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TAR(2022)/トッド・フィールド監督

最近、すごいものを観た、というくらいの衝撃を受ける作品を沢山観れている気がするのだけど
とりわけこの作品、特に主演のケイト・ブランシェットの怪演はこれから先も忘れないだろう。

うっかりサービスデーに行ったら満席での上映。
ギリギリのところでチケット取れてよかった。

真摯で重厚な作品にも関わらず、ケイト・ブランシェット演じるTARに惹きつけられたわたしには多少の長尺にも関わらずエンドロールまでがあっという間で、
「あれ、もう終わっちゃうの?」と思ってしまうくらい、まだ彼女を追っていたい気持ちが残った。

劇中、音楽とは質問すること、みたいな言葉が出てくるのだけど、まさにこの作品それ自体が観客への壮大な質問のようで、投げかけられたこちらは鑑賞後も頭の中で鳴り続ける音楽のように映画体験の余韻を引きずって、わあっと引き受けた感覚を日常レベルにまで咀嚼するのに、時間がかかった。

TAR本人の扱う音楽そのもののような本作は、彼女が一曲一曲に対してそうしたように、観客も、じっくりと向き合い解釈していくことが求められているかのようだった。

そして何よりケイト・ブランシェットの映画や芸術に対する愛情や敬意がひしひしと感じられ、観る者へ厳しくも美しいバトンが贈られているかのような感覚になった。

舞台の上で「神と観客の前で自分を消し去る」というような台詞があったけれど、まさしく芸術に対し全身全霊を捧げている姿を見せて頂き拝みたい気分だった。

そんな本作は、映画も極まるとこうなるのか、というある一つの完成形へと到達した作品なのではないか。
言い過ぎかもしれないけど、でもそのくらいの熱量で賞賛したい。

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