”問題児”の最大の価値は「問題児の気持ちがわかること」
日本の職場では先輩社員が新人の指導役(OJTトレーナー)を担うことがありますが、このとき相性が最悪な組み合わせがあります。
それは”優等生”の指導役に”問題児”の新人を指導をさせることです。
ここで言う”優等生”とは「何でもそつなくこなせる人」であり、これといった欠点がない人です。
一方で”問題児”とは「多くの人ができることができない人」「多くの人がしないようなことをやってしまう人」であり、その結果周囲の人に迷惑をかけてしまう人です。
さてこの組み合わせがなぜ「最悪」なのかというと、指導される側がいつまでも成長せず、やがてどちらかが病んでしまう可能性が高いのが最大の理由です。
指導役を誰に任せるか考えるときつい「模範になる人」を選びたくなりますが、優等生の指導役は「他人が普通にできることができない」という経験をしていないため、問題児の新人が抱える悩みが理解できません。
例えば「電話応対」がどうしてもうまくできない新人が居た場合、優等生の指導役は電話応対のステップを一つずつ丁寧に教えようとします。このときの指導役の頭の中は「この通りに喋ればいいはずだ」と考えています。
しかし、問題児の新人はいつまでも教えられた通りにできません。電話の相手を待たせるときに「少々お待ちください」と言うよう指導されたにもかかわらず、新人はそのまま黙って保留ボタンを押してしまいます。
そのうち指導役がしびれを切らして「保留ボタンを押す前に”少々お待ちください”と言うよう教えたでしょ!」と口調がきつくなりますが、それでも新人はできるようになりません。
こういうことを重ねていくうちに新人が「自分ってダメだ・・・」と病んでしまうか、指導役のほうが「私の指導ってダメだ・・・」と病んでしまうわけです。
このとき、指導役は「電話で会話する」という行為は誰でもできると思い込んでいたのですが、実はその新人は電話恐怖症でその「誰でもできること」ができない可能性があります。
しかし、指導役がそれを理解できないとつい新人のやる気とか姿勢のせいにしてしまい、相手(もしくは自分自身)を責めてしまうのです。
というわけで、もし手がかかる新人が居る場合、指導役は”問題児”に任せることをお勧めします。
「問題児に指導させると余計悪くなってしまうのではないか」という懸念もあるかもしれませんが、この場合の指導は一方通行ではなく指導役自身も指導を通じて学ぶことができるので、指導役自身が問題児であっても心配する必要はありません。新人と一緒に成長していけば良いのです。
それよりも「指導される側の気持ちを理解できること」が最も重要なことですので、むしろ”問題児”だった人こそ指導役に向いていると言えます。
特に「仕事の覚えがものすごく悪い人」は指導役に最適です。
なぜなら新人が躓く気持ちを誰よりも理解しており、どこで躓くのか誰よりも知っているので。
最後まで読んでいただきありがとうございます。