『夏:ホワイトサワー(Act.芽唯)』台本&解説【シチュエーションボイス】
こんにちは、レファルです。
この度、私が脚本を担当したシチュエーションボイス
「夏:ホワイトサワー(Act.芽唯)」が公開されました。
こちらは2022年4月24日(日)に開催されるイベントM3-2022春にて
頒布される、ギンクル 1stフルアルバム
『#甘酸っぱくなきゃキスじゃないっ』に収録されるボイスドラマです。
本記事は、その台本を公開すると共に制作背景等の解説をするものです。
台本
以下、台詞部分と他一部を抜粋。
(※コンセプト:シチュエーションボイス。聞き手を登場人物に見立て、それに対しヒロインが話しかける構成)
(※(聞き手「(セリフ)」)は筆者が想定する聞き手からの返答例であり、音源化される際は無音となる部分です)
(ヒロイン:小松千夏)
(性格:ドライ)
(※筆者は県外民のため土佐弁における文法、ニュアンス等の誤りは自由に修正してください)
(本編 ―起―)
(場所:千夏の家)
千夏 「あっつ~」
千夏 「家の中なのに汗でシャツがベトベト……」
千夏 「そういえば今年から社会人なんやっけ? 仕事は順調? 東京での暮らしは慣れた?」
聞き手 「まあまあかな」
千夏 「ふーん。一人暮らしって言いよったっけ。ちゃんと自炊しちゅー?」
聞き手 「最近はコンビニ飯ばっかかも」
千夏 「うへぇ、ええもの食べんといかんよ」
(本編 ―承―)
千夏 「はい、アイス。パキったから片方あげる」
聞き手 「ん、ありがと」
聞き手 「そっちはどうだったんだ? 最後の大会だったんだろ?」
千夏 「部活? ……夏の大会は予選落ち。最初はモテるかもなんて思うて始めたマネージャーやったけど、やっぱインターハイ行けんのは悔しいね。もらい泣きしちゃった」
聞き手 「それは……残念だったな」
千夏 「うん。やけんど、やっぱり一番悔しいがは本人たちやろうき」
(本編 ―転―)
千夏 「そっちは? ええ加減恋人はできた?」
聞き手 「全然。ていうかそれどころじゃねえよ」
千夏 「そうなんや」
千夏 「……じゃあ、ウチと付き合っちゃう?」
聞き手 「えっ!?」
千夏 「……そんなにビビらんでよ。そういうとこや思うよ、モテんの」
(本編 ―結―)
千夏 「ウチさ、夢があるんだ」
聞き手 「夢?」
千夏 「うん。ウチ、東京の大学に行きたい」
千夏 「実は去年くらいから勉強頑張っちょってさ、成績もええがよ。模試の手ごたえも悪うないし。親も先生も応援してくれちゅー」
聞き手 「へえ、すごいじゃん」
千夏 「やきさ、もし志望校に合格して東京に行ったら……一緒に住んでもええ? ご飯作っちゃるよ」
聞き手 「い、一緒にって……」
千夏 「さっきの、本気やき」
聞き手 「…………」
千夏 「あ、そうや。パンケーキも食べてみたいな。専門店とかあるんやろう? 連れてってよ」
聞き手 「ちょっと待て。俺と一緒に暮らすって、そんなの親が反対するだろ」
千夏 「ん? 言うたろう、親も応援してくれちゅーって」
(「親も応援してくれちゅー」の部分を露骨すぎない程度に強調)
千夏 「……アイス、溶けてしもうた。コンビニ行くけど来るよね。奢ってよ」
千夏 「──今度こそ、逃がさんき」(楽しそうに)
(空気感を大切にしたい、とのことでしたので、各無音は他ドラマより長めに。場面転換、聞き手の台詞以外の箇所にも適宜SEのみの時間を作っても良いかもしれません)
(扇風機の音、風鈴の音、グラスの氷が溶ける音etc…色んなSEを使ってみても面白いかもしれません(丸投げ))(レファル)
解説
アルバムについて
このアルバムはラブソングを専門に楽曲を制作されているボカロP、
ギンクル氏率いる音楽サークル「パンケーキキャッツ」が制作した
1stフルアルバムです。
アルバムには季節を彩る4編に加え、
プロローグ、エピローグを合わせた全6編のボイスドラマを収録。
この「夏:ホワイトサワー」はそのタイトル通り
夏をイメージしたトラックです。
声優として6編すべてに、VTuberとしても活動されている
芽唯氏(声優)(VTuber)を起用。素敵に演じていただきました。
「夏:ホワイトサワー」について
このトラックはプロローグ、エピローグを除いた4編のうち、
最後に制作されたものです。
