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そんなことくらい

あの池でカメが顔を出した時
私はこんな汚い池でもカメが生きられるだなんてことに
驚いていたんだけど
あなたはそのカメの大きさに驚いていた

私の驚きはその事実を知ることで終わってしまったけど
あなたの驚きは感動へと変わり
そのまま終わることはなかった

カメは時々顔を出しては
鼻をぴくぴくさせたり
口をぱくぱくさせながら
生きていた

ただそれだけだった
でもきっとそういうことじゃないんだよね

あなたは
身を乗り出して
池を覗き
暑いのも忘れて
いつまでも太陽に照らされて
顔が真っ赤になっていた

いつまでも
いつまでもあなたはそうしていられたのに
私があなたをそうはさせなかった
日に当たり過ぎているあなたが心配だったから
でも本当はあなたはもっとそのカメを眺めていたかった

こんなに大きい本物は初めてだったからだなんて
そもそもそこに理由なんてないことも分からない
私にはあなたが感じているその感動は
もう分からないんだから
少なくともそれは私が想像するものじゃ足りないはずなんだ
それはもっともっと頭で考えられることではなく
限りなく正直に感じられること

でも私の中にある確かに存在したあの感動は
あの時の私にとって忘れられるものではなかったはずだった
あなたもあなたにしか分からないその感覚を
忘れられないものだと思っているのかな
私に分かるのはそんなことくらい

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