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「自己組織化」PT・OTが知るべき動作獲得の基本

こんにちは。ReHubの林です。

動作指導に関するちょっとした疑問から、「自己組織化」について書こう!!と思い立ち、執筆しました。
もう少しザックリまとめた内容は動画にしてあります👉コチラ

必殺技だらけのこの業界はちょっと不思議

リハビリ場面で動作獲得について、根本的な捉え方がセラピストによって大きく異なるのは何故でしょう?
もちろん技術的な側面も関係しますが、技術に派生するコンセプトの部分が異なることでさらにテクニックが枝分かれしているように感じられます。

ヒトの幼児期の発達はある程度決まったプロセスを辿るのに、なぜこのプロセスが理学療法や作業療法では別物となるのでしょうか?

基本動作獲得に関しては、特に不思議なポイントです。

「大人は元々動作を獲得しているから、子どもとは違う」と考える人も多くいらっしゃると思います。
では、健常成人が、環境がガラリと変わっても、片脚怪我してもそれなりに上手く代償して動くことができるのに、多くの患者が動けなくなってしまうのは何故だと思いますか?

同じ障害を負った時、みんなができない課題なのか、同じ機能でも上手く動ける人は達成できる課題なのかを考えてみるとどうでしょう?

その場合、動けないという問題の本質は、「新たに負った障害」よりも「新たに負った障害に適応できない身体」とも考えられます。
となると、発達過程で経験し、「自己組織化」によって獲得してきた動作を新たに障害を負った身体で再獲得していくことが問題の本質を改善する近道となります。

もちろん、患肢の機能改善をしないという話ではありません。良くできるものは良くします。しかし、それは活動が伴ってこそです。

今回は、この「自己組織化によって動作を再獲得する」というコンセプトのお話です。

「自己組織化」は動作獲得のために超重要な視点

ヒトは、幼児期にわずか1年足らずで基本動作を概ねできるようになりますし、2年もあれば階段昇降どころかジャンプまでできるようになりますよね。
発達関連のスケールから、どの月齢でどのくらいのことができるということもハッキリしています。

動作獲得の順序には必ず意味があります。それは、単純に「●●ができたから次は◎◎ね」ということではなく、この重力下で自己身体と周辺環境との関係性を動きの中で模索していく中で、順番に立ちはだかる壁となっているのです。

ということは、1つの動作を獲得した時、それが手がかりとなって次のレベルの運動に繋がると言えますよね。
そのため、それぞれの動作は要素的に数珠繋ぎになっているとも言えます。

この動作獲得に関する一連の流れを「自己組織化」と言います。書籍では、“環境からの情報に基づいて動き、環境と自分の間の安定した秩序を見つけ出す作業”と定義されています。

例えば、ベッドに仰向けに寝ている時に左手を右方向にリーチするとしましょう。
すると、わずかに右に重心が移動し、左背部がベッド面に接している感覚は弱くなるでしょう。反対に、右半身に重心が寄るため、右背面がベッド面に接している感覚は強くなりますね。
こうして、重力下で周辺環境の中で自分が動くということの因果関係を知るのです。

このリーチの後、右に寝返り、右側に壁がある場合、天井と壁の関係、ベッドと壁の関係、それら周辺環境と自分との位置関係も知ることができます。それぞれの周辺環境との距離や性質の違いなども含めて、自己身体の知識を蓄えていきます。
そうして、手を伸ばして届く壁が目の前にあると知覚します。

上記のように運動経験を積み重ねることで、登ることができる壁、すり抜けられる隙間という風に、自己身体と環境との関係性を学んでいくのです。

この「自己組織化」という作業をいかに治療場面で再現できるかが、基本動作へのアプローチにおいて重要です。
各動作ごとの考え方やアプローチについては、また別の記事で紹介します。

おもしろい余談

ReHub_note_自己組織化

これは余談ですが、Warren WH Jr.氏の研究によれば、”ヒトは股下の0.88倍まで足で登れると認識する”そうです。このことから分かることは、我々が自己身体を基準に行為の可能性を判断しているということです。

評価・治療場面で考えると、「着座で椅子までの距離が合わない」、「机の下の物を取ろうとして頭をぶつける」といったエラーの根底には、基準となる自己身体の認識が曖昧になっている可能性があります。

「障害を負った新たな身体」の輪郭がフワフワと曖昧な状態であれば、周辺環境の違いに柔軟に対応するということは難しいでしょうね。

まとめとReHubのコンセプト

動作指導に際し、“手順”を教え込み、運動を覚えさせるというプロセスを辿っている方には、「本当にヒトはそのように動作を獲得しているのか?」と、今一度考えて頂きたい。

もちろん答えは「No!!」です。
かの有名な冨田昌夫先生も書籍の中で、“意識した動作の練習では、意識できることしか改善しない”と仰っています。
私もこの考え方には大賛成です。

ヒトは本来どのように動作を獲得しているのか?
患者の動作を分析するために、それらの知識をどう活用するか?
そういった情報を随時アップしていきますので、次回もお楽しみください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

ReHubのコンセプトは、この「自己組織化」を促すように患者が動くための手がかりを与えるアプローチし、患者が障害なりに自然に動けるようにすることです。

何も特殊な必殺技を伝授するというわけではなく、ヒトがヒトとして動くために自然な流れを治療場面で再現していくということです。

動作分析に関するセミナーなどをご希望の方、ご意見・ご質問等ございましたら、ぜひコメントやTwitter:ReHubのDMなどでご連絡ください。

参考図書
冨田昌夫 他(編):臨床動作分析 PT・OTの実践に役立つ理論と技術,三輪書店,2018

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