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お膳

僕は「お膳」という形式が苦手だ。

綺麗に盛り付けられた懐石料理を眺めるのはとても好きだし、お膳で提供される食事は何だか気品があって美しい文化だと思う。

しかし、整然と並んだ料理の配置を崩さずに食すことが窮屈に感じる僕はほぼ全ての器をお膳の外に出してしまう。お膳の中に残るのは白飯のみ。距離が遠くなったおかずにいちいち箸を伸ばすのは不便であることぐらいよく分かっている。でも汁物をこぼしてしまうかもしれない恐怖と闘いながらチマチマとお膳の規律を守って食べるよりは、不便であろうと飛び地のおかずと陣中のご飯とを忙しなく行き来する方がよっぽど嬉しい食事なのである。

この、よく言えば「型に縛られたくない自由を求める心」、悪く言えば「規律を守れず散らかすのが好き」な性格はお膳問題に限らず日常生活至る所に顕在する。一つの事を綿密に整然と構築していくなんて土台無理なので手を付けては放置される物達がそこかしこに散らばり無限の宇宙を醸し出してゆくことになる。

カルタや神経衰弱が得意だった記憶も無いが、散らばった星々の中から「これ!」と当てずっぽうに指名してそれが意中の星だった時の爽快感はそうでなかった時のストレスを遥かに凌いでくれるので結局いつまで経っても片付けるという概念が希薄なままである。

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