訪問看護のリハと訪問リハは同じなの?
私は理学療法士ですが、訪問看護ステーションに勤務しています。
訪問看護ステーションに勤めていると言うと、一般の人からは「看護師さんですか?」と聞かれることも少なくありません。
一般の方がご存知ないのは当然のこととして、療法士の中でもこの辺を理解していない方は多いのではないでしょうか。
今回は混同されがちな訪問看護(理学療法士等の訪問)と訪問リハビリテーションの違いについて、現場の感覚からお伝えしたいと思います。
リハビリテーションだけど訪問看護
訪問看護ステーションにおける理学療法士等による訪問の取り扱いについて、厚生労働省の資料では以下のような記載があります。
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問看護は、その訪問が看護業務の一環としてのリハビリテーショ ンを中心としたものである場合に、看護職員の代わりに訪問させるという位置づけのものである(社保審-介護給付費分科会 142回,参考資料2)
つまり、『看護師さんによる訪問看護の中にリハビリテーションが含まれているけど、看護師さんはリハビリテーション以外の業務で手一杯なので、リハビリテーションが中心である場合は理学療法士等が代わりに訪問して良いよ』という位置づけになっています。
こういう制度上の規定だけでは、訪問看護ステーションにおける理学療法士等の訪問も訪問リハビリテーションも同じものです。
正直、外から見ると同じことをしていると思われるのは仕方ないと思います。
だって、同じリハビリテーションですから。
訪問看護ステーションから理学療法士等が訪問する意義
同じリハビリテーションであれば、別にどっちを選んでも良いですよね。
と、思われがちかと思いますが、ハッキリ言います。
違います。
世間から、もしくは訪問リハに従事する方から反論があるかもしれませんが、あくまでも私個人の感覚として、訪問看護ステーションから理学療法士等が訪問する意義を挙げさせていただきます。
①生活を支援するという視点でのリハビリテーション
②看護師さんとの密な連携
色々あるので端的に言葉にするのは難しいのですが、まとめるとこの2点になりました。
それぞれについて説明したいと思います。
生活を支援するという視点でのリハビリテーション
私がこれまで働いてきた環境によって偏見があるかもしれませんが、リハビリテーション専門職である療法士は、身体機能を回復して問題解決を図ることが多いと思います。
歩けなかったら歩けるようにする。
生活に必要な料理ができなかったら、その原因となる身体機能の改善を図る。
疾患特性もありますが、こんな考え方から出発することが多いのではないでしょうか。
だからこそ、訪問リハでは終了とか卒業について議論されることが多いように考えています。
だって、問題が解決したら終わりですから。
一方、私の考える訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問では、第一選択は身体機能の改善ではありません。
私が普段から関わる利用者さんの多くは、既に自宅(施設の場合もありますが)で生活されている方です。
または、退院してこれから自宅で生活を再開する、というタイミングで関わります。
この場合、生活するのに待ったなしなんですよ。
「身体機能が改善するまでトイレは我慢しましょう」なんて悠長な事は言ってられないわけです。
なので、いかに早期に生活を成り立たせるかというのが最優先事項となります。
そうなると、福祉用具や他サービス(ヘルパーさんや訪問入浴など)の導入、方法の変更、協力いただけるご家族には手伝い方の提案などなど。
使えるものを何でも使って生活を成り立たせないとならないわけです。
そうして、まずは生活を成り立たせた上で、利用者さんが希望するのであれば身体機能の回復を目指し、より良い生活の実現を目指します。
一度成り立った生活も、それがずっと継続できる訳ではありません。
生活していると、新しい問題が次々に出てくるんです。
そうなると、卒業とか言ってられない訳です。もちろん、稀に卒業される方はいますが。
それは疾患由来のものかもしれないですし、加齢に伴うことかもしれません。
薬の自己管理が難しくなった、排便コントロールができなくなった、なんて問題も生じてきます。
そんなとき、私たちの強みになるのが、すぐ近くに看護師さんがいるということです。
看護師さんとの密な連携
これを読んでくださっている療法士のみなさん、知ってますか?
看護師さんってすごいんですよ。
利用者さんの生活のために、体調管理するし、薬の管理もするし、排泄のコントロールもするし、入浴介助もするし、皮膚や爪のケアもするし、精神的なケアもするし、主治医との連絡も迅速だし、場合によってはリハビリテーション(運動)もするんです。
そうすると、療法士が利用者さんの生活を支えるためにできることって、非常に狭い範囲なんです。
卑屈になってるわけではなく、役割分担だと考えています。
看護師さんは利用者さんの生活を支援するのが得意な職種です。
この点、療法士は勝てません。
別に勝ち負けじゃないんですが。
一方、療法士は利用者さんの運動や生活環境を観察・評価し、改善するのが得意な職種です。
そういう意味では、狭く深くって感じですね。
療法士と看護師さんの信頼関係ができていれば、お互いに相談することができます。
療法士は、利用者さんの体調のことについて、看護師さんに相談します。
看護師さんは、利用者さんの動きや介助方法、生活環境や福祉用具なんかについて療法士に相談してくれます。
この連携は、訪問リハではやりづらいところではないでしょうか。
まとめ
訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問と訪問リハビリテーションの違いについて考えてみました。
訪問看護側からの一方的な解釈なので異論はあるかもしれませんが、少なくとも私自身はこんな視点でリハビリテーションを捉えています。
利用者さんの生活を支えるという視点に立ったとき、私たち療法士にできることは沢山見つかります。
一方で、私たち療法士にできないことも沢山見つかります。
訪問看護ステーションで行うリハビリテーションは、看護師さんと協力して利用者さんの生活を支えることができるのが一番の強みです。
こんな視点で地域住民の生活を支える仕事ができれば、そんな仕事をする療法士が増えれば、ちょっと住みやすい地域になりそうじゃないですか?
読んでくださってありがとうございます。 いただいたサポートは今後の勉強、書籍の購入に充てさせていただくとともに、私のやる気に変換させていただきます。