ニッポン乗りもの紀行 第13回/渡辺雅史
放送作家&ライター集団『リーゼント』所属の渡辺雅史と申します。
半年に1回ほど、4週連続の集中連載方式で書かせていただいております「ニッポン乗りもの紀行」。こちらの記事をこれから週1回のペースで書いていきます。
コロナ禍で都内近辺しか巡れなかった「東京乗りもの紀行」から合わせると第5期となる今回、最初に取り上げる乗りものはこちらです。
最近、東京都内などの街の中で増えている、いろんな場所で借りられて、いろんな場所で乗り捨てできる自転車よりも快適な乗りもの。以前、このコラムでは「電動キックボード」や「電動バイク」を紹介しましたが、今回は「電動自転車」のシェアサービスを紹介します。
やってきたのは千葉県千葉市。JR総武本線の幕張駅。
幕張メッセなどがある幕張新都心地区にも近いこの駅ですが、高層ビルが建ち並ぶエリアへのアクセスはJR京葉線の海浜幕張駅の方が便利。総武本線の駅で降りてバスでアクセスする場合も運転本数の多い隣の幕張本郷駅を利用する人がほとんどなので、平日の昼間、この駅に降りると静かな印象を受けます。
そんな幕張駅の駅前広場の一角にあるのが、電動自転車の貸し出しを行う『ハローサイクリング』のポート。
『ハローサイクリング』は「電動アシスト自転車」のシェアサービスを全国各地で行なっていますが、千葉県千葉市と埼玉県さいたま市では「電動自転車」の貸し出しも行っています。
このように電動アシスト自転車の貸し出し場所で、電動自転車も借りることができるのです。注意しなければならないのは、電動自転車の貸し出しや返却は、千葉県千葉市と埼玉県さいたま市の”ごく一部”の電動アシスト自転車の貸し出し場所のみ。そのため、借りたり返したりする前にアプリで貸し出し場所や返却場所の確認が必須です。
先ほどから「電動アシスト自転車」「電動自転車」という言葉をたくさん使って、ややこしいと感じられた方もいると思いますので(いますよね…笑)、ここで2つの自転車の違いを説明しましょう。
「電動アシスト自転車」は、自転車のペダルを漕ぐときの力をモーターがアシストするというもの。イメージとしては自転車を漕いでいる時に誰かに後ろから押してもらっているという感じです。
そして「電動自転車」は、写真のようにペダルがついていて見た目は自転車っぽいですが、このペダルは足に力を入れてもグルグルと回ることがない、ただの足置き場所。バイクのように右側にあるスロットルを回すと動く、脚力をまったく使わずに動かすことができる自転車です。
そのため、道路交通法上の扱いとしては電動キックボードとまったく同じ。16歳以上であれば運転免許証がなくても利用できる乗りものとなっています。
操作盤を見ると、電源ボタン、ライトボタンのほか、最高20km/hの車道走行モードと6km/hの歩道走行モードの切り替えスイッチがありました。さらに左のハンドル下にはウインカーの操作スイッチもありました。
空いていた電動自転車を『ハローサイクリング』のアプリを使って予約。まずは歩道から車道へ向かうために歩道走行モードにしてスロットルを回したのですが、6km/hという早歩き程度のスピードは想像以上に遅い。遅すぎてまっすぐ進むのが大変で、ハンドルを左右に振らないと転んでしまいそうでした。電動キックボードも最近のものは6km/hの歩道走行モードがあると聞きましたが、50歳近くの運動神経・反射神経・バランス感覚が鈍くなっているおじさん(私)に、キックボードのような小さいタイヤで6km/hで走行するのは無理だと感じました。
車道に出モードを切り替え、スロットルを回すと、スイーッと快適なスピードで自転車が動き出しました。電動キックボードも車道走行モードは20km/hですが、電動自転車は車輪が大きいのでバランスが取りやすいです。
12分ほどで幕張新都心地区にあるJR京葉線の海浜幕張駅に到着。
さらに7分ほどでZOZOマリンスタジアムに到着。球場の目の前にあるポートに電動自転車を返却しました。
幕張新都心エリアは埋立地に造られた、車道も歩道も広く造られた場所。そのため、車道の左端を走行していても自動車の邪魔になるようなことはありませんでした。また、交差点は二段階右折のところばかりなので、自動車の間を縫って右折車線に入るようなことがなかったので快適に移動できました。
では、他のエリアを走った感じはどうなのか。ということで一度返却した電動自転車を再び借りて、スタート地点の幕張駅へ戻り、上り坂のある北側の方へと行ってみました。
電動キックボードや電動折り畳みバイクに乗ると、上り坂でスピードがでなくなるというのが、体重が90kg以上ある私にとってのセオリーだったのですが、電動自転車は一切スピードを落とすことなくグイグイと登っていったので驚きました。ただ、片側1車線で交差点の手前に右折レーンが出てくる、交通量の多い小回り右折の交差点を右に行くときは少々緊張感が……。ママチャリよりも少し速いぐらいのスピードが出るので、道幅が狭いところでもママチャリよりはスムーズに乗れるなという感覚でした。
そんな感じでトータル1時間ほど電動自転車に乗ってみました。乗って思ったのは、車輪が大きくて後部にウインカーがついているので都内で貸し出しを行なっている電動キックボードLUUPより安全性が高いなと。ただ、15分200円と料金が高めなので、千葉市内の電動自転車貸し出しエリアを移動する場合はバスの方が便利そうな感じがしました。またバッテリーの消耗も早く、借りる際アプリに「約40km走行可」となっていたのですが、10kmほど走った後に確認すると「約16km走行可」となっていました(私の体重が原因かもしれませんが……笑)。
前半で触れたように歩道走行モードで人通りのある歩道を行くのは私にとっては厳しいですが、歩道は手で押す、車道は車道走行モードで走ると決めて乗れば、電動キックボードよりも安全性が高くて、いい乗りものだと思いました。
次回は実用化に向けていろいろテストをしている乗りものを紹介します。
お楽しみに!
(つづく)
※「ニッポン乗りもの紀行」はいつも一部有料の記事なのですが、前回の連載で初回を無料としたところ、大変たくさんの方に読んでいただけました。そこで今回も初回は無料公開としました。次回からは、一部有料となります。ご了承ください。
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