声優の芽唯さんが高知県出身ということもあり、
「方言入りのボイスドラマ作りましょうよ」
というギンクルさんの一言によって方向性が決定。
参考資料として「あの夏、ボクはキミに恋をした。」(アルバム収録の楽曲)
のベース設定資料をいただきました。
ここでヒロインの運動部のマネジャーという設定をそのまま採用し、
本人との話し合いでバスケットボール部というところまでが決定。
あらかじめギンクルさんより
「夏は言葉数少な目で、空気感を大切にしたい」
との要望があったこともあり、
「夏休みに田舎住みの従妹の家に遊びにいって、
特にすることもなくダラダラとアイスを食べる」
というシチュエーションもここで決まりました。
参考資料をいただいたのが1月21日。
同日中にプロットを作成。
プロット内では野球部マネジャーとなっていますが、
この後の話し合いでバスケットボール部に変更。
最初野球部にしていたのは「夏の大会=甲子園」という図式が、
少ない文字数でかつ受け手にイメージさせやすく、使いたかったからです。
バスケはバスケでインターハイがあったので結果オーライですね。
元々は個人的に妹属性を付けたかったということもあり
「おにぃ」呼びをさせるつもりでしたが、
こちらもギンクルさんの意向でナシになりました。
じゃあ二人称どうすんのとなるわけですが、
レファル — 2022/01/22
お疲れ様です。
仕事の傍ら二人称について考えていたのですが、中々妙案は浮かばず……
「キミ」「あんた」
→すでに使ってしまっているため避けたい
「たっくん」的な名前ありきのあだ名
→「相手≒聞き手」という構造を取っている手前、極力固有名詞を匂わせる単語は使いたくない
「お前」「あなた」等
→年下女子のイメージから遠のく
といった感じで……
次善の策として二人称を出さない言い回しでセリフを構築するということも考えましたがいかがでしょう?
ということで二人称はナシということに。
会話のみで展開するシチュエーションボイスという形式で二人称ナシ。
書き手としての技量が試されましたが、何とか乗り越えられました。
その後ヒロインの名前を「小松千夏」に決定し、
いよいよ台本の執筆に取り掛かります。
ちなみに「小松」という名字は高知県で2番目に多い名字だそうですよ。
台本の草稿を提出したのも同22日。
「仕事の傍ら」とチャットで言っているあたり、
完全に仕事終わりに1本書き上げています。
確認後、独学で台詞を土佐弁に変換し、
ギンクルさんの知人にネイティブチェックをしていただき、
それを踏まえた決定稿を芽唯さんに提出したという流れです。
決定稿を提出したのは24日。
資料を頂いてから台本提出までわずか4日間の出来事でした。
ちなみに全編通してこんな感じのスケジュールで動いていました。
そして後日、芽唯さんから収録済み音声をいただき、
そのクオリティの高さにひっくり返ることとなります。
ネイティブの方言、あまりにも破壊力が高い……
方言も台本の指示通り自由に修正していただいているおかげで、
より臨場感溢れるものになっていてまさに圧巻。
台本の末尾にも記載がある通り、
全編通してBGMやSEといった編集を含む音回りをすべて他のメンバーに
丸投げしています。
しかし、実はこのトラックにおける蝉の鳴き声、
これ、芽唯さんの口から出ている音だそうです。
芽唯さんの特技の1つに「蝉の鳴き真似」があるとのことで、
アルバム収録楽曲「#ファインダー越しの夢のセカイ」においても
歌唱に加え蝉SEとしても参加されています。
前後関係としては楽曲が先なので、
この背景があって私からギンクルさんに提案した形ですね。
結果的にかなり全体の雰囲気も良くなったと思うので、妙案でしたね。
「ホワイトサワー」というタイトルは私と芽唯さんを含むサークルメンバー全員での話し合いにて決定。
本編にも登場する某パキれるアイスのフレーバー名から拝借しています。
食べたことあるけど、あれ美味しいよね。
王道のコーヒーも好きだしブドウのやつも好き。
全部好きじゃん。
ドラマ本編の解説については、特に無くてもすべて伝わるかと思います。
涼しい顔してその実メラメラと恋の闘志を燃やしている女の子、
いいですよね。
最後の「──今度こそ、逃がさんき」にどういう意味が込められているのか、
