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世界は複雑系

「複雑系科学」とは?

複雑系科学は「非線形領域を扱う科学」と言われます。非線形領域はその構成要素の膨大さから、予測がとても難しいものです。そこで「要素を全て把握しなくても、何か複雑な現象の中に法則はないのか」という視点で発達してきたのが、複雑系科学です。つまり、何億・何兆個もの要素があるような諸現象を、要素を一つ一つ見ていくのではなく複雑系の系全体で共通している法則を見つけ出して、その法則から諸現象を予測できないかを考えていくのが複雑系科学という訳です。

「複雑系科学」を参考にした物事の見方を重要だと思っている理由

 ここまで人間の社会の中で発展してきた社会予測手法や経済学などは、(要素が膨大でその動きの予測のつかない)複雑系である現実世界をまともに相手にすることはできないため、大幅に単純化してモデル化してきました。ある意味で現代社会は、現実を全く忠実に反映していないモデルを、あたかも”現実”であると信じて行動が成り立っていると言えます。

具体的には明言しませんが、特に経済分野・政治分野・社会学の中の分野でそのような、現実と乖離したものの見方が、マジョリティの中の”現実(リアル)”として世界を構成し、実際に害をもたらしている場面があります。

未来の不透明感が増す昨今、近代から続く、”経済合理性”が物事を測る支配的な尺度であるこの”単純な世界観”で、世界のあらゆる問題に対処するには限界が見えています。

環境問題から人間のメンタルヘルスまで、我々に立ちはだかる諸問題を解決するには、複雑系科学からインスパイアされた「全体の調和」「相互作用の世界観」をもって世界を観る・そして実生活を送る必要があると考えています。

現代社会のあらゆる限界点を1つ1つ解決していくことも重要ですが、もし一網打尽に解決できる方法があるとしたら、それはどのようなものになるでしょうか?

まず、一網打尽にあらゆる限界点を突破するには、今の社会を生みだしている従来の「思考法」の限界を突破する必要があると考えます。

アインシュタインの有名な言葉に「いかなる問題も、それが発生したのと同じ次元で解決することはできない」という言葉がありますが、まさに、産業革命以降人類がとり続けてきた思考方法から”次元”が一つうえの発想方法を手に入れることで、あらゆる問題を解決する可能性を含んだ思考の土台を手に入れることができるようになるのではないかと考えています。

その”次元”が1つ上の発想方法を、複雑系科学を学ぶことを通して手に入れることができると考えています。

哲学や心理学の分野でも色々と新しい次元の発想方法は提唱されていますが、それらは初学者には比較が難しく、実際に現実で活かすには高度な認識能力が求められます。一方で、科学(数学や物理学)の分野で新しい次元と呼ばれるものの方が、より確度高く現実世界で活かしやすいと思われるため、複雑系科学の知見をベースに他の分野も見ていくという方針は、現代の多くの分野で有効だと思っています。
 
実際、科学の分野で多く取り入れられる複雑系科学の思考と、近代の高度な哲学との間にには多くの類似点があります。例えば「相互作用」。ヘーゲル哲学は、世界のあらゆるものは連関しているという前提で思考しています。

また、ヘーゲルの「概念」という用語も、物事を「全体」としてとらえる、包括的に捉えるということを重視している象徴と言えます。物事の全体像を見ずに、”部分”だけを見て「こうすべきだ!」(”当為”と呼ばれます)としても、それは現実を正しく反映していませんので大抵の場合うまくいきません。一方で全体を把握し、「全体が”必然的に”目指すもの=全体が必然的に向かう方向性」としての「こうすべきだ!(”こうなる必然性がある”)」は、単なる当為を超えて、普遍性を捉えた方向性となります。

「複雑系科学」はどう役に立っていくのか?

複雑系科学の目線を知ったうえで、それをもって日常を眺めると、いま直面している問題の発想を変えた解決方法が思い浮かぶ可能性が高いです。
言い換えるとこれは「相互作用の世界観」を実践するということです。

「相互作用の世界観」では、多数のものごとは連関していて、たくさんの因果関係でなりたっていると見ます。

世界は複雑系でできているという前提に立って、あらゆるものを、「複雑系としてこれがどういう挙動を示しているのか?」というレベルまで抽象化してみると、例えば、生態系の挙動と、人間集団の挙動がじつは同じ動き方をしているとして見るなどの多くのアイデアが生まれてきます。

もちろん、厳密に正しい複雑系としての世界を捉えるにはそうとうな考証と時間がかかると思いますが、実生活を送る生活者としての我々には、こうした「相互作用の世界観」によって、多数の要素とその連関の可能性に目を向ける姿勢を備えるだけで、かなり現代の”気づかぬうちに時代遅れになっている思考方法”から離脱することができ、創りたい未来を創ることに本当に有効な一歩を踏み出せると考えています。


気になる方はこちらの本などでもっと探求してみてください。


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