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伏線を回収するという生き方

――長い時間をかけて回収された伏線は大きな幸せを感じることができます。一瞬の快楽よりも、僕はそっちの方に用があるので、これからも伏線を張っていくし、回収していこうと思います。


人生は物語。
どうも横山黎です。

毎月最終日は、僕の過去に関する記事を投稿しています。ニーズを無視して、僕が在りし日の自分とじっくり向き合う文章を綴っています。今月も今日で終わり。



今回は「伏線を回収するという生き方」というテーマで話していこうと思います。

せっかくですしハロウィンの1曲を。動画の画面を小さくすれば音楽を聴きながらスクロールできますので、是非、音楽と共にお読みください。




◆旧友たちとの再会


この10月はあっという間に時の流れる激動ひと月でした。どういうわけか、怒涛の日々だったのです。

2日連続オールの後に長時間バイトに臨むこともありました。まったく寝なかったわけじゃないけど、尋常ではないスケジューリング。もちろん吞んでいたから体力的にきついはずなんですが、なぜかさらっとこなせました。それがいけないんだろうな。次も大丈夫!って調子に乗ってしまうから。だから、たまに2日酔いでバイトに臨むことになるんだ……。

しんどいことが分かっていても足繁く呑みの席に通うのは、やっぱりその場でしか話せないこと、できないことがあるからです。



翌日朝からバイトなのに地元の友達との飲みに参加した理由は、「旧友たちに会いたかったから」「本を届けたかったから」の2つ。

僕は懐かしむことが好きです。自分の綴ってきた過去を全部肯定できる気がして好きです。旧友たちとの再会なんて僕の大好物、予定が決まってからはよだれが止まりません。

思い出話に花を咲かせるだけじゃなくて、時間が流れた今だからこそ言えることをこっそり打ち明けたり、物理的にも精神的にも距離がなくなるくらいに酔いつぶれたり。

呑みの席だからこそのエンタメを楽しみたい。それが決め手の1つでした。


もう1つは自分の本を届けたかったから、です。

僕は先日、『Message』という小説を出版しました。成人の日を舞台にしたヒューマンミステリーです。Amazonで販売中なんですが、まだ無名の僕の本なんて見つかるはずもないので、チャンスがあればせっせと手売りしています。

成人の日を舞台にした、というくらいですから、成人の日に僕が経験したことが反映されている物語なんです。成人式や同窓会での経験からヒントを得てつくったので、一緒に過ごした旧友たちからすれば、「あ、これ実話じゃん!」と気付く箇所がいくつかあります。

そもそも成人の日の経験を忘れたくなくて、いつだって思い出せるスイッチを作っておこうと思い、手掛けた小説です。フィクションの中に現実を混ぜたくなるのは自然なことでした。

そんな物語だから、「旧友たちに読んでほしい」「僕からのメッセージを受け取って欲しい」という気持ちは、書いているさなかからありました。


旧友から突然呑みに誘われたとき、翌日バイトだし一瞬ためらったけど、懐かしみたいし、小説『Message』を届ける機会だし、すぐに承諾の返事を送りました。

結果、5冊売ることができました。

みんな優しいんだ。アルコールが背中を押してくれたこともあるとは思いますが、とても興味を持ってくれました。


作品が誰かの手に渡る瞬間、僕は大きな幸せを感じることができます。この瞬間に立ち会えるのも、飲みの誘いをOKしたからだし、小説『Message』を出版したからだし、成人式や同窓会に参加したからです。

もっと極端なことをいえば、小学校時代にまで遡ります。

僕はあの頃、嘘も陰も何も知らない純粋無垢な少年でしたから、とにかくみんなと関わっていました。みんなのことが好きだったし、嫌いな人なんていなかった。かくいう今もあんまりスタンスは変わっていない気がしますが、小学校時代の僕はとにかく真っ直ぐだったんです。

小学校を卒業してからは疎遠になっていました。中学校、高校が地元から離れた場所だったこともあり、小学校の同級生と会う機会は本当に数えるくらいでした。

時間のブランクはあれど、僕のことを覚えていてくれて、果てには呑みに誘ってくれたのは、あの頃の僕の立ち振る舞いが奏功したのかな……とも思いました。もちろん他にも理由はあるだろうけどね。


長々と語ってきましたが、僕が言いたいことはひとつ。

自分の過去が、今の幸せをつくっているということ。


◆元カノと結んだ新しい約束


「人生は物語」をモットーにして生きている僕ですから、物語のような人生を送りたいと企んでいます。

個人的に、面白い物語には伏線がつきものです。はじめの方では意味のなかった要素が、後に意味を持って、価値が生まれた、輝き出すじゃないですか。僕は伏線回収の瞬間が大好きなんです。

