あまやりん

20代社会人。思ったままに書いています。主にエッセイ。 Twitter:https://twitter.com/RinAmayanote

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自炊が埋めてくれるもの

とある日の夕食先日とある理由から夜家に一人になったから、夕食を作ることにした。ぱっと思いついたのは豚丼。仕事終わりで19時をまわっていたけれど、せっかくなら美味しいものを作りたいのでお気に入りのスーパーまで車を走らせる。 この時間ならではのお値打ち品に手が伸びそうになるのを我慢して、目的の豚肉、長ネギ、玉ねぎを一通り揃える。思わずこまぎれを買ってしまうのは大学生時代に一人暮らしをしていた頃と変わらないけれど、アメリカ産かカナダ産ではなく、国産を選べるようになったことに、当時

    • オレンジのキャップ

      今年の桜は例年よりも少し遅く、4月に入ってから満開になった。そしてあっという間に散ってゆき、季節はすっかり春のど真ん中である。吹く風に、冬にはなかったぬくもりと、若干の湿気。少し体を動かすと、適度に汗ばむ陽気の日が続いている。 そんな季節の移り変わりに乗じて、いつの間にか自販機のホットドリンクは、少しずつ姿を消した。私の職場の自販機には、ミルクティーとおしること、その他数本のホットドリンクが、一番下の列で肩身が狭そうに置いてけぼりを食らっている。彼らもあと数週間後にはお別れ

      • ホームラン

         最終回、2点ビハインド。おそらく最後の打席になるであろう。開き直って振り抜いたところに、ちょうどボールがやってきた。  ボンっというウレタン性バットから響く音は、芯を食ったか判断しづらい。ボールを叩いたというにはあまりにも手応えがない感覚であったから、どちらかといえば外したであろう。レフトフライか、、そう思っていたが、打球方向を追っていた視界の隅で、2塁審が手を回していた。フェンスオーバー?まさか。しかし打球を処理しようとする選手が誰1人いないところからしても、どうやら本

        • 嬉しい再会

           「もしもし、○○日に2名で予約をしたいのですが」  意を決して、元バイト先に電話をかけた。すると、アルバイト時代に一番お世話になった専務が電話に出た。○○ですけど、わかりますか?試しに訊ねると、やだ、つい昨日○○元気にしているかって話をしてたところだよ、と返事が返ってきた。虚をつかれたけれど、嬉しさが込み上げた。実に、3年振りの会話だった。  コロナ禍が、もう3年目に突入して久しい。徐々にこの病との付き合い方も見えてきた。ようやく、ずっと行きたかった元アルバイト先の料亭

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          回鍋肉の思い出

          少し例年よりも暖かいと思っていた秋も、ようやく冬の様相となってきた。人肌が少し恋しくなるこのごろ、人肌じゃなく、回鍋肉で少しだけ満たされてしまう単純な心が、ここにある。 東京の味 好きになったのは、じつは実家を出てからだ。それまでは別に嫌いというわけではないけれど、数ある中華料理の中で敢えて回鍋肉を食べたいとは思わない、くらいのものだった。それが今、人肌恋しい季節に食べたいと思うくらいの好物までになったのには、いくつか理由がある。 きっかけは友人の家に遊びに行ったときに、

          回鍋肉の思い出

          休日はパスタとともに

          最近、平日の昼ごはんはもっぱら、パン屋のサンドイッチだ。パン屋と言っても手作りのサンドイッチだけ売っている小さなお店のサンドイッチ。これがまた、毎日食べても飽きない程美味しい。 その店には店頭販売で、袋売り100円の野菜も時々売っている。一人暮らしをしていた頃の性がいまだに残ってしまっているのか、実家暮らしの身ながらよくチェックしてしまう。そしてこれまた、かつてのバイト先で好きになったししとうが、1袋100円で売られているのを見て「これは買い」だと思ってしまった。 ちょう

          休日はパスタとともに

          恋しい日々

          不健康な休日ここ最近は割と仕事が忙しく、休日も何かと予定が入ることも多かった。この連休は、これといって予定がない。不思議なことに、忙しい時には喉から手が出るほど何もない一日が欲しいのに、手に入れた瞬間、実はそんなに「何もない1日」を求めていなかったのではないかという、一種の冷めた感情に陥ることがある。 普段なら気晴らしに出かけたり、料理をしたりという時間を過ごすけれど、なぜだか今日は気持ちが入らない。外はこんなにも天気がいいのに、その太陽が一切当たらない屋根の中で不健康に過

          恋しい日々

          夕焼けと記憶

          夕焼けを見ると、無性に写真を撮りたくなるのは、スマホを持ち出した高校生の頃から変わらない。この写真は、わずかばかりの残業に追われた、仕事の帰りがけに撮ったもの。職場の駐車場で、誰に見られている訳でもないのに人目を気にして、さりげなく撮ったものだからうまく撮れなかった。こういう小ささは、我ながら好きじゃない。 でも、たったこれだけの夕焼けで感動して、一日の仕事の疲れが少し吹っ飛ぶ心を持てている状態の自分は、嫌いじゃない。 残業をしてもまだ明るい世界に体を放り出せるのは、

