【ショートショート】熊本の防空壕
これは、私が小学生の頃の話である。
熊本の防空壕は、地底の迷宮のように広がっていた。暗闇の中、ひんやりとした空気が肌を刺し、足元には湿った土の感触が広がる。防空壕の壁には、戦時中の緊迫した空気が今もなお残っているかのようだった。
その日、私は友人の誘いでこの防空壕を訪れることになった。友人は、ここに何か不思議なものが隠されていると信じていた。彼の言葉に半信半疑ながらも、私はその冒険に心を躍らせていた。
「ここだよ、見てごらん。」友人が指差した先には、古びた木の扉があった。扉を開けると、そこにはさらに深い闇が広がっていた。私たちは懐中電灯を手に、慎重にその中へと足を踏み入れた。
防空壕の奥へ進むにつれ、奇妙な音が耳に入ってきた。まるで誰かが囁いているかのような、不気味な音だった。友人はその音に興奮し、さらに奥へと進んでいった。
「ここに何かがあるはずだ。」友人の声が震えていた。私もその不思議な音に引き寄せられるように、彼の後を追った。
そして、私たちはついにその音の正体を見つけた。それは、戦時中にここに避難していた人々の残した手紙や日記だった。彼らの思いが、今もなおこの防空壕に息づいているのだ。
私たちはその手紙を読みながら、戦時中の人々の苦悩や希望に思いを馳せた。熊本の防空壕は、ただの避難場所ではなく、歴史の証人として今もなお語り続けているのだ。