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『逆ソクラテス:伊坂幸太郎』〜絶妙に嫌なやつを懲悪!〜

代表作『アヒルと鴨のコインロッカー』や『ゴールデンスランバー』等、超有名小説家の最新作。
〝逆ソクラテス″というキャッチーなタイトルに惹かれた。

どんでん返し、不意打ち、ワクワクする構成は流石。エンターテイメントとして楽しみながら、生き方まで考えさせられる良作でした。

📚構成📚

5つの短編から成っている。
それぞれの物語に共通する特徴は、

①主人公は学生。子どもの目線から物語が進んでいく。

②極悪人とは言わないが、現実にいそうなあらゆるタイプの嫌な人間が登場。

③最終的に彼らをギャフンと言わせる勧善懲悪な爽快感。

📚逆ソクラテスとは?📚

一つ目の短編のタイトル。
ソクラテスの「無知の知」の反対を指す。自分が知らないことや未熟なことを把握せずに、知ったかぶりで偉そうにしている人間を表現している。

本章では、印象だけで学生の能力や可能性まで決めつける浅はかな教師を例示している。

教師からも馬鹿にされている一見すると冴えない小学生のために、同級生があの手この手を使って教師の裏をかく。

物語の中で、ドキリとした台詞がある。

「僕はそうは思わない」

納得出来ない時、どんな相手でもこう言えるだろうか?上司はおろか、友達にも言えないのではないか?小学生の心の強さに考えさせられる。

📚非オプティマス📚

5章の中で最も印象的だったのがこの章。

いじめっ子の騎士人は、権力のある父親の下で育ち、教師や同級生を見下している。
毎日同じ服を着て明らかに貧しい育ちの転校生の福生はもちろん馬鹿にされている。
新米教師の久保先生にまで厳しく叱らないことを良いことに授業を妨害して嫌がらせをする。

ある出来事をきっかけに久保先生に変化があり、授業参観中に生徒たちにこう伝える。

人を助けるのは、評判。
相手を見て態度を変えるのが1番かっこ悪い。

ラストのオチが良い。貧乏だと思っていた福生の母は、騎士人の父親のクライアントだった。
友達か?と聞かれて、福生が答えようとするシーンで終わる。今までずっと人を小馬鹿にしていた騎士人が焦る様子が爽快だ。

個人的な予想としては、福生は「大の仲良しだよ」と大人な対応をとることで、逆に騎士人にバツの悪さを味わせるのではないか。

📚感想📚

大人であれば当たり前で流してしまうような発言も子どもが疑問を持つところが良い。

大好きな韓国ドラマ『梨泰院クラス』で主人公が言っていた。「一回、二回、何度も我慢することで、人は変わる」と。

思い当たる節がある。しかし今の時代に必要以上の我慢はミスマッチだ。単なる兵隊ではなく、自分の考えをしっかり伝え、我慢なく過ごすのがかっこいい大人だ。

一つ一つの行いが、人間をつくっていくことを改めて感じさせてくれる小説であった。


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