気による「酸素」が供給されて旋風が発生しました。
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参考(帝都の大震災 大正十二年九月一日 関東大震災映像デジタルアーカイブ
https://kantodaishinsai.filmarchives.jp/movies/m03.html
2023年8月8日に発生したハワイのマウイ島でも大規模な火災が発生していますね。送電線などの発火が原因と言われていますが、ハリケーンに伴う強風の影響で急速に燃え広がったようですね。
次の回で空気による災害、台風についてお話ししますね。
※ 台風:北西太平洋・南シナ海に存在
ハリケーン:北大西洋・カリブ海・メキシコ湾・北東太平洋に存在
サイクロン:ベンガル湾やアラビア海などの北インド洋に存在
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防災まめ知識 〜通電火災に気をつけて〜
では、現代災害が起こると何が原因で火災となるのでしょうか?〜関東大震災の時は七輪や竈など裸火を直接使っていたため、火災になりました。今はほとんど使われていないですね。
実は、電気による火災です。1995年阪神淡路大震災や2011年東日本大震災、2016年熊本地震の際の火災の原因は「通電火災」でした。
地震など(台風の時も)で停電した際、再度電気が通るようになった時に、配線やコードが切れていると発熱発火します。また、地震で転倒したヒーターに可燃物(カーテン、じゅうたん等)が、 接触した状態で電気が通るようになると着火します。再通電時に発生した電気的火花が、漏れ出たガスに引火して爆発します。
停電した後、避難して自宅から離れていると消火もできない状況になります。
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では、「通電火災」が起こらないようにするには、どのように対策をすれば良いのでしょうか?
停電発生時 は、停電中は電気機器のスイッチを切るとともに、電源プラグ をコンセントから抜く。 停電中に自宅から離れる際はブレーカーを落とすようにしてください。
また、通電再開時 ・給電が再開されたら、浸水などにより電化製品が破損していないか、配線やコードが損傷していないか、燃えやすいものが近くにないかなど、十分に安全を確認してから電化製品を使用してください。
日頃からの備えとしては、 地震発生時に設定値以上の揺れを感知した時にブレーカー やコンセントなどの電気を自動的に止める感震ブレーカー 設置する。このほか、日常使用している暖房器具については、対震自動消火装置や転倒OFFスイッチなどの安全装置付きのもの を使用することや、地震時に可燃物の落下や転倒を防止す るため、居室内の整理整頓、家具等の転倒防止を行うこと も出火防止には有効です。
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※その他、「トラッキング現象」で火災になることがあります。コンセントとプラグの隙間にホコリが溜まり、そのホコリが空気中の湿気を吸収することで、漏電し発火する現象です。年中発生する火災ですが、特に湿気の多い梅雨時期である6月~8月がトラッキング火災が発生しやすい月です。
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神田沙織 がりれでぃ スピンオフ
ナチュラル・サイエンス・ラボ
しぜんのかがく