理学療法士が見習うべき言語聴覚士の能力
医療・介護分野におけるリハビリテーション専門職は主に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士という3種類の職種で構成されます。
それぞれに専門性があり、そこに優劣はありません。
しかし、ごく一部の理学療法士は理学療法士が一番偉いかのように振る舞っていたり、言語聴覚士を卑下するような発言もあったりします。(Twitterでもそのようなツイートが散見されますが、気分悪いので引用しません)
私自身、個人的に言語学に興味があることもあり、言語聴覚士をリスペクトしています。
今回は、言語聴覚士という職種の専門性において、理学療法士が見習うべき点について書いてみたいと思います。
この記事を読むと、
●理学療法士が言語聴覚士から学ぶべき能力がわかる
●コミュニケーションの大切さを再確認できる
●より良い理学療法を提供するために必要なことがわかる
言語聴覚士の専門性
理学療法士である私が言語聴覚士について勝手に語ると怒られそうなので、まずは法律上の定義から引用したいと思います。
この法律で「言語聴覚士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいう。(言語聴覚士法 第一章 第二条)
定義を改めて見て驚きましたが、嚥下についての記載がないのですね。
法律上、言語聴覚士の専門性は音声機能、言語機能、聴覚機能の維持向上ということになりそうです。
ここからは現場で言語聴覚士さんたちを見ていて個人的に感じることなのですが、患者さん・利用者さんの話を聞くのが非常に上手です。
言葉の出づらい方でも、遮らず、ゆっくりと話を聞いている印象があります。
端的に言葉にするなら『傾聴』ということになるのでしょうが、この『傾聴』を中心としたコミュニケーションをとる能力こそ、理学療法士が言語聴覚士から学ぶべき能力だと考えています。
理学療法士に足りない『傾聴』
理学療法士の全員が全員『傾聴』していないと言うつもりはないのですが、言語を専門に扱う言語聴覚士に比べると、『傾聴』に割く時間は少ないのではないかと感じています。
私自身、今でこそ患者さん・利用者さんの話を聞くことを軸に臨床を組み立てたりしているのですが、理学療法士になりたての頃は運動や練習をすることばかりに意識が向いていた気がします。
今の若い理学療法士は私たちの頃よりも上手くできているのかもしれませんが、それでも理学療法士は運動・練習に割く割合が多いのではないかと思います。
患者さん・利用者さんの話を聞くというのは、全てにおいて基本だと考えています。
症状を詳しく聞く、生活状況を詳しく聞く、身体の不調や困難について聞く、それに対する想いを聞く、などなど。
痛みや動きづらさといった症状について細かく聞く理学療法士は多いと思いますが、それに対するご本人の想いや気持ちまで聞けている理学療法士は、果たしてどれくらいいるのでしょうか。
「そんなところまで語って良いんだ」と患者さん・利用者さんに思わせられる理学療法士はどれくらいいるのでしょうか。
勝手な思い込みかもしれませんが、こういった情報を一番多く得られやすいのが、言語を中心に扱う言語聴覚士なのではないかと思っています。
コミュニケーションはリハビリテーションに必要不可欠
リハビリテーションとは、全人的復権です。その人がその人らしさを取り戻すということです。
リハビリテーションの主役は患者さん・利用者さんご本人であり、我々医療従事者や療法士ではありません。
そう考えるならば、患者さん・利用者さんの想いを知らずに、なぜリハビリテーションに向かうことができるのでしょうか。
理学療法士は歩行に拘りがちですが、ご本人は本当に歩行に困っているのですか?
ICで踵から接地することにやたら拘る理学療法士は多いですが、その重要性や理由をご本人は理解されていますか?
ご本人が困っていないこと・重要性を感じていないことを改善しようとする理学療法は、ただの理学療法士のエゴではないですか?
理学療法士は、もっと患者さん・利用者さんと話をして、その方の考えていること、想っていることを知ろうとする努力をすべきだと思うのです。
そのために、我々理学療法士が言語聴覚士から学ぶことは非常に多いのではないかと勝手に思っています。
もしかすると、言語聴覚士は我々理学療法士が持っていないような情報、ご本人の想いや考えを知っているかもしれませんよ。
まとめ
今回は理学療法士が言語聴覚士から学ぶべき『傾聴』を軸にしたコミュニケーションについて書いてきました。
理学療法士が全員コミュニケーション不足で、言語聴覚士が全員優れたコミュニケーション能力を持っていると言うつもりはありません。
しかし、職種の特性・専門性を考えると、『傾聴』を軸としたコミュニケーションは理学療法士よりも言語聴覚士の方が得意な場合は多いのではないかと思います。
この他に理学療法士が言語聴覚士から学ぶべきこととして、言語を解釈するという能力があると考えていますが、これについては引き続き別の記事で書いていこうと思います。
おわりに
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