わたしの推薦図書(タレント本が好き)/真野愛子
最近は、お笑い芸人さんのエッセイが人気だったりします。
実際にご本人がちゃんと書いていて、見事な感性でこの世を切り取り、クスッとさせてくれたり、癒してくれたりする。
以下の人たちはエッセイの名手ですね。
これら、全部おもしろかったです。
しかし今回オススメしたいのは、こういった類の本ではありません。
わたしはタレント本が好きなのですが、特に興味をそそられるのが、明らかに自分で書いていない本です。
タレントさんが編集者からテーマを与えられて、それに対してしゃべったことをライターが文字起こしして、「ハイ、一冊できあがり!」こういうのが好きだったりします。
こういう本って、軽い。
というか、最初からあまり期待して買っていないので(笑)、おもしろくなくてもそれほど後悔しないし、万が一おもしろかったら得した気分になる。そんな妙な魅力があります。
有名なタレントの本を出したら、そこそこ売れるだろうくらいの魂胆でつくられた本って、わたし的にはヒマつぶしに最適だったりします。
そんな中で、すごくヒマをつぶせたのが有吉弘行さんの本です。
とにかく、ロクなことが書かれていません(笑)。
これらの本から、ひとつ、内容を紹介しましょう。
人間関係をよくするために、
『単純なヤツを使って自分の株を上げる方法』
として、こんなことが書いてありました。
たとえば、会社に気に入られたい上司や先輩がいたとします。
けど、その上司や先輩に直接ヨイショしてもあまり効果は得られなさそう。
それなら、同僚の単純そうなヤツと飲んでいる時に、わざと、
「俺、あの先輩のことマジで尊敬してるんだよ。でも恥ずかしいから先輩にだけは言うなよ」
とクギを刺すと、そういうヤツに限って先輩本人に、
「あいつ、先輩のことリスペクトしてるって言ってましたよ」
と伝えてくれるというのです。
この心理を利用しよう、と書いてありました。
なにそれ(笑)!
へんなこと、勧めないでよ(笑)。
きっと有吉さんは編集者からテーマを与えられて、
「あ、そういう場合はですね……」
とか言いながら、自由にしゃべったことをライターが文字起こししたんだと思いますが、独特の無責任感があって、そこが楽しかったりします。
もしご本人がちゃんと書いたとしたら、この軽薄さや腹黒さは出ないでしょう。
わたしは通勤の電車でこれらの本を読みながら何度も、
「最低!」
「バカバカしい!」
「いい加減にしてよ!」
と思ったものです。
その頃、わたしはОLをしていて、仕事に忙殺され、プライベートでもつらいことが重なり、人生のどん底でした。
ただ、電車に乗っているだけなのに涙があふれてくる情緒不安定さ。
ぼーっとすることもできず、かといって小説を読むような集中力もなく、ならばスマホで気になる記事でも目を通そうかと思うのですが、スマホって他人のしあわせがあちこちに載っていて結局悲しくなるので、見たくないというのが当時の本音でした。
そんな時にちょうどよかったのが、有吉さんや高田純次さんの本でした。
どの本も、そんなことわざわざ文字にして本にしないでよ(笑)!
というバカらしさで、心底軽蔑できました(もちろん褒めてます)。
どん底のわたしですら、軽蔑してよいと思わせてくれる懐の深さを感じました。
ちなみに有吉さんの『お前なんかもう死んでいる プロ一発屋に学ぶ「生き残りの法則50」』のAmazonレビューは、★4つです。
ロシアの文豪ドストエフスキーの小説『罪と罰』もレビューは★4つです。
だからといって、同じ価値でないのは言うまでもありませんが、世の中の人はそれなりにこういう本を楽しんでいるんですね。
そういえば、レビューにこんな一文がありました。
「自分は、けっこう有吉は好きだ。『猿岩石日記』も古本で読んだ。読んだら、捨てるつもりだったけど、面白かったので、残してある」
じつはわたしも読み終えたら速攻ブックオフに売りに行こうと思ってましたが、有吉さんや高田純次さんの本を読んでいるうちに少しずつ人生の底を抜け出せたので、お守りとして今も本棚に並べています。
男性を家に招いたら、
「おまえ、こんな本、読んでるのかよ?」
とか言われそうですが、そんな時は胸を張って、
「そうよ。大好きなの!」
と言うつもりは全然なくて、
「あ、仕事仕事。仕事で読んだだけよ」
とゴマかすつもりです(笑)。