さっき懐かしむことが大好物とか言っていたけど、近いものを感じますよね。当時は特別意味を持っていなかった日々でも、懐かしむことで輝き出すじゃないですか。一種の伏線回収といえます。


そういえば、先日、大胆な伏線回収がありました。

元カノに会ったんです。

相談したいことがあると突然言われたので、会いにいきました。彼女とは1年以上前に別れているけれど、その後も仲が悪いわけじゃないし、むしろ仲が良い方だし、相談したり受けたりする関係でした。

とはいえ、最近は夏休みや実習が重なったこともあり、なかなか会っていませんでした。久しぶりの再会です。彼女の話した相談とは、今お付き合いしている恋人にまつわることでしたが、それ以外にもお互いの近況を話し合ったりしました。

また、思い出話にも浸ったんです。

そろそろ耳にたこができる頃かもしれませんが、僕は伏線回収(懐かしむ)ことが好きです。彼女とこういう話をする、できるとは思っていなかったので、僕はとても嬉しかったし、楽しかった。


2人で記憶の旅をしていると、1冊の本に辿り着きました。

『君はマスクを取らない』という、僕の書いた小説です。今、どこにも公開していない作品なんですが、個人的に結構気に入っているんです。

いつもマスクをしている女子高生と、思案だけが取り柄の男子高生が「言葉」を介して紡ぐ青春純愛物語。

元カノと付き合う前のこと。彼女が僕の作品に興味を持ってくれて、読んでもらった物語です。章を読み終える度に、電話で感想を伝えてくれました。彼女との距離を縮めたのは、あの作品といっても過言ではありません。


先日久しぶりに会ってその話になったとき、僕はあることを思い付きました。


『君はマスクを取らない』を本にしよう。
元カノと一緒に再創作しよう。


それが僕と元カノとの物語として最高だと思ったんです。2人をつないだ物語を一緒に作り直すことで、全ての過去を肯定する。これ以上の伏線回収はないと思いました。

それを打ち明けたら、元カノは承諾してくれました。すごい乗り気になってくれて、表紙の写真の被写体になってくれるそう。あの頃からヒロインと元カノが似ているというくだりがあったので激熱の展開です(笑)


元カノと一緒に作品をつくる。

約束を交わしたとき、僕は大きな幸せのなかにいたんですよね。思い返してみれば、それは伏線を回収したからです。

あのとき元カノと別れたのは、
関係を新しくして、
この約束を果たすためだったんだ。


ちなみに、先日元カノと話していたのはベンチとブランコしかない公園。彼女から別れを告げられた場所です。

この場所でふられたことにも意味があったんだ。
もう1度、同じ場所で始めるためだったんだ。

そんな風に思えたんですよね。




◆伏線を回収するという生き方


こんな感じで、僕は伏線を回収するという生き方をつらぬいています。

何か判断に迷ったとき、どうすれば伏線を回収できるか、とか、いつか回収するためにはどっちがふさわしい選択か、とか、そういった思考回路が組まれるようになっちゃたんですよね。

意図的に、伏線を張りにいくこともあるし、回収することもあるんです。


僕は人を嫌いにならないようにしています。たとえ今が嫌いでも、未来のどこかでその出逢いの意味に気付けるかもしれないじゃないですか。自分にとってプラスになることがあるかもしれないので、関係を完全に断ち切ることはあんまりしないんです。この考え方は、「伏線を張りにいく」という意識があるから生まれるものです。


成人の日の経験を物語にするという行為は、「伏線を回収する」という意識からくるもの。ちなみに小説『Message』は、成人の日だけでなく、僕の20年分の人生を詰め込んだ物語ですので、20年の間に張った伏線を回収しにいっています。


元カノと再創作しようと決めた『君はマスクを取らない』という作品、実はコロナ前に書いた作品なんです。でも、世界が変わって、マスクを取らない人ばかりになって、誰しもに心当たりのある物語になりました。

コロナによって失われたものは数知れないけど、きっと手にしたものもあるはず。僕の元カノとの出会いはコロナ真っ只中ですから、それもそのひとつといえるでしょう。

そんな風に過去を肯定していきたい気持ちが強くあります。というわけで、未確定ではあるけれど、『君はマスクを取らない』はコロナ禍の時代を肯定するような物語にしたいなあと思います。


現実で張られた伏線を、物語で回収しにいく。

まさに「人生は物語」です。


長い時間をかけて回収された伏線は大きな幸せを感じることができます。一瞬の快楽よりも、僕はそっちの方に用があるので、これからも伏線を張っていくし、回収していこうと思います。

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20221031 横山黎




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