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12人の4つの季節の48のストーリー - Yokohama 48 scenery storys - ②

# 002.  - 理宇  -           Riu        春。


      ○

理宇は何か全身の体中に激痛を感じて目を覚ました。

一瞬、この状況が理解出来なかったが、すぐに自分はどこかの病院のベッドに寝かされており、自分の顔の上には心配そうな表情を浮かべた母親と親友の真由美が自分を覗き込んでいる姿が見えた。

( えっ、私どうしたのぉ… ? )

と、ちょっとパニックになりかけて飛び起き様としたのだが、その右腕には点滴のチューブ、右足はギプスで固定されており、アタマには包帯を巻かれ、鼻のアタマには絆創膏が貼られていて、何よりも全身が痛くて起き上がれなかった。

そんな様子の理宇を見て真由美は、

『 この程度で済んで、運が良かったというか、理宇、あなたは不死身なの?  本当にこれだけで済んでよかったんだから… 
風の強い日に突然、階段のいちばん上でジャンプしたらこうなるのよっ!』

と呆れ顔だ。

そんな真由美の言葉に、『 … あぁ、 』と理宇も一瞬でこの状況を理解した様だ。


        ○

その日、春休みが間近の春分の日の前日、今年は横浜はちょっと遅れて朝から春一番の強風が吹いていた。

山手の丘の上にある女学園に通う理宇と真由美は、テスト終わりで今日は午前で授業は終了だった。

2人は校門で一緒にいたクラスメイトと別れて、風で靡く短い制服のスカートを気にしながらテストの話よりも、もうすぐ来る春休みの予定の方が気になる様子で石畳の歩道を歩き出した。

2人は、山手の丘の本通りから元町に下る石段に続く細い路地に入ると、真由美は話の途中で思い出した様にポケットからスマホを取り出し、

『 理宇、そう言えばこの前の話、覚えてる? 』

と切り出した。

『 春休みの前半はスケジュールを開けといてね、この前のヤツらから春休みにWデートのお誘いのメールが来てたわッ!』

数日前の日曜日、2人でみなとみらいで遊んでいると、2人のちょっとイケてるヤンチャな年上の男子に声をかけられたのだ。

その場ではどうしても済ませないといけない用事があったので断ったはずだったのだが、真由美はちゃっかりそのうちの1人とアドレスを交換していたらしい… www   

『 うそぉ、ワクワク… こんなところで告られても心の準備が止まらなぁい!』

と理宇はそう言うと、よっぽど真由美の話が思いもかけずに嬉しかったのか、

『 やったぁ!』  

と突然、両手を上げて叫んで石段の上で大きくジャンプした瞬間、ちょうど春一番の強風が吹いて、理宇は 『 きゃぁ~ッ! 』と糸の切れた凧の様に石段のいちばん上から飛ばされて下に転げ落ちて行った!



        ○

『 … という事で、もう春休みは当分はベッドでゆっくりしてるのよッ! 

私1人で行ってもいいんだけど、残念だけど今回はお断りって事にしておくわ… 』

真由美は理宇の母親がいる手前、話をぼかして言ったつもりだったが、母親は何もかもお見通しといった風に、

『 真由美ちゃん、いいのよ、当分は本人をベッドに縛り付けるか見張ってないと、理宇の事だからまたここからでも糸の切れた凧の様に男子とのデートに飛んでっちゃいそうだものねッ!』
 
と真由美と寝ている理宇にいたずらっぽく微笑んだ。

そんな母親の言葉に理宇は、

『 …そう、男子なんか星の数だもんねッ!』 

と、強がりなのか、ぷうっとふくれっ面になって、まだまだ痛みを感じる包帯とチューブが繋がっている両手でゆっくりアタマの上までブランケットをかぶってしまった。

そんな大怪我をしているにも拘らず元気そうな理宇に安心した様に2人は顔を見合わせて微笑んだ。

 
                                                                         ー Fin. 



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