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【利き足】って本当にあるの?下腿三頭筋の左右差の研究とは!

みなさん、「利き手」は当たり前のように意識していると思いますが、「利き足」について考えたことはありますか?

たとえば、ボールを蹴るとき、ジャンプするとき、どっちの足を使いますか? 多くの人が無意識のうちに同じ足を使っているはずです。

でも、ふと疑問が浮かびますよね。「そもそも足にも“利き”ってあるの?」って。

今回は、下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)に左右差があるのかどうかを、研究結果をもとにわかりやすく解説していきます!


「利き足」ってどうやって決まるの?


利き手は、箸を持つ手や字を書く手で簡単に判断できます。でも、足の場合はどうでしょう? 実は、利き足には2つの種類があるんです。
• 機能脚(動かす側) → ボールを蹴るときに使う足
• 支持脚(支える側) → 走り幅跳びで踏み切るときの足


多くの人が「蹴る足(機能脚)」は右、「踏み切る足(支持脚)」は左になります。でも、個人差があるので、一概には言えません。

では、実際の研究結果を見てみましょう!


研究の概要


今回の研究では、38名(男性9名、女性29名)を対象に、ふくらはぎの筋肉の大きさ(筋厚)と筋力を測定しました。

平均年齢:46.1歳(±8.6歳)
平均身長:160.5cm(±8.6cm)
平均体重:58.4kg(±11.5kg)


対象者は全員、ケガや障害がなく、日常生活で普通に歩いたり走ったりできる健康な人たちです。

「利き足」のアンケート結果

まず、参加者に「ボールを蹴る足」と「踏み切る足」を聞いたところ、こんな結果になりました。

✅ ボールを蹴る足(機能脚)
• 右足:94%(36人)
• 左足:6%(2人)


✅ 踏み切る足(支持脚)
• 右足:63%(24人)
• 左足:37%(14人)


ほとんどの人が「右足で蹴る」「左足で踏み切る」傾向があることがわかりますね! でも、これって本当に筋肉の付き方にも影響しているのでしょうか?


ふくらはぎの筋肉に左右差はあるの?


次に、超音波を使って筋肉の厚さを測り、筋力を測定しました。

その結果がこちら!

筋厚(ふくらはぎの筋肉の厚み)



足の筋力(つま先立ちの力)

|  | 機能脚 | 非機能脚 | 支持脚 | 非支持脚 |
|—|—|—|—|
| 足関節底屈筋力 | 1.05 | 1.03 | 1.02 | 1.07 |

……ん? 数字を見ても、ほとんど違いがないですね。

統計的に見ても、機能脚(蹴る足)と非機能脚、支持脚(踏み切る足)と非支持脚の間に有意な差はありませんでした。

つまり、「利き足があるから筋肉が発達している」というわけではないようです。


なぜ左右差がないの?


今回の結果を見ると、ふくらはぎの筋肉は左右均等に発達していることがわかりました。これはなぜでしょう?

理由として考えられるのは、日常の動作が左右均等に筋肉を使うようになっているからです。

たとえば、
歩くときは両足をバランスよく使う
立っているときは、片足だけに負担をかけない
姿勢を維持するために、両足で均等に体重を支える

実際、過去の研究でも「大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)やハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)に左右差がない」という結果が出ています。

つまり、下肢は「動くための道具」なので、体が無意識にバランスよく発達させているんですね。


じゃあ、「利き足」って何なの?


「筋肉の大きさや力に違いがないなら、利き足って意味あるの?」と思うかもしれません。

実は、左右の違いが出やすいのは「筋力」ではなく、「協調性や動きのスムーズさ」なんです。

例えば、サッカーをしている人に「どっちの足でシュートを打つ?」と聞くと、ほぼ100%決まっていますよね。でも、それは「蹴る足の筋力が強いから」ではなく、「蹴る動作が得意な足」だからなんです。

つまり、「利き足=得意な動きをする足」という考え方が正しそうですね。


まとめ


今回の研究では、ふくらはぎの筋力や筋肉の厚みに左右差はなかったことが分かりました。

「蹴る足」「踏み切る足」は人それぞれ違う!
でも、筋肉の発達にはあまり影響しない
左右差が出るのは、筋力ではなく「動きのスムーズさ」

「利き足があるからこっちの足の筋トレを重点的にしたほうがいい?」と思っていた人も、そこまで神経質になる必要はなさそうです。

むしろ、バランスよく両足を鍛えることが大切! ということですね。

スポーツをする人は、普段あまり使わない足の動きを意識してトレーニングしてみると、よりスムーズな動きができるようになるかもしれません!

みなさんも、自分の「利き足」をチェックしてみてくださいね!

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