人と組織の問題は「やっかい」で「特効薬」がないから面白い
順番が前後してしまいましたが、私がこのnoteで発信しようと考えたきっかけについてお話ししたいと思います。
私の仕事を改めて紹介しますと、研修などの手段を通じて企業の「人」に関する悩みの解決をお手伝いするコンサルタントであり、取り組むことは「人と組織の問題」になります。
しかし、この「人と組織の問題」が実にやっかいなものであり、一筋縄ではいきません。
例えば、機械設備やシステムの不具合といった「モノ」に関する問題であればどんなに複雑な問題でも正しく分析すれば原因を突き止めることができ、原因さえ分かれば自ずと解決策は見えてきます。
一方で、人や組織の問題になると相手は血が通った人間になるため、緻密な分析を行ったところでまず理屈通りには進みません。
(もちろん分析は必要ですが)
そのため、組織内の「不満」や「対立」といった人間ならではの根深いものに一つ一つ向き合い、「そもそも何がどうなっているのか?」から見つけていく必要があります。
問題を特定し、原因にたどり着くだけでも一苦労ですが、原因がわかっても解決策が机上の空論になってしまうとまず実行されません。
こちらも同じように人間ならではの喜怒哀楽を考慮したうえで、「確実にできること」を探しながら泥臭く地道に進めていくしかありません。
人の問題はどのぐらい「やっかい」か?
人と組織の問題の「やっかいさ」がイメージできるように簡単な事例を紹介したいと思います。
ある会社で「やるべきことをやらない社員がいる」という問題があったとします。会社としては現場での業務はマニュアル通りに遂行してほしいと考えているが、現場の社員は目の前の業務が回らないことを理由に業務プロセスの一部を勝手に飛ばしてしまいます。
そこで現場にアンケートを取ると「現場がこんなに忙しいのに、そんなことまでできるわけがない!」「上の人は現場を知らない!」という声が大多数を占めることがわかりました。
これだけを聞くと、現場の社員がやるべきことをやらないのは「能力が低いから仕事が回らない」とか「意識が足りないから重要性を理解できていない」と考えるかもしれません。
そして、そのまま「業務効率を高めるための段取り力研修」や、「仕事に対する意識を高める研修」を企画して実行すれば解決できると考えてしまいます。
ところが、「現場が忙しいことを口実にやるべきことをやらない」本当の理由を考えると下図のように様々な可能性が出てきます。個人単位でもこれだけの理由が考えられるので、組織全体で見ると問題の原因は決して単純なものではないことがわかります。
更に難しいのは、個々人の行動も周囲の人や環境に影響されるため、原因は本人の中にあるとも限りません。それこそ本人に対していくら素晴らしい研修を実施しても、いざ現場に戻ったときに先輩が「そんなの後回しでいいんだよ!」と言うだけで、研修で学んだことの全てが水の泡になります。
このとき、先輩が悪いとか、環境が整っていないということでもなく、あくまで様々な要因が複雑に絡み合った結果、問題の現象が起きているのであり、問題の構造を単純化するほど、本当の解決から遠ざかってしまいます。
どうやって解決するのか?
我々のようなコンサルタントに対しては当然「明確な解決策」が求められまずが、このように人と組織の問題がきわめて複雑なものである以上、人と組織に関する原理原則に基づいて「当たり」をつけたうえで「可能性の高い解決策」を提案するのが実情になります。
もちろん提案した施策がそのままうまくいくこともありますが、相手が人間である以上、どんなに綿密に企画した施策でも「予想外のこと」は必ず起こります。
そのため、ある程度進んだ時点で一度立ち止まることが重要です。
私の経験上、最初から100点満点を目指して大がかりな施策を企画して一気に突き進むとまずゴールに到達できないが、20点でも30点でも「前に進むこと」を優先し、時には後退することはあっても軌道修正しながら前に進めるほうが結果的にはゴールに近づきます。
「特効薬」を探すのではなく、「引き出し」を増やす
結局のところ、人と組織の問題を一発で解決できる特効薬はないと思います。(今後見つかるかもしれませんが)
何事もやってみないとわからない以上、「正解を知っている」ことよりも、「たくさんの引き出しを持っている」ほうが、やっかいな問題に遭遇したときに物事を前に進めることができます。
私自身もコンサルタントとしてまだまだ引き出しを増やしていく必要がありますが、「きれいごと」ではない「人と組織のやっかいな問題」について私が経験したこと、取り組んだことをこのnoteにまとめていくことで、みなさんの引き出しを増やすことの一助になれば大変幸いです。
これからも引き続きよろしくお願いします。