女ひとりで家を建てる
子どもの頃から男勝りなところはあった。
でも、私も男性に養ってもらいやがて家を持てればなと、一般の女性並みに平凡な人生を考えていた若いころ。私の時代はまだ男女雇用機会均等法が出来たばかりで、女性は家庭にというのが、親からも当たり前のように植え付けられていた気がする。
そんな自分が、たった一人で家を建てることになるとは、あの頃の自分が想像できただろうか。いや絶対にできなかった。
前にも書いたが、私の親は事業に失敗しているので、生前贈与などの恩恵は程遠い。いいお家の子の話だと思っている。
親からの支援がない、事業をもう一度復活させるために、私の若き人生と個人のお金はすべて仕事や家族に流れていってしまったようなものだ。
そんななかで、人生の終の棲家を考え、ふと家を持つことができるのだろうかと、だめもとで試しに銀行へ相談してみた。
自分ではあっさり無理だなと諦めるんだろうなと思いきや、可能性がみえた。いくつかの銀行に相談するが、額に大きな開きがつく。これも面白いと思った。
そして結局、とある銀行で住宅金融支援機構のフラット35を利用するのだが、ここでびっくりする質問をされたことが印象深いのでぜひ共有したい。
まず女性一人で家を建てるというのが、投資目的ではないかと疑われた。投資用の家であれば、住宅ローンが使えないためだ。
でも、何故女性が一人で家を建てる=一人で住む終の棲家と捉えられないのか、当時の私は素直に驚いた。
そのほかの質問で、「今後ご結婚のご予定は?」「お子様もいないなか、この家を今後誰に引き継ぐのか?」「すぐに転売とかお考えですか?」など、
私にとっては無礼極まりない質問を浴びせられた。
不動産の仲介の担当には、「結婚のご予定があると銀行には伝えておく方が、審査にも有利です。」と言われたが、その当時そんな予定も特になく、それが余計腹立たしかった。
何故ならば、男性一人で家を建てる時はそんな質問はあまりないようだと聞いたからだ。投資目的ではないか?という確認はあるとしても。
それが妙に、女性差別に感じて私は、正直イラっとした。
これからは、女性のおひとり様がマンションではなく、家を建ててもいいではないか!心の中で、そんな叫び声をあげながら、ひきつった顔で静かに答えたのを覚えている。
今、築6年になるが、正直ローンを老後にむけて持つことは大きいと思いながらも、マンションや賃貸では絶対に手に入れられない豊かさをかみしめている。
結婚相手がバリバリと仕事をして、パートで家計を賄いながら子育てをしている夫婦が、夢のマイホームを手に入れる。そんなことを想像していた人生が、子供も旦那もいない代わりに、仕事をバリバリやって自分で自分の好きなように考えた家を建てるって、それもまたかっこいいではないか。
私の周囲でも、わずかだがそんな女性を知っている。
女性だから、購入するのはマンションが妥当だとか、同性の事実婚だから、
家を借りるのが普通だとか、その世の中の当たり前の常識とやらが、そろそろ崩れてもいい時代なのだと、私は銀行の窓口担当の先にいる、
住宅金融支援機構の男性陣に向けて、大人気もなく心の中で叫んでいた。
これからの未来は、男性優位が当たり前と思っている”おじ様方”が想像もしない未来がやってくるはずだ。
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