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睡眠前のタンパク質の摂取が筋トレの効果を最大化させる最新エビデンス


 筋肉のもととなる筋タンパク質は食事でタンパク質を摂取すると合成量が増加し、空腹になると分解量が増加します。このサイクルが24時間で繰り返されることで筋肉量が維持されています。

 筋トレを行うと、筋タンパク質の合成能力が24時間高まります。そのため、筋トレ後の3食の食事で最適なタンパク質の摂取量を摂取することによって、筋タンパク質の合成量を大きく増加させることができます。これによって筋肥大の効果を高めることができるのです。

『筋トレ後のタンパク質摂取は「24時間」を意識するべき理由』
『筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう!【2023】』

 しかし、ここには大事な時間帯が抜けています。それは「睡眠中の時間」です。

 マーストリヒト大学のBeelen氏らによる研究では、夕方のトレーニングの後にタンパク質を摂ったとしても、夜間の睡眠中に筋タンパク質の合成量が低下する可能性が示唆されています。これは筋肥大の効果を高める上での重要な課題として注目されています。

 つまり、睡眠中は筋タンパク質の合成量が高まらない一方で、分解量が増えるため、筋肥大の効果を損ねる可能性があるのです。

 そこで、就寝前にタンパク質を摂取することで、睡眠中の筋タンパク質の合成量を増やし、筋肥大の効果を最大化することは可能なのでは?という研究がスポーツ栄養学の分野で行われてきました。

 今回は、過去の研究報告を順を追って見ていきながら、この疑問の答えとなる最新のシステマティックレビューの結果をご紹介しましょう。

 システマティックレビューとは、これまでの研究結果をまとめて解析し、全体としてどのような傾向があるかを示すエビデンスレベルがもっとも高い研究デザイン。



◆ これまでの研究報告を順を追って見てみよう!


 睡眠前のタンパク質の摂取が筋タンパク質の合成にどのような影響を与えるのか?この疑問について最初に研究を行ったのがマーストリヒト大学のResらです。

 2012年、Resらは、筋トレをした被験者を睡眠前に40gのタンパク質を摂取するグループと、ただ水(プラセボ)を摂取させるグループに分けました。睡眠後7.5時間が経過したところで、筋タンパク質の合成率を計測しました。

 その結果、睡眠前にタンパク質を摂取したグループは、水だけを飲んだグループに比べて、筋肉のタンパク質の合成率が約22%増えていたことが認められました(Res PT, 2012)。

Res PT, 2012より筆者作成


 また2015年、Snijdersの研究チームは、筋トレの経験者を対象に、12週間のトレーニングを行い、それと並行して睡眠前に30gのタンパク質(カゼイン・プロテイン)を摂取させる研究を行いました。

 その結果、睡眠前に水を飲んだグループと比べて、タンパク質を摂取したグループの大腿四頭筋の筋肉量が増え、さらに最大筋力も強くなることが示されました(Snijders T, 2015)。

Snijders T, 2015より筆者作成

 

 また、「夕方の筋トレ」と睡眠前のタンパク質摂取の組み合わせは、筋肥大の効果をさらに促進すると報告されています。

 2016年、Trommelenらは、平均年齢23歳の被験者を対象に、異なる時間帯にトレーニングを行いました。そして、睡眠前に30gのタンパク質(カゼイン)を摂取した後、筋タンパク質の合成率を比較しました。

 その結果、夕方にトレーニングを行ったグループは他の時間帯に行ったグループよりも、筋タンパク質の合成率が30%以上も増加したことがわかりました(Trommelen J, 2016)。

Trommelen J, 2016より筆者作成

 これらの研究報告から、筋トレをした日の睡眠前のタンパク質の摂取は就寝時の筋タンパク質の合成量を高めることで筋肥大の効果に寄与する可能性が示唆されているのです。

 そして2021年、これらの研究報告をまとめて解析したエビデンスレベルのもっとも高い研究手法であるシステマティックレビューが行われました。


◆ 最新のシステマティックレビューの結果とは?


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