寿司・鮨・鮓
彼が初めて夢に出てきたのは、いつだっただろう。
一年前くらいだった気がする。明確には覚えていないけれど。
初めて彼が出てきた夢の内容も覚えていない。
緑色のジャージを着ていたことだけ、覚えている。
彼が夢に出てきてくれたとき、私は舞い上がった。
嬉しかった。私が彼を心の底から愛しているという証明になった気がした。また彼の夢を見たいと思いながら、眠りにつく毎日だった。
私の夢の中で、彼は二度死んだ。
一度目は水難事故、二度目は自殺。
「好きな人が死ぬ夢」で検索して、予知夢ではないかと不安になった。予知夢だったらどうしよう、愛する人がこんなに苦しい死に方をしたら嫌だ、と思いながら泣いた。
幸い彼はまだ生きている。
彼が自殺をした夢を見た後だったと思う。
私は、自分の出身中学の体育館で、彼と体育の授業を受けるという、現実ではありえない夢を見た。
まず、彼と私は、同い年ではない。そんなこと、体験したこともない。
だいたい、私と彼の距離は、大きく離れている。
その夢を見た後、私はこんな感覚になった。
「彼と私は、昔からもっと距離の近い関係だったのでは?」
簡潔に言えば、こんな感覚だった。
そんなわけ、ないのだが。
小学校からの同級生で、近所に住んでいて、よく遊んでいた…
詳しくいえば、こんな感覚だった。
この体験をしてから、私は彼の夢をよく見るようになった。
彼が夢に出てきたことだけを、覚えていて、さっきの感覚になる。
この件については、ネットで調べる気もない。
知らないで良いことも、この世の中にはあると思う。
とても不思議だと思うけれど、私と彼の距離が近づくわけでもないので、これ以上気にするのはやめておこうかな。
彼の好物は寿司だ。
いつか彼と一緒に寿司を食べる夢を見て、記憶にとどめておきたいと思う。