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闇商人
俺が闇商人とコンタクトを取ったのはちょうど2週間ほど前だった。
商人は人里離れた今はもう廃墟となったホテルを指定してきた。
闇商人が指定してきそうないかにもって場所だ。
残骸を掻き分け、約束の時間にその場所へとたどり着いた。
フロントを抜け、ロビーのフロア奥にその商らしき人物はいた。
商人は女だった。相手はてっきり男で黒のブランドスーツをバシッと着こなした格好と長めの髪のオールバック、口髭に葉巻を咥えたようなイカつい奴だと勝手に想い込んでしまっていた。映画に出て来そうなそんな感じだ。いかん、映画の見過ぎだ。夢と現実とでは大きな隔たりがあるというのは充分に承知のはずだったのだが、またしても肩透かしを喰らってしまったのだ。
それはともかく、女は年増で、まるで風俗店を営んでいて、女性たちのメンタルまで管理してそうな敏腕経営者、やり手婆さんそのものだった。
「予約した男だが…」
「何かご用ですか?」
「車椅子の男の紹介で……」
「こっちへ…」
お互いに合言葉を交わし、商人は俺を別室へと移動させた。
「何にします、色々とございますが…」
「そうだな、とりあえずリストを見せてくれ」
商人は俺の目をちらりと見ながらバックとスーツケースを広げて見せた。
そしてクリアファイルを俺に渡した。
「購買は現金か指定口座への入金、ローン可能、PayPay、各種ICでの支払いもできます」
俺は商人の顔を見て「ああ…」と答えた。
リストはこんな感じだ。
偽造パスポート ¥300000(30万円)
偽造免許証 ¥300000(30万円)
偽造保険証 ¥150000(15万円)
偽造株主優待券 ¥50000 (5万円)
偽造警察手帳 ¥200000(20万円)
偽装政府手形・偽手帳・偽証明書・偽逮捕状・偽医療診断書・偽死亡診断書・など各種
5万円〜15万円
除籍(死亡) ¥2000000 (200万円)
拳銃 ¥700000 (70万円)
自動小銃 ¥1500000(150万円)
真剣 ¥1800000 (180万円)
自家用ジェット(飛行機)レンタル1日
¥5000000〜(5百万円) から
変装マスク(変声器付) ¥3000000
(300万円)
透明人間になれる薬 ¥100000000 (1億円)
極上の女・男、1h・10万円〜から
著名人・VIP・1流〇〇・セレブ各種召喚
本人証明及び偽装工作¥7000000(700万円)〜
各種薬物
毒物・劇薬・安楽死薬物・核燃料・プルトニウム・ウラン¥10000000(1千万円)〜
珍獣、化学兵器生物(絶滅生物含む)
ツチノコ ¥15000000(1500万円)
キメラ ¥35000000 (3500万円)
コンドル ¥40000000 (4000万円)
オロチ ¥50000000 (50000万円)
エイリアン¥150000000(1億5千万円)
UMA ¥180000000 (1億8千万円)
ゾンビ(本物) ¥200000000 (2億円)
月の欠片¥1000000000(10億円)
火星の石¥10000000000(100億円)
うまい棒 (1本) ¥10(10円)
あなたの人生 ¥100000000000(1千億)
「どれにする?」
商人は俺に聞いた。
透かさず俺は言った…。
「あなたの人生を下さい…」
「兄さん、お目が高いね…」
「あんたがはじめてだよ、これ買うの」
「そう、これを買うためにわざわざあんたに会いにきたんだよ…こんな怪しい所までね…」
「あいよ、あなたの人生だよ」
「ありがとう!」
「100000000000円になります」
「安い!」
「一生に一度しかありませからね、コレ」
「分かってるさ、転売すれば5千億円くらいになるだろうな、いやもっと跳ね上がるかもな…」
「毎度あり…うまい棒サービスで付けとくよ」
「それはご親切にどうも…」
こうして俺は念願だった「人生」を手に入れる事に成功したのだ。
俺はお尋ね者の指名手配犯、WANTEDだった。警察やテロ集団、世界中の危険な組織からも追われるならず者。
リストにあったどの商品よりも価値があり、これからは俺の人生を謳歌出来るってもんだ。
自分に与えられた命より価値のあるものなんて、ないって事さ…。
了