良い本と、売れる本は違う。
――文学とはかけ離れた領域の話かとは思いますが、1人でも多くの人に届けたい気持ちは確かにあるので、僕は届け方にも関心を持っています。そのひとつが「手売り」であったり、「文学フリマ」であったりするわけです。
人生は物語。
どうも横山黎です。
今回は「自分の作品を届けるために必要なこと」というテーマで話していこうと思います。
◆良い本と、売れる本
世の中にはたくさんの良い本があります。ただ、全ての良い本が売れているわけではありません。知る人ぞ知る、そんな名作が計り知れない数、眠っているのです。
文学を楽しむ。
その観点で考えたとき、売れようが売れまいが関係ありません。目の前の本とちゃんと向き合い、ページの隅から隅まで味わい尽くす。自分と本との対話を楽しむ、そして時には誰かと共有することが、文学を楽しむということでしょう。
昨今、本は売れない時代だと耳にしますが、ところがどっこい毎日のように新しい本が作られています。今や無料で本が出版できますから、僕みたいなまだ何者でもない人の本も流通しているのです。
一億総クリエイター時代であることをふまえると、良いものをつくることだけでなく、届け方も探っていく必要があります。そのひとつがSNSでフォロワーを集めることだったりするわけです。
文学とはかけ離れた領域の話かとは思いますが、1人でも多くの人に届けたい気持ちは確かにあるので、僕は届け方にも関心を持っています。
そのひとつが「手売り」であったり、「文学フリマ」であったりするわけです。オフラインで直接売り込む方法、ですね。
先日、僕は小説『Message』を出版しましたが、制作中からオフラインで直接売り込むためにはどうすればいいのかについて考えていました。
はじめは文学フリマの存在を知りませんでしたが、かねてから手売りをしていこうと考えていたので、手売りを実現するためにはどうすればいいのか策を練っていたのです。
出した結論は「ビブリオしやすい本をつくる」でした。
◆ビブリオしやすい本
ビブリオバトルをご存知でしょうか?
5分間で自分のおすすめの本を紹介する文学遊戯ですね。聴衆は発表者のプレゼンを聞いて、一番読みたいと思った本に1票を入れます。最も票を集めた本がチャンプ本に選ばれるわけです。
僕は高校時代にビブリオバトルにのめり込んでいて、第5回高校生大会の東京都予選で300人くらいを蹴散らした全国大会に出場しました。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
話を元に戻しますが、「ビブリオしやすい本」とはどういうことでしょうか?
言い換えれば、「短時間で魅力を伝えることのできる本」ですかね。手売りの際に長時間話を聴いてくれる人なんてそうそういないじゃないですか。ですから、端的に簡潔に魅力を伝える必要があるのです。
そのためには、短時間でも十分にインパクトのある、相手を惹きつけるようなネタのある本でなければいけません。
ちなみに、僕が東京都大会で優勝したときに発表したのは氏田雄介さんの『54字の物語』という本です。収録される全ての物語が54字でできているという本。これだけで他の本との差別化を図れるし、「え、54字でどんな物語が紡げるの?」という疑問を持たせることもできます。
僕が東京で1番になれたのは、そもそも本自体に魅力が備わっていたからです。あくまで本が主役。発表者がやるのは、本を立てる行為なのです。備わっている魅力を引き出す行為なのです。
ですから、他にはない設定や、好奇心をくすぐるような謎を提示することが、ビブリオバトルには求められるんですよね。
ビブリオバトルに出場した経験があったから、手売りをするときのビジョンも想像することができました。どんなふうに相手に売り込めばいいのかをイメージしながら、小説『Message』を作っていったのです。
小説『Message』は成人式の話です。成人の日の夜に亡くなった青年が「110」という血文字を遺しました。そのダイイングメッセージの謎を解くヒューマンミステリーです。
僕は手売りの際に「110」のダイイングメッセージは何を示しているのか、疑問を投げかけて展開していくイメージでした。分かりやすいし、想像しやすいネタなんですよね。
もっとも、このネタを思いついてから物語を構想していったので、ビブリオしやすい本になったのは結果論ではありますが、「110」があるからビブリオしやすいじゃん!じゃあ手売りしやすいじゃん!と思ったのです。
手売りの際に1秒で惹きつけるために、高校時代に親交のあった絵の上手な友達にお願いして、魅力的な表紙のデザインを考えてもらいましたし、ビブリオしやすいように「110」という数字を挿入してほしいとお願いしました。
実際に手売りしてみて、表紙が評価されることはよくあります。やっぱり第一印象って大事ですね。人も本も店構えも。
◆ちゃんと売る。届ける。
良い本を良い本だと確認できるのは、その本を読み終わった後です。読書なしではその良し悪しなんて分かりません。
ですから、装丁にこだわったり、帯にキャッチフレーズを記したり、著名人の推薦文を載せるわけです。SNSで宣伝したりするわけです。全部、売るための術、ですよね。
小説『Message』の売る場所はオフラインです。Amazonで販売していますが、noteで宣伝していますが、Amazonから購入される数なんて数えるほどです。全部、オフラインです。手売りです。
昨日もバイト終わりに1冊売ってきました。
73冊目です。
そして、来月には文学フリマ東京35が控えています。5時間ぶっ通しで手売りするような感覚になりそうですね(笑)そこでちゃんと結果を出せるように、売り方、届け方にこだわっていこうと思います。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
20221024 横山黎
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