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股関節の柔軟性が動作に与える影響とは?股関節外旋筋との関係を解説!
「最近、しゃがんだときに膝や腰が痛くなる…」「靴下を履くときに股関節が硬く感じる…」そんな悩みを感じたことはありませんか?それ、もしかしたら 股関節の可動域の制限 が原因かもしれません。
日常生活では、立ち上がりやしゃがみ込み、靴下を履く、足の爪を切るなど、股関節の柔軟性が必要な場面が意外と多いんです。ところが、 股関節の動きが悪くなると、腰や膝に負担がかかりやすくなり、痛みの原因になることも…。
では、股関節の動きを制限しているのは何なのでしょうか?実は、 「股関節外旋筋」 という筋肉群が深く関係していることが研究で分かっています。
今回は、 「股関節外旋筋が股関節の動きにどう影響するのか?」 について、具体例やデータを交えながら分かりやすく解説していきます!
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股関節外旋筋ってどんな筋肉?
まず、「股関節外旋筋」という言葉を聞き慣れない方も多いと思うので、簡単に説明しますね。
股関節外旋筋とは、 太ももを外側に回す(外旋させる)働きをする筋肉 のことを指します。これらの筋肉は、主に 骨盤の後ろ側 についていて、歩行や立ち上がりの際に股関節を安定させる役割を持っています。
代表的な外旋筋には、次のようなものがあります。
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図の青色の筋肉で上から
• 梨状筋(りじょうきん)
• 上双子筋(じょうそうしきん)
・ 内閉鎖筋(ないへいさきん)
• 下双子筋(じょう・かそうしきん)
• 大腿方形筋(だいたいほうけいきん)
これらの筋肉が硬くなったり、過剰に緊張すると 股関節の動きが制限され、特に「股関節の屈曲(前に曲げる動作)」に影響を与える ことが分かっています。
では、実際にどのような影響があるのか、研究データを見てみましょう。
股関節外旋筋と股関節の屈曲角度の関係
ある研究では、20代の健康な男女60名(男性30名、女性30名)を対象に、 股関節の内旋角度(内側にひねる角度)が変わると、股関節の屈曲角度(前に曲げる角度)がどう変化するか を調べました。
結果として、
股関節を内旋(内側にひねる)するほど、股関節の屈曲角度が減少する ことが分かったのです!
具体的なデータを見てみましょう。
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この表を見ると分かるように、 股関節を内側にひねる(内旋させる)ほど、股関節の屈曲角度が減少しています。
つまり、 股関節外旋筋(梨状筋や内閉鎖筋など)が硬くなっていると、股関節の屈曲動作が制限される可能性が高い ということなんです!
股関節外旋筋をほぐすと動きが良くなる!
では、股関節の動きを改善するためにはどうすればいいのでしょうか?ポイントは 股関節外旋筋をほぐして柔軟性を高めること です!
簡単にできるストレッチ
ここでは、 股関節外旋筋をほぐすための簡単なストレッチ を紹介します。
① 梨状筋ストレッチ
やり方:
1. 仰向けに寝て、右足を左膝の上に乗せる(足を組むような形)。
2. 左足を両手で抱えて、胸に引き寄せる。
3. お尻の奥が伸びる感覚を感じながら20~30秒キープ。
4. 反対側も同様に行う。
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このストレッチを毎日続けることで、 股関節外旋筋の柔軟性が向上し、股関節の屈曲動作(しゃがみ込みや足の爪切りなど)がスムーズになる 可能性があります。
まとめ
今回は、 「股関節外旋筋が股関節の屈曲に与える影響」 について解説しました。ポイントをおさらいしましょう!
✅ 股関節の動きが悪くなると、日常生活の動作に影響が出る。
✅ 股関節外旋筋(特に梨状筋や内閉鎖筋)が硬くなると、股関節の屈曲動作が制限される。
✅ 研究では、股関節の内旋角度が増えると、股関節の屈曲角度が減少することが確認された。
✅ 股関節外旋筋をほぐすストレッチを取り入れることで、動きが改善される可能性がある。
「最近、しゃがんだり靴下を履いたりするのがつらい…」と感じている方は、 股関節外旋筋を意識してケア してみると良いかもしれません。毎日のちょっとしたストレッチが、将来的な股関節の健康につながりますよ!
まずは 梨状筋ストレッチ から始めてみましょう!
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これらの文献をもとに、股関節の可動域制限と外旋筋の影響について解説しました。