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読み切り小説「虚無への帰還」
虚無への帰還
第一章:黄昏の金融街
「御堂筋の帝王」と畏怖される、大阪金融界の重鎮、 我孫子 龍造 会長が、帝国金融グループの総帥の座から、まさかの退任劇を演じた。
「まさか、あの龍造さんが…」
「政界との黒い繋がりが、遂に明るみに…?」
様々な憶測が飛び交う中、後任に指名されたのは、創業家出身の御曹司、 難波 征一郎 だった。
「若すぎる…」
「器じゃない…」
社内外からの冷ややかな視線を感じながらも、征一郎は帝国金融の改革に乗り出す。
第二章:改革の狼煙
「旧態依然とした体質を打破する!」
征一郎は、長年グループを蝕んできた、保守的な官僚主義と、癒着体質にメスを入れる。
「聖域なき改革だ!」
「抵抗勢力は排除する!」
若きリーダーの号令の下、帝国金融は、大胆なリストラ、新規事業への参入、海外展開など、次々と新しい戦略を打ち出していく。
第三章:楽園の罠
「改革は順調に進んでいる…」
「帝国金融は、再び成長軌道に乗った…」
征一郎は、手応えを感じていた。
だが、その時、背後から忍び寄る、黒い影に気付く由もなかった。
「会長、大変です!」
「何事だ!?」
「株価が暴落しています!」
「何…!?」
第四章:奈落の底へ
気が付けば、帝国金融は、巨額の赤字を抱え、倒産の危機に瀕していた。
「何故だ…?」
「何故、こんなことに…?」
征一郎は、混乱していた。
そんな中、一人の男が、征一郎に近づいてきた。
「難波社長、お疲れ様でした」
「…貴様は…?」
「私こそが、真の黒幕です」
男は、冷笑を浮かべながら、征一郎に告げた。
「全ては、私が仕組んだことですよ」
第五章:虚無への帰還
「貴様の目的は…?」
「簡単ですよ。帝国金融を、そして、あなたを、破滅させること」
男は、征一郎の耳元で、囁いた。
「さようなら、難波社長」
男は、不気味な笑みを残して、去っていった。
征一郎は、全てを失った。
名誉も、財産も、そして、未来も。
帝国金融は、解体され、征一郎は、失意のうちに、姿を消した。
誰も、彼の行方を知らない。
ただ、一つだけ確かなことは、彼が、二度と、表舞台に姿を現すことはなかったということだ。
(完)