離婚後はマッチングアプリをインストールしまくった
離婚してすぐいつかはまた誰かと結婚したい、と考えていた。けどその思いはさほど強くなかった。憧れは強かったけど現実的には考えられなかった。
結婚生活に分かりやすく失敗しちゃってるわけだしね、自分が変わるのが先なんだろうけど、それだけの労力を使うのが想像しただけでもイヤになるし誰かと深く関わることが怖かったのが本音。わがままなのよね。
育児も仕事も忙しいんだけど強烈な穴がポッカリと空いてしまったのでちょっと今までと違う行動をしてみたくなった。
もうなんか真面目に生きてきたのが馬鹿らしくなってとりあえず適当な人を捕まえて、飽きたら他の人を見つけるなんて恋愛をしてみようと。
離婚するときにこんな風に誰かを欺いて傷つけていいんだ、じゃあ私も手軽に人間関係を自分の好きなように楽しんでいいじゃん。って最低な発想になった。
でもそう生きてる人もいるんだからいいじゃん、って本気だった。自暴自棄だったのかもしれない。
10代から恋愛は生活の近くにあったけど離婚時ほどの悲しみを覚えたことはない。もし結婚が絡んでなかったとしても1番苦しい関係になってしまっていた。
そんな痛みを癒したくても出会いなんてないからマッチングアプリを入れた。それもたくさん入れた。有名なものをいくつかとシンママ向けのものも入れた。
シンママ向けのものを入れたのは自分を分かってくれる人に出会いたかったから、やっぱり家族になってくれる覚悟がある人と出会いたかったんだと思う。当時は気付いてなかったけど。
そしてシングルマザーということは伏せて自分の顔写真を載せてボルダリングや読書が趣味です、と紹介文を書いた。適当な人を捕まえようと思ってる割に相手に自分を分かってもらおうとしているのがウケる。
自分を好きになってくれる人がいないかな、と期待を胸にマッチングアプリを使っていたらすぐにたくさんのイイネがついていた。
えっ…こんなに?すごいじゃん、私モテモテじゃん!?とテンションが上がりに上がった。離婚したことで下がっていた自己肯定感がぎゅいいいんと音を立てて上がっていく。
知らなかったけど世間ではそれは当たり前だったらしい。カゴの中の鳥だった私はそんなことにも気付かずに浮かれて、届いたメッセージに返信していく。
いいなと思った人に会うぞ…!そういう人生経験も必要ってもんよな!そうだよな!と言い聞かせてせっせと見ず知らずの人と話をする。
メッセージBOXがピロピロ次から次へと光る。少ししてそもそもよく知らない人とメッセージするって楽しくないな?って気付いてくる。
けどみんなここを超えている、がんばらねば。
そして会ってみようかなと思った人にはシングルマザーです、と打ち明けた。恋愛だけと思っていても割り切れなくて、少しは自分を知ってほしい。
打ち明けて連絡がない人もいれば"いいよ"という人もいてそんな人は体の関係が前提だった。もうアラサーの私はヤリモク!最低!なんて言わない。健全な欲求なんだと思う。
けどその下心が見え透いている人には自分がアガらなかったので結局連絡をやめた。
じゃあそういう空気じゃない普通の人と出会おう!って思ったんだけど初対面できっかけを掴む方法なら知ってる気がする。
学生時代モテモテだったなんて過去はないんだけど、20代は半ばはたくさんコミュニケーションの本を読んでいて結婚前に行った街コンで十数人の参加者のほとんどが私に連絡先をくれたことがある。
めちゃくちゃ多い人数が参加してた訳ではないけど、自分では卑屈で暗い人間だとレッテルを貼ってたのに思っていたよりも好印象を残せる自分になっていた。つまり初対面の戦いは悪くない。もちろん20代だったのも強い武器だったんだけどね。
そうなると初対面が出会うマッチングは余裕に思えそうなんだけど、そんなテクニックみたいな好かれ方じゃなくて自分を見てもらえる出会いが欲しいと欲が出てくる。
けど、自分を見てもらえるってなんだ?
明るく振る舞う自分がいれば鬱々と文章を読んだり書いたりする自分がいる。他人に見せる顔はスイッチがONの状態でエネルギーがある雰囲気だと思う、そういう自分を演出しているから。
前の職場で同僚に「どんな本が好きなの?」って聞かれたときに素直に"人間失格ですねー"って言うととても驚かれた。名著だけど暗い雰囲気だからなのかな。
これは自分のキャラに合わないんだ、と察して他の人には違う本の名前を挙げるようになったけど私が知ってほしいのはこういう人に見せない部分。キレイなだけじゃ生きていない。とても鬱々としているときだってある。その度に少しずつ修正している。私だけじゃないよね?
体を求めて自分の満たされなさをより感じるのもつらいし、相手の理想のキレイな女を演じ続けられる自信はない…。
疲れてるから癒されたいし、クセでいい顔しすぎて興味のない相手から依存されてもいやだな…。とわがままにわがままを重ねていたらアプリをアンインストールしていた。
マッチングアプリを始めて3日。
マッチング回数0回。
潔く諦めることにした。自分の好みとかどんな相手がいいとか考えることも本当にめんどくさくなってしまって頭がパンクしそうだった。相当向いていなかったみたい。
誰かに求めているうちは満たされないんだよね。よく分からない人の言動で一喜一憂して息子を適当に扱う日々を過ごしちゃいけないし。
けど本当は誰かに寄り添って欲しかった。分かり合いたかった。息子と同じように私も誰かから特別に愛して欲しかった。
そんな寂しさを心の奥底に封じ込めて何事もなかったかのように会社へ出勤した。そうしている方が恋愛に振り回されているよりも魅力的に自分が映るんだろうなと信じて。
マッチングアプリをやめて1年以上経ってから今お付き合いする人と出会うんだけど、この人は私の初対面テクニックで好印象を残せなかった。笑うくらい少しも興味を持ってもらえなかった。持てよな。
その話はまた次の機会に。