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aftersun(2022)/シャーロット・ウェルズ監督
ソフィの胸の中をガバッと開けてそのまま覗き込んでいるかのようなーーーーー
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監督の長編デビュー作とのこと。
センスが素晴らしいし、映画というものへのリスペクトを随所に感じる作品。
トップシーンから何故か号泣してましたが!笑
感覚で観る映画だと直感してただただ感じることに。
些細な瞬間を大事に寄せ集めた映画で、何がどう、というわけではないのに自分の何かに響いて離れなくなってしまう。
ポール・メスカル演じるソフィの父親、カルムの心に空いた穴の引力に引き込まれてしまったような気さえした。
鑑賞後数日経っても、彼の哀しくて繊細な心がどうもわたしをアフターサンの世界に、たまに呼び戻しては切なくなった。
ソフィに、いつでも話していいからね、と伝えた表情は(カメラワーク的に)わからなかった。
けれどその瞳を想像することができるし、想像すると胸がぎゅうと締め付けられる。
大好きだよ、忘れないで、と記されたカードも、書いた姿は映されていなかったけど、その眼差しやペンを握った手のぬくもりを思うとまた泣き出しそうになってしまう。
最初は骨折していた右の手も滞在中にギプスが外れ、娘の肌に触れる。
そういう小さな瞬間達が、20年経っても刺さったままなのはきっと二人とも、同じなのだと思う。
とは言うものの、その20年、二人は会うことはなく、この一夏が最後の思い出になってしまった。
父親はこの幸せな時間を永遠に持ち続けるために彼女の前から姿を消してしまったのだろうか。
(あるいは、自殺してしまったのだろうか)
海に身を委ねに行く後ろ姿に思いを馳せる。
側から見ればなんでもない数日間。
けれど11歳の少女にとって、子どもと大人の世界を隔てる親という扉のあちら側を垣間見た時間だったのではないだろうか。
少女であり娘であることから、大人になり女性になっていくということ。
この旅行で散りばめられたたくさんの予感は、それ以降一つずつ開かれていったのだろう。
父と娘はたぶん同じ苦悩を抱えて30代になった。
だからこそ、今わかる彼の姿。
時を超えて2人は、どこかで分かり合えたのかもしれない。
そして其処ここでインサートされるフィルムの映像。
わたしたちが肉体を持つように、フィルムという肉体を持った映像は、"記憶"とよく似ているのかしら、と思う。
その質感に、ソフィは時を超えて父のぬくもりを思い出したのかもしれない。
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