YUI解体新書 AIを用いたアルバム分析
YUIとともに大人になった全ての人へ
このnoteはYUIを愛する筆者が最初で最後に記すYUIの全史である。
これまでYUIの全史をインタビューを通じて振り返ってきた。
が、それだけでは何か物足りない。
当時のインタビューだけなら自分でググればいいだけのことだ。
そこで今号ではYUIのアルバム全歌詞をAIを用いて本格的に分析していきたいと思う。
使うツール↓
AI(テキストマイニングツール)には下記のような強みがある。
❶ 全体像を把握する:
大量の文章があったとき、どのような話題が多いのか“ざっくり”と把握する
❷ 特徴を抽出する:
増加している不満や、年代別の観点の違い等について「ヒント」を探す
YUIのアルバムにはアルバムごとの性格があるが、まだ明確に言語化するまで捉えきれていないのが現状だ。
そこで今回、アルバムに登場するモチーフを4つに分け見ていきたいと思う。
アルバムに登場する4人のYUI
YUIの曲には大きく分けて4人のYUIが登場する。
①都会で戦う強いYUI
代表曲「again」「How crazy」「LIFE」
特徴:ロック 力強い歌詞 何かへの強い怒り
②海辺を駆け回る無邪気なYUI
代表曲「SUMMER SONG」「CHE.R.RY」「It's My Life」
特徴:速いテンポで明るい曲調 恋のはじまり 前向きな歌詞が多い
③ナイーブで内気なYUI
代表曲「Namidairo」「Umbrella」「LOVE & TRUTH」
特徴:低いキー 自分の不安 内面や相手への不満 後ろ向きな歌詞が多い
④青空広がる草原で歌うYUI
代表曲「Good-bye days」「to Mother」「HELLO 〜Paradise Kiss〜」
特徴:ゆっくりテンポで明るい曲調 暖かなラブ(広い意味での)ソング
こうしてみると何人もの自分を抱えた等身大のYUIが浮かび上がってくる。そしてどのYUIが前面に出てくるかで、アルバムの性格がガラッと変わってくる。アルバム発売順に詳しく見ていきたい。
(以下楽曲の組み分け独断と偏見も多分に含んでいることをご了承ください)(なお、太字がシングル曲になっている。)
内面に閉じこもりながら戦う少女 「FROM ME TO YOU」(1枚目)
③「ナイーブで内気なYUI」が全面に出てきているアルバム。
1話のインタビューで見てきたように、迷いながらも強くありたい・・・
強く生きたいだけど不安で押しつぶされそう。
「等身大の迷い」がアルバム世界全面に表れる。
だが、曲調のほとんどは明るく、相反する歌詞と曲の共存はYUIの非凡な才能を示した作品となっている。
だが、ナイーブで内気なYUIが多くを占めたのは、本作のみで、以降のアルバムの性格は異なる。
よってYUIファンの中には、熱狂的に第1作を支持するものも多い。
☆AIによるアルバム歌詞分析(頻出単語)
「ゆける」「わかる」「叶える」「なれる」「生きる」「right」「go」
といった自分を鼓舞するような前向きな単語に溢れている。
形容詞を中心に見ると
「明るい未来を幼いアタシが欲しがっている」
感情分析では全作品で最大のネガティブ指数を見せている。
AIによる3行要約
アタシまだモガいている
シンプルに生きてみたい
自分のことはわからない
アルバムの要素をピタリと抜き出していてすごい。
戦う少女、強いYUI 「CAN'T BUY MY LOVE」2枚目
前作のナイーブで内気なYUIは後ろへと下がり、初期衝動を吐き出すように、強いYUIが奏でるロックサウンドが炸裂する。
☆AIによるアルバム歌詞分析(頻出単語)
「君」と「アタシ」が頻出。
二人称的関係性を強く意識しているのが伺える。
前作では「ゆける」canの要素が強かったものが本作では「ゆく」より強い宣言に変わっている。
依然として「わかる」が頻出だ。「見える」「見る」「乗り込む」といった主体的な動詞が目立つのも本作の特徴といえよう。
「欲しい」「愛しい」「幼い」が消え、「悲しい」「冷たい」「深い」といった青っぽい形容詞が増えた。
前作よりポジティブ要素が若干上昇したものの、悲しみは深いままだ。
AIによる3行要約
そうじゃなきゃやってらんない
そんな気がしたの
嘘でも信じ続けられるの
ちょっとよくわからない要約だ。
