色んな「整容動作の要素」と治療のヒント(PT/OT/STみんなでコラボしよ)
こんにちは。ReHub林です。
朝起きて、最初に何をしますか?
私はヒゲを剃り、手と顔を洗います。
軽くうがいもします。
朝食を摂り、マウスウォッシュをした後に歯磨きをします。
歯磨きをしながらスマホでニュースやSNSをチェックします。
そして、適当な時間に服を着替えて仕事に出る。といった流れです。
朝の僅かな時間の中に、整容動作に含まれる活動は、ヒゲ剃り・洗顔・うがい・手洗い・歯磨きでした。
セットする髪がないので、そこは個人差です。(笑)
整容動作はこんなにありふれた生活場面ですが、やはり動作分析に関する情報は少ないですね。
今回は、この整容動作がテーマです。
実施する動作にかなり個人差がありますが、ある程度共通する要素を取り上げます。どの要素も欠けてはならないものですが、特に治療視点で着目しやすいポイントは太字で表記しておきます。
ここから各動作ごとに要素とアプローチのヒントを紹介していきますね。
洗顔
器としての手の形状固定
手と顔面の相互接近
水温・ソープの粘性の検出
ソープと皮膚の二重摩擦の検出
手と顔面・頸部の洗い−洗われる関係性
頭頚部の反応に付随する骨盤・体幹の姿勢制御
清拭時のタオルとの摩擦刺激
洗顔動作の主な要素としては、以上です。
顔を拭くという「清拭」での身体反応とアプローチのヒントについては、先行してYouTubeに動画をアップしていますので、下のリンクからご覧ください。
👉「PT・OT・STどの職種でも使える整容動作の反応と治療応用」
清拭という摩擦刺激に対する身体反応以外にも評価・治療のヒントはたくさんあります。
👉水をすくったり、顔面を擦ったりといった動作は多少の違いはあれど、両手がセットになって同じ動きをしますね。
また、手と顔面が接近し合うという点は食事動作とも繫がる反応です。
上肢をコントロールして水をすくうというよりは、水をすくうために上肢をコントロールし、そのために中枢部の安定を得ようとします。
これらの視点が治療応用のポイントとして分かりやすいかと思います。
手洗い
水温・粘性の検出
ハンドソープと皮膚の二重摩擦の検出
両手の洗い−洗われる関係性
手の形状を辿り包み込む探索活動
上肢操作のための骨盤・体幹のコントロール
👉両手動作の中でも、手洗いは、手と手がお互いに能動的探索の中で向かい合っていく面白い動作です。そのポイントをおさえて手洗い動作から上肢のコントロールや姿勢調節にアプローチすると多角的に治療応用することができますね。
歯磨き
歯ブラシによる粗な摩擦刺激
歯ブラシ先端によるダイナミックタッチ・リモートタッチ
手と口腔の磨きー磨かれる関係性
手と顔面・頸部の協調
歯列など、口腔内環境の認識
道具を介して自身の身体と関わるという視点では、洗体動作や更衣動作と近いですが、歯磨きは上肢と口・頸部に限定的な反応が得られますね。
口腔内の探索という点で、摂食活動と密接な関係性にあります。
👉歯や歯茎だけの刺激だけでなく、舌への刺激も含めて頭頸部の反応を引き出す手がかりを与えます。この時、座位のコントロールも調節していくと、より反応が得られやすいですね。
多職種での同時介入という夢のコラボ!
これはかなり楽しいです。
うがい(口に含んでから)
閉口状態の維持
口腔内圧の変化の検出
口唇閉鎖と内圧との拮抗保持
吐き出す過程での洗面台への接近
頭頚部の前方突出による体幹との空間調節
うがいは、特に口腔機能を強く反映します。顔面に麻痺がある場合、口腔内や口部周辺の内圧変化に対する緊張の調節が難しいことがありますね。
治療的視点では、歯磨きや食事などその他の活動とセットで、口腔・舌の運動を引き出しつつ反応を評価していくことが主となるでしょう。
身体動作としては、吐き出す過程に注目です。そのまま吐き出すと身体がビチョビチョになってしまいますよね。
👉洗面台やガーグルベースへの接近、洗面台による体幹の固定など周辺環境と自己身体を安定させつつ、接近動作が得られるため、食事場面と似た反応が得られるかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
整容動作は、本人の生活習慣や使用する道具によっても動作が異なりますが、それらが変わっても共通する要素という視点で書きました。
ここでお伝えしたいことは、普段我々が日常的に行っている生活動作の要素の中に患者を評価するポイントが溢れているということです。
これらの要素を念頭に置いて、患者の生活動作を観察すると、その他の活動における問題との共通点が見えてくるでしょう。
そうして多くの活動場面で共通する問題が、障害の根本にある問題点として評価・治療すべきポイントであると考えられます。
食事のために食事の練習
更衣のために更衣の練習
上肢コントロールのためにピンチや巧緻性の練習
ではなく、
動作障害のボトルネックとなっている要素を紐解き、行為の中で目的となる身体反応を引き出すことが、重要な治療的視点です。
1人では手が足りないということもあるはずです。
そんな時は、各セラピストの専門性を活かして、コラボレーションしてみてはいかがでしょう?
きっと良い変化を起こすことができるでしょう。
この記事が、患者の当たり前を取り戻すきっかけになれば幸いです。
また、多職種間連携のすばらしさを知っていただくきっかけにもなることを祈っています。
その他の生活動作の要素についての解説は以下のリンクからご覧ください。
「食事動作の要素」を知ってリハビリ専門職みんなでコラボしよう!
「排泄動作の要素」PT・OTが人としての尊厳を守るための動作分析
PT/OTのための更衣動作3つのプロセス
PT・OTのための動作分析「更衣動作の本質と要素」
動作分析セミナーに関するお問い合わせ、ご意見・ご感想等ございましたら、ぜひコメントしてください。
Twitterアカウント@ReHub5のDMでもお気軽にご連絡ください。