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【短小説】『年越しそば』


昨日、良いお年を…なんて言ってたのにすぐに今年もよろしく…になってしまう。

年越しそばはその年の大晦日、年を越す前に食べるらしい。そばを残してしまうと金運が下るようで残さず食べる。

うちの父親は毎年、そばを打ってくれていた。

だから大晦日には打ち立てのそばを家族皆で食べるのが恒例だった。

だけど、父亡き今は打ち立てのそばを食べる事は出来ない。

そうだ、今度は自分がそばを打って家族に食べさせよう、そう思ったリョウタは動画を見て、そして父が打っていた場面を思い出し、そば打ち始めたのであった。

父の蕎麦はつなぎを一切使わない十割そばだった。

「家で打つ時、そして年越しには十割に限る、なかなか食えないし、そば本来の味なんだ、つなぎなんざぁ使わねぇでよ」

そう言っていた、父と同じ十割そばにしようかと思ったけど、僕は初心者なのでつなぎを使う事にした。ボソボソで上手くいかなかったら不味いから…。

生地を少し太めに切るのが我が家流だ、典型的な田舎そば。

つゆは父が作っていたストックがあったので、それを使用。でもこれも来年は僕が作らないと…。でもつゆはそばより難しい。鯖の節が効いたそばつゆは太めのそばには相性がいい。


完成!そばは見た目も悪くない、

ここにねぎと一味の唐辛子、好みでわさびも…。


皆、完食してくれた、

僕が打ったそばは初めてにしては好評だった。


明けましておめでとう!!


そばを完食して、新年が訪れた。


僕のそばを食べて皆笑顔で新年を迎える事が出来た。


きっと父もその笑顔で家族の新年を迎えるためにそばを打っていたのだと僕は思った。

今年もまた父がいた時のようにそばで今年一年が始まったである。



         了

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