そこはみなさんのご想像にお任せします。
原案・監修 ギンクル氏よりコメント
バスケ部になった理由
前述の通り、当初は野球部のマネージャーの設定でしたが、
僕と仲良くしてくれそうな女の子は野球部のマネージャーはしてなさそうな気がしましたので、次点でバスケ部にしてもらいました。
バレー部の女の子からはいじめられていたので無いなというのもあり、
消去法です。
幼馴染について
僕は幼馴染がいませんので、全く幼馴染の萌えシチュエーションってのは
分からない状態です。
なぜレファルさんにシチュエーションボイス関係の台本を一任したのかというと、そういうところになります。
ギンクルのラブソングは、わずかなエピソードを薄めて味付けしたのを
二度揚げして小分けにしているだけなので、
こういう普通の人が体験したであろうエピソードとは無縁なのであります。
僕では手が届かない部分の物語を描いてくれるからです。
二人称について
当初、レファルさんから男性の呼称を「おにぃ」にするべきというアイデアを頂いたんですけど、
この呼び方をするのってアニメの世界だけだと思います。
勿論僕らはイマジナリーな恋愛の世界を描いているわけですが
「初恋追体験」というテーマがある以上、
リアリティを持たせるべきでもあると考えています。
あと個人的に、年上の女性のほうが好きなのであんまり「おにぃ」呼びをするようなゴリゴリの妹属性にそそられない、
妹属性を付けるにしても「しっかりめの妹」みたいな属性があるほうが性癖に刺さるというのがあります。
“二人称なし”という手法は流石だなと思います。
これは僕の持論のひとつなんですが、
好きな人の名前は呼ぶすら恥ずかしいので
二人称なしで呼んでしまうというのがあります。
名前を呼ぶと顔真っ赤になる、みたいな。
それを上手く反映出来たなと満足ですね。
方言について
僕は九州の田舎に住んでいますので、方言とはわりかしなじみが深いです。
だから逆に、あんまり自分自身では方言を発しないように意識しています。
もちろんイントネーションの端々には方言が混じっているとは思いますが、
かなりの方から方言が少ないと言っていただけています。
だから、LINEやインスタの文面とかで方言丸出しだったりするのを見ると
恥ずかしくなってスーッと血の気が引くというか。
しかし、僕からすると少し恥ずかしい存在の方言が、
都会のシティボーイ・シティガールの中では「かわいい」などと好評なので、敢えて方言シチュボを録ってみようと考えました。
TikTokでも方言の恋愛コンテンツは結構人気でもありますしね。
手が空けばそっち方面にも展開を考えたいと試行錯誤です。
結果めちゃくちゃ甘酸っぱくなりましたね。
声優さん自体の出身の方言ですので尚更リアリティが増すというか。
ホワイトサワーについて
4年前くらいにペンギンリサーチの野外ライブに行ったとき、
あさんという仲の良いオタクの男がいたので、
パピコの白いヤツの片方をあげたんですが、
彼が開けるのをミスって中身をぶち撒けてしまうという事故がありました。
そこから着想を得ています。
個人的にはパピコは茶色いやつが好きです。
さいごに
この夏シチュボ含め、
色んな状況でまるで曲のように楽しんでもらえるトラックが出揃いました。
特にこの夏のシチュボは、
ジリジリと暑いなか歩いてるときにぜひ聞いてほしいです。
空気感、ハッとするような間合い、ドキドキを加速させるセリフの数々。
きっとつらい炎天下もスっと涼しくなるに違いありません。
最後に
今回のシチュエーションボイスも収録されるギンクル1stフルアルバム
『#甘酸っぱくなきゃキスじゃないっ』は2022年4月24日(日)に開催の
M3-2022春にて頒布!!!!
ボイスドラマだけでも総再生時間約30分という超濃密なボリュームで、
あなたもきっと甘酸っぱい気持ちになること間違いなし!!
レファルの執筆活動10周年の集大成としても自信を持ってお届けできる
最高のクオリティとなっています!!
買ってね!!!!!!!!
おまけ
ここまで読んでいただきありがとうございます。
おまけとして、メモ書きに残っていた夏ドラマの初期案を公開します。
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では。
レファル