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仙臺古談

# 其の六繪  : 『 茄子の馬 』の事。


東北では年中行事を旧暦で行うところが多く、仙台も七夕まつり然り、その他の年中行事も旧暦に従い行われるという例が少なくない様です。

そんな仙台のお盆のお話です。

仙台では 『 ホトケサマ 』は 旧暦の七月十三日の夕方に家々に帰り、十五日の朝まで留まると言われています。

近年まで市中では十三日までに仏壇に盆棚を設け庭先に松火を焚いて、家々のお墓にも盆棚を作り切子行燈を灯し御霊をお迎えする準備整えます。

果して『 ホトケサマ 』は十六日の朝早くにお帰りになるので、それまでにお棚のものを一切盆菰に包んでまとめて茄子の馬に背負わせて広瀬川に流すのだそうです。

仙台では茄子が馬でありますが、旧仙台藩領内の一部では茄子を獅子に、胡瓜を馬にするところもあったと伝わります。

仙台で茄子の馬である理由については『 ホトケの祀りも済んで何事もナス 』という意味だそうです。

仙台では昭和の四十年代初めまで、河原ホエド • ( 乞食 ) が家々にやって来て銭をもらってお盆のお棚の残飯の処理を引き受けており、その中から食べられるものを抜き取って自分の食事として、茄子の馬、胡瓜の牛を刻んで福神漬けとして売り歩いたとされ、それが『 仙台福神漬け 』の始まりだとも言われています。

仙台では昔、『 福神漬けは家に売りに来たものを買って食べるものではない 』と注意されたという背景にはこの様な理由があったらしいのです。

しかしこれらの『 精霊流し 』の行事も、広瀬川の汚染に繋がるとして昭和四十年の半ばくらいにはすべての町内で中止されていった様です。


                                                              ー  続く。

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