その姿勢は機能的?パーキングファンクションで捉える動きの可能性 PT・OTのための動作分析
こんにちは。ReHub林です。
リハビリ場面では筋力を評価することが多々ありますが、ある程度筋力が保たれていても動作に反映できない患者は溢れるほどいらっしゃいます。
では、問題は可動域制限?感覚障害?筋緊張異常?
患者の障害によって原因は様々ですが、動きの可能性を評価する際に必要な視点として「支持面の変化に対する姿勢反応」という点が重要です。
これにはクラインフォーゲルバッハの掲げた”パーキングファンクション”という概念が役立ちます。
これは、ベルンシュタインの動作構築の4段階でいう所の”筋緊張”という最もベースとなる機能をみるものです。
今回は、パーキングファンクションの評価から動きの可能性を捉える視点をお伝えします。
パーキングファンクションって?
パーキングファンクションとは、身体の各部位が過剰な連結がなく必要最低限の筋連結で結びついている状態を言います。
これは「緊張が低い」とは違います。
いかようにも動けるように準備が整った状態を指します。
パーキングファンクションになっているということは、動ける機能的な姿勢をとれているということです。
逆にパーキングファンクションになっていないということは、背臥位や側臥位などのその姿勢になってはいても、本来その姿勢から派生するはずの動きに繋がらないということです。
要するに機能的な姿勢ではないということです。
観察+動かす
まずは胸郭や骨盤等各部位の回旋など左右差を確認し、ブリッジングにより過緊張が生じている部分がないかを見て、全身の緊張状態を大まかに予測します。
次に、体幹・骨盤など中枢部の可動性を徒手的に評価します。
背臥位の場合は支持面となる背面にある程度圧を加えつつ、左右に動かします。
この時、単純に”硬さ”だけをみるのでは不十分です。
大切なことは、変化。”支持面の広がりに対する緊張状態の変化”です。
例えば、圧を加え始めた瞬間は両側の肩甲骨に荷重がかかっているとして、そこから左に動かすと、左肩甲骨の外側縁~肩峰や胸郭の左側にむけて支持面が広がりますよね。
そうした支持面の広がりに対して、その広がりの先に向けて隣接する身体各部位がさらに支持面を広げて安定を得ようとする反応が得られるかどうかが重要なのです。
イメージとしては、支持面の情報が不足している部位を予測し、その点に対する圧刺激を強調しつつ機能的な支持面を広げていく感じです。
末梢も動かす
末梢を動かす際の注意点はテンタクル活動がスムーズに生じているかを確認します。テンタクル活動とは末梢の運動に先立って中枢部の緊張を適度に高めてこれから起こる運動に適応する反応です。
例えば背臥位で頭部を挙上させる時、頭頚部の屈筋や腹筋群などが分節的かつ連続的に緊張を高めるのが通常の反応です。
この挙上操作に対して、逆に頸部伸筋群が緊張を高めてブリッジングの要素が強くなるといったエラーが生じることがあります。
このようなエラーが生じる患者の多くは、起き上がり動作で頭頚部と胸郭・肩甲骨などの反応がスムーズに協調しない場面が多くみられます。
四肢末梢を動かす場合、ごくわずかな挙上から徐々に持ち上げる運動を大きくしていきます。この時、少しずつ近位部の緊張が適度に高まっていく反応が生じると、中枢部は起こす運動に対して適応し始めていることが分かります。
これは内外旋の動きを加えるなどしても、それに連動した中枢部の緊張の変化や支持面を回旋方向に広げようとする反応が生じるため、様々な運動方向で確認することができます。
姿勢が変わっても本質は同じ
ここまで背臥位を中心に例を挙げましたが、姿勢が変わっても評価の本質は変わりません。
例えば側臥位
側臥位は、下肢屈曲位で安定性が増しますが、かといって支持面が支持面として機能していない患者も多くいます。
片麻痺や股関節の障害を抱えた患者では、下側になる大腿部がそもそもベッドから浮いており、支持面として全く機能していない場合があります。
この時も支持面の情報が不足している部分を推察し、機能している支持面から徐々に広げていくように圧情報を加えていきます。
患者の反応によっては、背臥位から側臥位へ移行する中でこの圧情報を操作し、支持面に適応する反応を引き出す手段も一考します。
まとめ
”パーキングファンクション”いかがでしたか?
次に始まる運動に適応する準備が整った状態であるかどうか?
これが真にその姿勢をとれているということだと思います。
準備が整っているかどうかは、次に始まる運動の予兆をセラピストの徒手によって疑似的に作り出すことによって反応を引き出すことで確認します。
徒手的操作の本質は、支持面にかかる圧情報の操作です。
支持面の変化・拡がりを操作し、その変化に対する身体反応が生じるかどうかを見極めます。
わずかな刺激からでも身体反応が得られるため、集中力を要しますが、動きの可能性を知る上で非常に重要な評価テクニックです。
なんとか歩けるレベルなのに、機能的な側臥位すらとれない。そんな患者を多く見かけますが、ベッド上での機能的支持面を広げるだけで、歩行が安定するということもままあります。
ぜひ評価の参考にしていただければと思います。
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