トヨタが大学推薦を撤廃する本当の理由

トヨタは、来年度から、大学の推薦枠での採用を撤廃し、自由応募へ切り替えることを発表しています。

今、自動車業界が置かれている状況を考えると、一昔前なら、車に必要な知識なの?と言われるような分野の技術者が、今の車に必要とされる知識を有する技術者よりも、より必要であるという状況なのだと思います。

車がネットにつながることで、コンピュータ業界のニーズと重なってしまう。通信機器や、組込みソフトの開発が出来る人材が必要

カメラが車のあらゆる場所に取り付けられ、それで車の場所や、他社との距離をはかる。そうなるとカメラの技術が必要となってくる。

新素材。電池の開発そのものも、当然だが、軽量化、素材強化が電池の持ちに影響する。これを実現しようとすると化学や電池の技術者が必要になる。計器類はフロントガラスに集約されるとなる。ガラスと液晶の親和性などの研究も必要となる。

などなど。

自動車が出来てから初めての大きな転換点だから、自動車業界が置かれている状況を考えると従来の研究からだけでは取り入れられるものが不足すると判断した結果なのだと思います。大学の研究室が推薦する人材が問題なのではなく、今推薦される研究分野では幅が狭くて、この転換期に先陣をきるためには、それでは足りないという結論になっただけだと思います。新入社員の自律性や内部に刺激をなんて言っていますが、そんなことはこじつけだと思います。

従来から大学はトヨタに対しては、本当に優秀(と思われる)人材を推薦していると思います。だから、推薦枠を廃止するということは、そうやって入社された方々が使えないからとかそういった理由でもないと思います。どういった採用をしようとも、仕事ができない人は一定数います。それは仕事をする能力が足りないか、その職場が合わないかのどちらかです。大学や成績で人は仕事はできません。仕事をする能力と勉強ができる能力は違うものですが、そこに至る努力を積み重ねるという意味では、仕事に結びつくことももちろんあります。

トヨタが、ガソリンエンジンと自分で運転することからの大きな方向転換を決断したということの証だと思います。トヨタは社会のためにやっているわけではなく、社会の進む向きがこれだから、率先して第一人者になることを目指しただけです。それを目指さないと、会社がなくなるのは自明のことだからです。この結果大きく影響を受けるのはやはり下請けだと思いますが、それを助ける気持ちはトヨタにはさらさらありません。(トヨタに限らず下請けにやさしい企業はありません。)今日も、さっそく、全国の工場で、休業というニュースが流れていますが、そうであっても自社には部品を持たないポリシーを貫き続けています。

筆者は以前、脱炭素社会の実現の問題ということで記事にしましたが、脱炭素の実現に犠牲が伴うのを政治の力で回避すべきだと思っています。

トヨタの採用における転換は、内燃機関中心の研究から、EV、自動運転、新素材、Maas へシフトしていくためだと思います。おそらくそれが実情です。

また、トヨタのIT革新推進室や情報セキュリティ推進室は、他社のそれとはまったく違うものです。一般企業だとこれは社内のシステムに関してのものですが、トヨタの場合は、これはクルマへの付加価値を生み出す研究を行う部署です。そう考えると従来型のIT技術者とは違う観点の人員採用が必要になっています。

トヨタが学歴社会に一石を投じた形になっていますが、決してそうではなく、単に採用の基準を一部変更しただけで、来年度の就職内定者の出身大学と学部学科が判明してから、トヨタが何を目指して採用枠を変更したかどうかは議論すべきではないかと思います。

筆者は、トヨタが、「応募時に履歴書などに卒業する大学の記名をせずに、内定を受けるまで、公表しなくてもよい」という決断をしたなら、素直に拍手を送りたいというのが、正直な思いです。



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