3人のYUIが共存する「I LOVED YESTERDAY」
円熟期を迎え、各要素がバランス良く散りばめられている。
活動休止前の集大成といっても過言ではない名盤である。
☆AIによるアルバム歌詞分析(頻出単語)
「あなた」と「あたし」が依然として高いが、「あたし」がカタカナからひらがなに変化している。
そして「Laugh away」の影響か?「笑う」「見つける」といったポジティブな言葉が増えたものの、依然として他人に対して用いる言葉は「わかる」だ。
YUIのアルバム前半史は「あなた」と「あたし」の「わかる」を巡った相互理解の歴史なのかもしれない。
1作目以降あまり登場していなかった「ほしい」が再登場。
ポジティブが過去最高値に到達。
加えて、悲しみが減り、好きが上昇した。
AIによる3行要約
もちろんそうですいつだってそうです
いい子にしてたら
いつもあなたがそう言って
そ、そ、そ、そうですね。
シリーズ屈指の暖かみと新たなるYUI「HOLIDAYS IN THE SUN」
シングルでは「Namidairo」以降、自身の内面を歌った、暗くナイーブな歌は登場しなくなる。
おそらく「Namidairo」の売り上げがかんばしくなかったのが原因かもしれない。
こうして初期ファンをとらえた内向きな曲は少なくなり、明るく穏やかな曲が増加していく。
牙を抜かれたオオカミのように、曲からアクが急速になくなっていったのもこの時期だ。
この頃、初期ファンの多くが離れていったのを記憶している。
そして、YUIのもうひとつの武器だった、天真爛漫な少女性も変化。
モチーフが少女から大人の女性へと成長していく。
「偽りの愛を育てるの」「絶望の手前、快楽の途中」など初期では絶対に歌うことのなかった歌詞だろう。
ロック曲を除けば、混沌の時代を迎えつつあった。
☆AIによるアルバム歌詞分析(頻出単語)
これまで登場のなかった、日常言語「会う」が最頻出。
「あなた」と「あたし」の2人称の物語は終わりを告げ、「涙」「Happy」「君」に取って代わられた。
やいやいやいやいやい!!!
ポジティブ度は前回と変わらず、
「好き」と「悲しみ」と「怒り」が綺麗な三国志を作っている。
AI ここで一句
期待してんの
泣きたくなって
楽しくなりそうだ
香ばしく味わい深い。使い込まれたお化け屋敷のようだ。
イメージの錯綜 天真爛漫なYUIの消失「HOW CRAZY YOUR LOVE」
3.11後を強く意識させる楽曲「Green a.live」をはじめとして、悩みと救済を意識した楽曲が増える。
前作以上に過去の4人の「YUI」には収まらないたくさんの「YUI」が登場した。
もはや無邪気な少女「YUI」は消滅の危機である。
原点回帰するようにカタカナの「アタシ」と「あなた」そして「わかる」が復活。
「いいんだよ」と「アタシ」や「あなた」に問いかけ、
そして全ては「きっと大丈夫」という希望的観測に通ず。
救済というテーマは喜びの上昇を生んだ。
AIくんの要約
どうかしてる?
繰り返している
気がしてて
当時のYUIが壊れる手前だったという後年のインタビューを見た後だと、ゾッとするような要約だ。
そしてラストシングル「Fight」をリリース。
サビでは「頑張れ」「頑張れ」を連呼。
「命燃やして続く現実」の果てに、自分自身をも燃やしつくし、ついにYUIは永遠に思い出となった。
Feel my soul「私の魂を感じろ!」と歌っていたYUIは最終的にレコード会社にジャックされ、「頑張れ」を連呼する自己啓発セミナーの教祖のようになってしまった。
まとめ
シリーズYUIも本作が最終回だ。
YUIを形作ってきた様々な顔の一端
①都会で戦う強い少女
②海辺を駆け回る無邪気な少女
③ナイーブで内気な少女
④青空と草原で歌う少女
と出てきた物語のモチーフ
「あなた」と「アタシ」が織りなす相互理解の物語。
こうとらえ直すとまた楽曲も違って響いてくる。
そして内面と外を強く意識した作家であったのかもしれない。
そんなYUIは現在もFlower Flowerとして活動中である。
そこではYUI時代にはなかった革新性でファンをあっと言わせている。
正直、魂をもう一度盗まれそうになった楽曲「パワフル」
これからの活躍と進化を願いつつ、この項の筆を置きたい。
読んで頂きありがとうございました。