俺たち変わんねーな。
たかしは、炬燵の上に置いてあるキャラメルを指差し、
一個貰っていい?
と言い、俺がどうぞと言う前に、包み紙を素早く剥がし、キャラメルを口に放り込む。
キャラメル久しぶりに食うな。そうだ、キャラメルと言えば予備校のときさ、
サイコロキャラメルの空き箱と箒で、三角ベースやったよな。エレベーターホールで。
そうそう。懐かしいなぁ。
あれ楽しかったな。それから、お前がさあ、
俺が思い出話の続きを話している間、たかしはもう一個いい?と言って、二つ目を口に放り込む。
そんな俺たちももう4年だよ。お前さあ、就職決まったか?
と俺が聞くと、たかしは決まり悪そうに、
まだ決まってない。親からガンガン電話かかって来るし、面接はうまくいかないし、正直焦ってるよ。
そう答えてため息を漏らしながらも、三つ目のキャラメルを口に放り込んだ。そう聞いた俺も実は全く同じ状況だ。俺たちは、さっきの盛り上がりから一転、気分はどんより重い空気に包まれる。そんな重たい空気の中でも、たかしは平然と、ポイポイ、キャラメルを口に放り込んでいる。それを見て俺は、
なあ、それうまい?
と、たかしに尋ねた。たかしは
普通に美味いよ。なんで?
と答えた。俺はニヤリと笑い
それ、蝋燭なんだよ。偽物。
と言うと、たかしは
え!マジ?オレ蝋燭食ってたの?
と言って笑い出した。
俺、めっちゃ馬鹿じゃん。だけどさ、お前も一個食ってみ?結構イケるから。
そうたかしは言って、キャラメルを差し出した。俺は仕方なしに口に入れる。
あ!美味い。
だろ?
だけど俺たち、マジで馬鹿だよな。クリスマスの夜に蝋燭なんか頬張ってさ。
そう俺が言うと、たかしが
いいんじゃないの。俺たちらしくてさ。
と言って、2人でゲラゲラ笑った。
(了)