縦書きか、横書きか。
――縦書きか、横書きか。取るに足らない問題と思われがちですが、そういうひとつひとつに疑問を持つことが創作において大切なのかなと思いました。
人生は物語。
どうも横山黎です。
今回は「小説『Message』が横書きの理由」というテーマで話していこうと思います。
◆横書きの小説
最近僕は、先日出版した小説『Message』を毎日誰かに手売りしています。
どんな話かといえば、成人式の話です。成人の日の夜に歩道橋の階段から転落死したひとりの青年がいました。彼の手元には「110」ダイイングメッセージが遺されていて、その謎を紐解くヒューマンミステリーです。
おかげさまでいろんな方に手に取ってもらっているんですが、購入してくれたその場でよく言われるのが「あ、横書きなんだ」ってこと。
日本人にとってやっぱり馴染みがあるのは縦書きの文章なので、小説『Message』が横書きであることにちょっとした驚きがあるのだと思います。
今回はそれを受けて、「小説『Message』が横書きである理由」、「小説は縦書きであるべきか横書きであるべきか」という話をしていきます。
◆小説『Message』が横書きである理由
何の意味もなくそうしているわけではなく、小説『Message』が横書きであることにはちゃんと意味があります。大きく分けて2つの理由がありますので説明していきますね。
※この先、作品の結末部分に関する説明をしていきますので、あらかじめご了承ください。
1つ目の理由としては、この物語の最後は手紙の文章で終わります。行いっぱいに文字があるわけではなく、1行を原則20文字になるようにしました。実際にレターセットを買ってきて、試しに書いてみたところ20文字入ったのでそうしました。
僕のイメージ的に、この手紙は縦書きの便箋ではなく、横書きの便箋のイメージでした。ラブレターを書くような。
そんなわけで、その雰囲気をそのまま届けたくて、文章全体を横書きにしました。
もう一つの理由は、ダイイングメッセージの謎の判明を分かりやすく表現するためです。実は、小説『Message』のフックである「110」というダイイングメッセージは、明確に謎解きがされません。
「『110』は◯◯です!」と探偵役が語るわけでも、地の文で説明されるわけでもありません。詳しくは本文を読んでほしいんですが、事実を並べているだけなんです。
ここからダイイングメッセージのネタバレになりますので本当に本当に気をつけてください。
未読の方の中でダイイングメッセージの謎が解かれる瞬間を体験したい方は、以下の記事をご覧ください。現在、期間限定で無料公開しています。
それではいきますね。
ダイイングメッセージの「110」の正体は、「I love you」の冒頭三文字「I lo」でした。被害者が伝えたかった人生最後のメッセージは、最愛の人に贈る愛の言葉だったのです。
で、僕は「ダイイングメッセージの答えはこれでーす!」と誰かに語らせるのは野暮だなと思ったので、さっきも言った通り事実を並べるだけにしました。明確に答え合わせをすることをやめたのです。
どんな感じで謎解きするかというと、物語終盤、被害者の死の直前の「I lo」を書き残すシーンを描き、その後、被害者の手紙の内容の最後の一行に「I love you」という言葉を置いたのです。
既に読まれた方ならお分かりになられていると思います。
で、この演出が上手くいくようにするには、「110」と「I lo」と「I love you」が読者の頭の中で結びつかないといけません。しかし、縦書きだと英語も数字も横向きになってしまうので、三者が繋がらないおそれがあると考えました。
以上の理由から、小説『Message』は横書きにすることにしたのです。
◆縦書きか、横書きか。
別にルールがあるわけではありませんが、別に明確な意図がない限り日本の小説は縦書きですよね。そこに異論はありませんが、横書きだからといって別に劣ってるわけではないし、何か悪いわけでもありません。
僕も基本的には縦書きですし。
ただ、本離れが進んでいるなか、スマホで文章を読む機会が多くなってきました。それに合わせて横書きの文章に触れる機会が多くなってきた気がします。
かといって、縦書きの文化が廃れるわけではないし、横書きが主流になるとも思いません。
言いたいことは、縦書きにするにしても、横書きにするにしても、その意味をはっきりさせておくことが必要だということです。媒体によって、演出によって、言語によって、文字の方向が変わるわけです。
縦書きか、横書きか。
取るに足らない問題と思われがちですが、そういうひとつひとつに疑問を持つことが創作において大切なのかなと思いました。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
20220712 横山黎