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④氷山モデル ~システム思考を活かす~

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具体的に「システム思考が役立つ」場面とはどんな場面なのか?


システム思考が役に立つ場面の例をあげます。たとえば単純な解決策を繰り返しても全然解決できない問題があったとします。そうした問題に対して、より俯瞰的にシステム全体を見ることによって、そもそもの行動の土台の部分、すなわち暗黙の前提になっている部分から変えに行き、本質的な解決を図れることは、システム思考の利点であり、活かされる場面だと思います。

また、経営系のシステム思考の話には、メンタルモデル(氷山モデル)という話がよく出てきます。

https://www.change-agent.jp/systemsthinking/approach.html

これはどういう図がと言うと、氷山の一番上に出てる部分は、人間のシンプルな行動=リアクション(反応)であると言われるようなレベルのことであり、そこからさらに一段下に下がると、われわれにはある「行動」をとるに当たって、その前提になっている「習慣(行動パターン)」や、さらにそれを形づくる「目標」があることが示されています。つまり、われわれの行動は事前にある程度設計されているという見方になります。このレベルで物事を見て、変えることはリデザイン(再設計)と言われたりもします。

さらに氷山モデルをもう一個下に潜ると、どういうマクロ環境に自分たちがいて、何を前提にしているのか?どのような環境に適応しなければならないのか?とか、そもそもその習慣を形づくる元になっている目標は何か?などの、行動の「構造」のレベルが示されています。さらにそこから、その目標をもつに至った”意図”や”注意の向け方”など、人の意識や認知に関するトピックへと深まります。こうしたより根源的なものの見方は、意識・無意識の前提と書かれているレベルです。

「何をその人の脳は認知できるのか?認知しているのか?」のような、かなり根源的なレベルで、物事を改善することはリフレーミング(再解釈・再構築)と呼ばれたりもします。

ループ図はどちらかと言えば平面的にいろんな現象をたくさん並べて、問題の背景にいったい何が起こってるのか?を認知しに行く道具だとしたら、氷山モデルという思考のツールは、問題に対処するときの行動を、その前提となっている様々なレベルから考えられる、より垂直的・立体的な思考のツールだと私は解釈しています。


氷山モデルの利点は何か?


一番奥深い人間の認知の話を考えることは、本来、長期的に影響の出る本質的な解決策を生む可能性を秘めています。しかし、目に見える成果がすぐに出る場所ではないため、成果・効果に結びつかないとして軽視されがちでもあります

そのため、結局これも、短期的な成果と長期的な成果など、あらゆる時間軸で思考して、バランスを考えることが必要かと思います。

氷山の一番上のリアクション(行動・反応)レベルでのスピード感ある反応も大事で(そこが日常の基本)、ただ、基本的には目の前に現れた課題に対してパッと反射的に今までの解決パターンで反応するということをわれわれはとってしまいがちなので、メンタルモデルの考え方を使って、いつでも「深いレベルでの改善をする」ことが能力としてできる状態にあることは大事なんじゃないかと思います。

氷山モデルの利点をひとことで言うならば、われわれに問題解決の”深み”を見せてくれることでしょう。一般的な社会では中々行われない、深いレベルでの改善を分かりやすく表現していることは利点だと思います。


まとめるとシステム思考とは、ループ図か氷山モデルのことを指すのか?


システム的に考えるときに、使いやすい道具として、ループ図を使う・氷山モデルを使うことはあげられると思います。しかし、それがシステム思考のすべてだとは思いません。

大事なことは、複雑系として世界をとらえるということであり、物事には共通の パターン / 構造 があるはずだよね という意図でそれらを使うことで、これらの道具を強力に活かせると思います。

また、氷山モデルで言う、最も強力な変化を生む深い変化の話の発展としては、そこの変化を扱うツールとして、体の知性の話、無意識の知性の話などが含まれてきます。これらも含めてシステム思考と呼んでいいかもしれないと考えています。

 

氷山モデルの可能性

端的にまとめると、氷山モデルを使うことの利点は、より多くの行動の選択肢を得られることです。

氷山モデルのようなモデルを使って、様々なレイヤーで課題を解決することは、ある人や組織で完全に「習慣」になっている行動パターンに「今の環境に当てはめると、その行動パターンではうまくいかないのではないか?」という疑問を投げかけることができます。つまり、より多くの行動の選択肢を得られると言っても、並列的に、行動”アイデア”がたくさん得られるというわけではなくて、その人や組織の様々なレベルでの前提を見ることで、質的に高い行動の選択肢を得られることは重要かと思います。結果として、人の環境適応の速度を上げることができます。システム思考で、質の高い行動変容を行い、その行動を変容させていくスタイルそのものに慣れていくことは、環境に対して柔軟に変化できる精神(Mind)をつくることを可能にし、現代社会を生きていくうえで多くの果実をもたらすのではないでしょうか。

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