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FINAL FANTASY XIIIシリーズについて(LIGHTNING RETURNS編)

※ゲーム後半についての記述があります。

『LIGHTNING RETURNS FINALFANTASY XIII』は2013年11月21日にスクウェア・エニックスからリリースされたRPG。Playstation3とXbox360で発売され、現在はPC版(Microsoft Store/Steam)を購入することもできる。

本作は「FINAL FANTASY XIII」シリーズの第三作目に当たり、前作『FINAL FANTASY XIII-2』の直接の続編である。シリーズの完結編となる本作は、「FFXIII」において主人公的な存在だった「ライトニング」が再び主人公として復帰している。なお、前作ではライトニングの妹「セラ」が主人公となっていた。

前作・XIII-2についての記事はこちら

前作のエンディングでセラは死亡し、歪んだ力「混沌(カオス)」が世界へ流入する。セラを失ったことを悔いたライトニングは、自責の念から長い眠りにつく。それから数百年後、「ノウス=パルトゥス」と呼ばれるようになった世界では人間は歳を取らず、子供が生まれない状態になっていた。不老であっても不死ではない人間は少しづつその数を減らし、終末を迎えようとしている。世界終焉の13日前、神の命によって目覚めさせられたライトニングは、人々の魂を救済する「解放者」という使命を与えられる。彼女はセラを蘇らせることを引き替えに、解放者の役を引き受ける。

冒険の舞台 ノウス=パルトゥス

舞台となる「ノウス=パルトゥス」は前作までの「グラン=パルス」が変貌した世界。大きく四つのエリアに分かれている。

光都ルクセリオ

救世院という宗教組織が治める都市。終末に向かう世界で住民たちは来世への救いを求めている。近頃は解放者の名を騙る殺人事件が発生している。

ユスナーン

かつてのライトニングの仲間でセラの婚約者だった、太守スノウが収める都市。毎日祭りや演劇が催され、人々は享楽に耽っている。また、この世界の大半の食糧はユスナーンで生み出されている。
ウィルダネス

自然が残る緑豊かなエリア。人々は点々と集落を作り、自給自足の暮らしを送っている。かつて混沌の流入が始まった場所とされる。

デッド・デューン

厳しい気候の砂漠で、盗賊団が跋扈する無法地帯。
遺跡には秘宝が眠ると言われている。

四つのエリアはそれぞれがある程度の広さを有しており、列車に乗ることで移動できる。また一部のエリアは地続きになっている。各エリア毎にかつてライトニングと共に戦った仲間や、因縁のあった人物が登場し、それぞれのストーリーが展開される。
世界に存在するNPCの数は非常に多く、彼らはドアを開けて建物のなかに入ったり、モンスターに攻撃するといった行動をとり、これまでのシリーズよりも生活感の増した振る舞いをする。

解放者の使命

ライトニングに与えられた解放者の使命は、終焉に向かう世界の生命を新しい世界へ導くこと。具体的には人々の頼みを聞いて問題を解決したり、モンスターを倒すといった行動を指す。ありていに言うといわゆるクエストのことだ。こうした行動を取ることで「輝力」というエネルギーが溜まる。ゲーム内ではリアルタイムに時間が流れ、朝6時にライトニングが「方舟」と呼ばれる空間に帰還するというサイクルを持っている。方舟で「世界樹ユグドラシル」に輝力を捧げることで、世界の余命を最大13日間まで延長させることができる。
解放者の使命はメインクエスト、サイドクエスト、祈りのキャンバスの3種がある。先に挙げるものほどクエストに時間が掛かり、それぞれ趣も異なる。
メインクエスト
本作の軸となるストーリーを進行させるクエスト。ライトニングが過去に関わったキャラクターたちが関わってくる。
サイドクエスト
エリア内に居るNPCから依頼されるクエスト。彼らを救済することは解放者の使命である。
祈りのキャンバス
各エリアに設置された掲示板「祈りのキャンバス」に記された依頼を受注するクエスト。内容はアイテム集めであることが多く、アイテムさえ持っていれば受注後すぐにクリアできる。

これらのクエストをクリアすることでストーリー上では人々の魂の解放がなされ、ゲーム上では金銭やステータスアップの効果を得られる。ライトニングの使命と能力強化が直接結びついた恰好となっている。
開発側は本作のコンセプトを「ワールドドリブン」と名付けている。これは刻一刻と変わるゲーム世界の状況に揺さぶられたプレイヤーが、それに応じてどの事象にどう関わっていくのかを決めていくことだという。具体的には時期や時間帯によってNPCから受けられるクエストが変わるといったことを指している。先ほど述べたNPCの増加や振る舞い、時間制限のあるゲーム世界といった要素はこのコンセプトを支えるために新たに導入されたものだろう。
ライトニングは解放者として超常の力を持ち、「グローリーポイント(GP)」というポイントを消費してその能力を使用できる。例を挙げると世界に流れる時間を止めたり、別の場所へのワープ、戦闘中の技や魔法の使用など多岐に渡る。能力はメインシナリオの進行度に応じて開放されていき、クエストの達成などを通じてGPのストックが増加する。これらを駆使することがゲームを進行させる鍵となる。

