
米糠最強説の謎に迫る。
「土壌王国、王道クエスト」シリーズの6回目。
米糠は何に効いているのか畑を想定した話
今回は畑での米糠の働きを想定していますが、
土質は培養土に含まれる土で考えています。
なので、どの土質でも同じ結果が得られるわけではありません。
知って欲しいのは米糠のちょっと特別な働きです。
家庭菜園で米糠を使う場合も考え方は同じなので、
参考にしてもらえれば嬉しいです。
米由来の残渣には、稲藁、籾殻、米糠がありますが、
稲藁のC/N比は70、籾殻のC/N比は75で、肥料としては向いていない上に
そのまま田んぼに漉き込むと分解の際に土壌窒素が使われて
土の中の窒素がかなり不足してしまうという厄介な性質があります。
ところが白米の薄皮である糠には、土壌栄養素にとって必要な
窒素、リン酸、カリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、ビタミン、ミネラル、食物繊維もバランスよく含まれるので、
土にそのまま撒くだけで肥料化できるとも言われています。
でも、本当にそうなんでしょうか?
有機肥料、有機堆肥を作る基本、実際に作業をするのは微生物で、
米糠自体は植物が吸収できる肥料の形にはなっていません。
「畑の土に撒くだけで」は間違いで、
畑の土に混ぜ込んで、土壌微生物に分解させれば、
肥料と、ある程度土を柔らかくする効果が期待できるだけです。
肥料として加工して効果があるのは「ぼかし肥料」で
これも、微生物が生ぬかより分解しやすい形になっているので
肥料分が少し多くなって、ある程度土を柔らかくする効果が期待できるだけです。
肥料分としては、米糠が持っている力以上の肥料分は期待できないし、
土をふかふかにできるのは、米糠の全体量以上の効果は期待できません。
でも、米ぬかは有機の材料としてはダントツに仕事をしてくれる
超優良材料であることには間違いありません。
効いているのは土ではないんです。
米糠が引き寄せる日本人が大好きな働き者の微生物
リフォレスターでは籾殻を分解することに特化した微生物資材
カルスーNCRを使っていますが、
一番相性の良い米糠はスターターにすら使っていません。
米糠を投入するのは、冬の活性が下がっている時と、
真夏になる前のリフォレスターを乾燥させる前。
それと、作物を収穫した後の土の中の微生物の数が減ったタイミングで
微生物の数をリカバーする時にだけ使っています。
つまり、微生物が弱ったり、数が減った時にだけ使いますが、
それは肥料化するためではなく、微生物を増やす目的です。
畑で米糠を漉き込んだ場合も、肥料やふかふか効果よりも、
ある微生物の数を増やす効果の方が多くなります。
それが、乳酸菌や、麹菌です。
カルスの微生物の詳しい種類などは分かりませんが、
米糠と反応した際に、発生する白い森が酒の麹や腐豆腐を作る際発生する
菌糸と同じだったこと、三鷹の公園のハイセンスガーデナーの方
から情報提供いただいたことで少なくとも、
米、稲にかかわる乳酸菌や麹菌が含まれていることがわかっています。
想像ではありますが、納豆菌も入っている気がする。
「いや、土に乳酸菌はいないだろう?」
というのは思い込み。
土にも乳酸菌や麹菌はいます。
でも、リフォレスター実験でわかっているのは、
乳酸菌や麹菌は普通の土の中ではそこまで強くはないらしいこと。
でも、たくさんいれば植物を病気から遠ざけたり、
虫や他の菌によって傷ついた根っこを短時間で分解して
腐敗菌が寄りつく隙を与えないなどのいい仕事をしてくれます。
畑に米糠を撒いたり、漉き込んだりするのは、
土の中の数少ない乳酸菌や麹菌の数を増やし、
その後にすき込む有機肥料を分解する要員の増強が目的なんじゃないかと思います。
効果的な米糠の使い方には工夫がいりそう
米糠の効果的なすき込み方があるとすれば、
それは2〜3回に分けてすき込むと良いのではないかと思います。
1回目は整地した畑に米糠だけをすき込む。できれば雨の前の日がいいかな。
2回目は1週間後くらいに有機堆肥と一緒にすき込む。
これもできれば雨の前の日がいいかな。
3回目はさらに1週間から10日後にもう一度有機堆肥と
糞系肥料も一緒にすき込む。
これも雨の前の日がいいかな。
理由は
1回目は米糠が好きな微生物だけを増やしたいので、
米糠だけすき込みます。
2回目は1回目に増えた微生物の餌として有機堆肥を加えますが、
米糠を足すことで微生物の活性が上がって米糠フィーバーで発熱します。
この熱で、有機堆肥が温まるので他の微生物も分解要因として呼び込めて
微生物の種類を増やすことができます。
この時の米糠は1回目の2倍入れたい。
なぜなら米糠フィーバーの発熱と蒸気で線虫やキノコなどの
消毒をしたいから。
3回目も2回目と同じ理由ですが、
3回目は糞系肥料が入るので、さらに別の微生物が加わり、
土の中の微生物の種類と量を増強します。
ここでも米糠フィーバーが起こるのでダメ押しの熱消毒もできるというわけ。
つまり米糠は
肥料や堆肥に効くのではなく、
ガテン型微生物を呼び込んで、
土壌微生物の層を厚くするエッセンスとしての役割と
熱による土壌消毒効果を狙える超優良材料というのが
我が実験の結果から導き出した米糠の働きです。
使う量の目安ですが、
リフォレスターでは25Lの培養土に対して米糠500gを3〜4回に分けて
入れているので、合計1.5〜2kgくらいなので、
1回目が土1kg、米糠1kg
2回目が土1kg、腐葉土または堆肥が20Lくらい、米ぬか1kg前後
3回目が土1kg、腐葉土または堆肥が20Lくらい、米ぬか1kg前後、糞500g
が目安かなぁ。
これだけを雪が降る前にやっておいて、
他の圃場より雪解けが早くなっていれば微生物が増強されたと判断できると思います。
微生物だって、食べ物があればどこへも行かなし、
微生物が多い圃場ではキノコ菌や線虫は寄りつきませんからね。
今回は畑を例にして米糠について書きましたが、
次回からはまた、家庭菜園の土づくりでの米糠の使い方をお話ししますね。