料理に▲▲をかけてしまう配達員が居たら、我々はどうすればいいのか?
正月早々に見たネットニュースのうち、個人的に一番衝撃だったのが次のニュースでした。
中国のデリバリー配達員が客から低い評価をつけられた腹いせに届ける前の料理に小便をかけてしまい、それを客が知らずに食べてしまうという何とも恐ろしい事件です。
この事件の記事を見た時に最初に考えたことは以下の3つでした。
1.本人の資質の問題か
私も以前中国本土に仕事で滞在したときにデリバリーを頼んだことがありますが、迅速に配達して態度も良い配達員の方もいれば(少数派ですが)、近場なのに道に迷って1時間以上遅れたうえに不愛想な態度で届ける配達員もいました。
どのような仕事にも「適性」というものがあり、もしかしたらこの配達員はそもそも「客と接する仕事」に向いていなかったのかもしれません。
2.客の態度がひどすぎたのか
記事では「Bad」評価をつけられた仕返しと書かれていましたが、中国ではデリバリーの配達員を社会的地位が低い職業と見なす人も多く、中には配達員を奴隷のように扱う傲慢な客もいます。
もしかしたらこの配達員も以前に同じ客と何らかのトラブルが発生し、その時に人格を否定されるようなことを言われた可能性も考えられます。
配達員も人間ですので、あまりにも酷いことを言われてしまうと理性を保つのが難しいかもしれません。暴言を吐く客には小便をかけるまでには至らなくても何らかの嫌がらせをしたくなるのも人情です。
3.労働環境があまりにも劣悪だったのか
日本でもそうですが、フードデリバリーの仕事は大変な割には報酬はそれほど高くはありません。
それでも無理なく生活できるレベルであればよいのですが、安い給料で激務が続くと「やってられない」という気持ちになってしまい、暴発してしまうことも考えられます。
上記1~3はあくまで仮説ですが、複数の条件が重なってしまった可能性もありますので、問題の原因を一つに決めつけないほうが良いかもしれません。
日本でも起こり得る
この事件はたまたま中国で起きた話ですが、「中国だから起きる」というよりも「日本でもどこの国でも起こり得る」と考えています。
(現にバイトテロのような事件は以前から起きています)
先ほど挙げた1~3の仮説はどれも中国ならではのものではなく、日本でも同じことが言えます。(中国は「起きやすい」というだけです)
そのため、この配達員だけのせいにしても、同じような問題は忘れたころに再発する可能性があり、自分の身に降りかかることもあるかもしれません。
採用や教育で解決できる話ではない
この手の問題に対して企業側が真っ先に考える防衛手段は採用段階で問題のある人物を排除し、採用後も不祥事を起こさないようしっかり教育を施すことです。
実際に私ども研修業界でも、従業員のコンプライアンス意識を高めることを目的とした研修のご依頼をよくいただきます。
しかし、相手は人間ですので、いくら採用で適正のある人を取っても、いくら研修で口酸っぱく注意しても、条件が重なってしまうと人はやらかしてしまうのを何回も見てきました。
不祥事を防ぐためには本人の資質も教育も確かに重要ですが、それだけでは解決できないのが現実です。
「人間」だからこそ何度も過ちを犯す
AIを積んだロボットであれば、誤作動を起こしてしまってもバグを修正すれば再発を防ぐことはできます。
一方で人間が問題行動を起こしてしまったときは、再教育をしたところで確実に改善できるとは限りません。
というのも人間には喜怒哀楽の感情があり、その時の気分にも左右されるため、頭では「いけない」とわかっていても自分自身をコントロールできないことがあります。
いくら理知的な人でも、人間である以上はロボットのように感情に一切左右されずに常に完璧に行動することはほぼ無理だと思います。
(もしいるとしたらゴルゴ13ぐらいです)
そのため、「人は誰でもやらかす、何度でもやらかす」ということを前提に考えたほうが良いかもしれません。
この前提に立つと、問題行動を一切せずに良い仕事をするのは「あたりまえ」のことではなく、むしろ「ありがたい」ことになります。
今までなら「いかに問題行動をさせないか」という視点で人の行動を管理しようとしてきましたが、今後は「どうすれば良い仕事をしたいと思えるか」という視点もあってもいいと思います。
小便をかけてしまう配達員の存在は確かに衝撃ですが、この事件は我々に様々な問いを投げかけてくれたと考えています。
今回もお読みいただきありがとうございました。