【ショートショート】古い日記帳
会社員の恵は、仕事帰りにふと立ち寄った神田の古びた書店で、ある作家が書いた一冊の古い日記帳を見つけた。
木製の本棚に並ぶ他の本と同じように色褪せていたが、その表紙には手書きの文字が刻まれていた。好奇心に駆られ、恵は日記を手に取り、慎重にページをめくった。すると、ページには丁寧な筆跡で日常の出来事や感情が綴られており、どこか懐かしさを感じさせる香りが漂ってきた。
一ページ、一ページと読み進めるうちに、恵は次第にその世界に引き込まれていった。日記の中には、まるで自分自身が体験したかのような共感できる出来事がいくつも描かれていた。時には笑い、時には涙し、恵はその場に立ち尽くして読みふけった。
「こんなにも私と似た感性を持った人がいたなんて...」恵は胸が熱くなるのを感じながら、日記を大切に抱きしめた。その瞬間、彼女は新しい人生の一歩を踏み出す決意をした。古い日記帳を通じて、彼女は自分自身を再発見し、未来への希望を取り戻すことができたのだ。
店を後にした恵は、夕日に照らされた街並みを眺めながら、これからの人生に思いを馳せた。どんな困難が待ち受けていようとも、自分自身を信じて前に進む勇気を持とうと心に誓った。