          夕焼けと記憶

          すっぴんセブン

          私は東京で、コンビニ沼にはまった。 一人暮らしを始めてそこそこの頃はまだ、多少意識を高く持っていたから、朝ごはんだって休みの日の昼ご飯だってしっかり自炊していた。飲み物だって実家みたいに麦茶をパックと水から作っていたし、生活必需品も大きなスーパーまで出向いていた。 でも1年も経たないうちに、その全てを済まそうと思えばコンビニで済ませられることと、その楽さを覚えてしまう。まさにコンビニ沼である。 特にひどかったのは就活が本格的に始まる3年後期から4年前期にかけて授業が少な

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          最後の洗車

          ※この記事にはドラマ『コントが始まる』第7話までのネタバレを含みます 土曜10時の日本テレビのドラマ『コントが始まる』の第7話が5月29日に放送された。コントが始まるの内容をとても簡潔に説明すると、高校時代の同級生で結成されたコント集団マクベスが、10年間鳴かず飛ばずで解散を迎えることになるところから始まる、20代後半の大人がもがきながらも前に進もうとする、青春群像劇だ。他にもストーリー上では不思議な縁でつながった、これまた人生にもがく姉妹が重要な存在として登場するが、ここ

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          とりあえず生きてる

          「私はゼミ活動で、〇〇市のメディアによるプロモーションに取り組みました。中でも最も力を入れたのは、現地インタビューにおいて地域で実際に暮らす人が抱える課題を、いかに引き出すかということです。インタビューを開始した当初は、2~3言で会話が途切れ、なかなか話を広げることが出来ませんでした。  そんな時に先輩から、いきなり相手に本題を聞いても答えるのは難しいというアドバイスをいただきました。そこで私は、自分だったらどのようにインタビューされたら答えやすいかを考えました。そして、本題

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          1年経ったらしい

          noteで初めて記事を書いてから、1年が経ったらしい。最初の方はほぼ毎日書いていたのが、最近では自分の時間が出来たときに、書きたいときに書くというスタンスが定着している。その結果、月に2本くらいしか書けなかったこともある。 毎日書いている人、週に何回も書いている人に比べたら、1年間続けましたという言葉の重みは薄まるかもしれない。胸を張って1年間取り組みましたとも少し違うかもしれない。それでも、日々何かを感じながらそれをアウトプットする場を自分なりに意識しつつ生活できたことは

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          あしたもちゃんと起きること

          じっとりとした一日だった。今日の暑苦しさを形容するのにこれ以上の言葉はないかもしれないくらいだ。 私の住んでいる地域では、例年にないくらいに早い梅雨入りをした。本来なら夜になれば虫の声が聴こえてきそうなところが、今もしっかりカエルが鳴いている。こう書くと誤解が生まれそうだけれど、カエルの声が嫌いなわけでも何でもない。カエルが鳴くのは6月になってからであってほしいだけで。 夏が少し顔を出したような、それでもまだ春の心地よさも混じった5月の風が好きだった。大体毎年この時期くら

          あしたもちゃんと起きること

          「耳たぶくらい」が分からない

          こんなはずじゃなかった という経験は、人生においてなるべくなら避けたいところである。それにすべて自分の選択や置かれた環境において導かれる人生で、自ら言い訳のように使いたくないところもある。それでも「こんなはずじゃなかった」ことに、直面せざるを得ないこともまた宿命かもしれない。 今日の昼はパスタを、どういうわけか麺から自作しようと思い立った。昨日の夜、思い立った。早速作り方を調べると強力粉が必要らしく、買い出しに行った。 様々なレシピを見ても大体小麦粉と卵だけでこねて作って

          「耳たぶくらい」が分からない

          12年ぶりのグラウンド

          スポーツ少年団でまず教わることと言えば挨拶、道具を大切にすること、仲間を大切にすることといった基本的なことだ。決して競技の技術云々ではなく。そしてそれはグラウンドという場に対しても同じで、入るときには「お願いします」後にするときには「ありがとうございました」と一礼する。そして、来た時よりもきれいにするかの如く、グラウンド整備も忘れない。競技をする者にとって競技場は神聖な場所なのだ。 スポーツ少年団に所属して野球をしていた小学生時代。それから12年ぶりにとある目的でよく使って

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          たまには料理に時間をかけて

          スパイスカレーのすゝめ一人暮らしをしていた大学時代に食用のスパイスに興味を持ち、様々なレシピを参考にして料理に応用することに挑戦してきた。中でもスパイスカレーはその名の通りスパイスが主役となり味に直結し、使うスパイスの種類も多い。 連休初日、いきなり何の予定もない穏やかな休日となったため、久しぶりにスパイスカレーを作ることにした。 参考にしたのはこちらのレシピ。ただ、レシピでは鶏肉を使うところを、今回はスーパーで安く手に入った豚バラの塊を使用している。 隠し味は…そして

          たまには料理に時間をかけて