ウェアチェンジを駆使した戦闘

本作の戦闘はライトニングを操作し、基本的に彼女一人で行う。前作までのリアルタイム性の高いコマンド戦闘を引き継ぎつつ、よりアクションに近いものへ変化した。プレイヤーがライトニングを直接動かすことができるようになり、敵との距離を操作できる。4つのボタンに割り振られた攻撃や防御といったコマンドを入力すると、即時行動を取り、ゲージの続く限りコマンド入力を行える。敵の防御を崩し、その隙に攻撃を叩き込むという基本システムは前作までと共通している。新たに加わった要素が「ウェアチェンジ」だ。これは戦闘中にライトニングが衣装や装備を変えるというもので、ゲームシステム上では入力できるコマンドやステータスの変化、消耗したゲージの回復といった意味合いを持つ。ウェアチェンジはこれまでの「FFXIII」シリーズにおける「オプティマ」や、『FINAL FANTASY X-2』の「ドレスフィア」といった、戦闘中にキャラクターの役割(ジョブ)を変更できるシステムを本作に合わせて改良したものといえる。また即時性の高いアクションのようなコマンド戦闘は、過去にはFFVIIの外伝『CRISIS CORE』、後の『FINAL FANTASY零式』でも見られ、ボタン長押しで行動する点は次回作『FINAL FANTASY XV』に引き継がれている。
ゲームをクリアするまでに登場する敵は種族ごとに倒せる数が決められており、最終的には絶滅させることができる。種族最後の1体「ラストワン」は強敵だが、その分得られる報酬も大きい。

人間が主人公の物語

第一作目の『FFXIII』は章ごとに操作するキャラクターが変わり、ゲーム後半に全員が集結する群像劇の形式だった。第二作『XIII-2』はセラとノエル、ふたりの主人公を切り替えることができ、両者の物語が語られた。
対して、本作でプレイヤーが操作するのは一貫してライトニングひとりだ。操作できるキャラクターがひとりになったのは、本作の物語がライトニング個人に焦点を当てたものであり、彼女自身を語るものになったからだ。『LIGHNING RETURNS』は世界を救済する物語という体裁をとりつつ、究極的にはライトニング個人が救済される物語である。
前作では時間の矛盾をテーマに据えたが、今作は人間の心の矛盾を取り扱っている。作中、ライトニングは自身に感情の高ぶりがないと語り、彼女は自己の性格や役割、記憶は神に作られた偽りのものではないかと思いつつ、神から与えられた使命を忠実に遂行する。そして彼女を見守るホープもまた、自身の肉体や記憶の真贋を疑い、またライトニングからも疑われている。彼らは互いに自身が自身である記憶はあるが、そこに実感はないと言う。
本作はこれまでのXIIIシリーズ以上に、ギリシア神話や思想からの影響を大きく感じる設定となっている。たとえば、人が不老となり子供が生まれない世界というのは、ヘシオドスの『仕事と日々』の記述にある黄金時代を元にし、後半に登場する「忘却(レテ)の禊」は忘却の川レーテを引用したものだろう。本作のキャッチコピーでもある「神話の終わり、人の物語」には、黄金時代の後に訪れる鉄の時代(人間の時代)と、これまでXIIIシリーズで繰り返し描かれてきた、機械の神ファルシによる管理社会から脱しようとし続けた人間たちの姿が重ねられている。
「忘却の禊」の死者の記憶の消失というテーマは、元来同じシリーズであった『FINAL FANTASY零式』で重要な要素となっている。

FFXIII-2の記事でも書いたが、初代FFXIIIとそれ以降の続編は切り離して考えても問題がない。
なぜならFFXIIIは一本のゲームとして完結しているからだ。
XIII-2はそのエンディングを捻じ曲げて続編を作った矛盾そのものを物語としている。
そして、LIGHTNING RETURNSは収集のつかなくなった物語を無理やりに解決しようとする。XIIIシリーズは長らく機械の支配者ファルシとそれに支配される人間を描いてきたが、本作では機械仕掛けの神「至高神ブー二ベルゼ」が最後に現れ、世界を自身の望む正しい形にリセットしようとする。いわばブーニベルゼはXIII-2以降の物語を無に帰そうとしているのだ。ブーニベルゼの意に反抗するという行いは、本作時点のライトニングにとって、セラが死亡するXIII-2の物語の結末を受け入れるということでもある。全能に思えたブーニベルゼも、他のファルシと同様に人の心と混沌を視ることはできない。物語の進行に合わせ都合よく発生する混沌は、ブー二ベルゼの監視に陰を作る幕として機能する。混沌と共に現れる少女・ルミナが、ライトニングを挑発するような行動をとることで、プレイヤーはライトニングの秘めた心を知ることができる。ブーニベルゼの監視下にあるライトニングとホープは、自分自身と相手が本物であるという確信や実感が無く、ブーニベルゼの作り上げた幻想なのではないかと互いに疑心を抱いている。しかし彼らは最終的に、直接言葉を交わすことなくブー二ベルゼを欺くために協力し、自らの役を演じきる。互いを信じ合わなければ、神をも欺く演技は出来ない。そしてライトニングたちは同時に、我々プレイヤーをも欺いている。全てを終えた彼らは役と衣装を脱ぎ捨て、このゲームを進行させた我々プレイヤーの操作から逸脱した場所へ向かう。『LIGHTNING RETURNS』は、我々から見てフィクション上にある人物たちが、いまの互いを真実だと肯定しあうことで、『FINAL FANTASY』という物語やプレイヤーから自己を取り戻し、自律することを描いている。

神話が、複数の人々によって語り継がれていくことだとすれば、人の物語とは、自分で自分を語ることなのだろう。
同じ神話体系を持つ「ファブラノヴァクリスタリス」シリーズとして発表されたFFXIIIシリーズ三作(FFXIII、アギト、ヴェルサス)は、いずれも最終的に形が大きく変容した。それらの基本となった『FINAL FANTASY XIII』ですら、最後には『LIGHTNING RETURNS』という当初とは大きく異なった形になった。このシリーズは、現実世界のプロジェクトの変遷が、物語に明確に反映された、そんな無軌道さに面白みがある。
物語や神、我々の世界の都合で姿や役割を変えられ、翻弄されながらも、ライトニングは自己が自己であることを強く抱き続けた。彼女はFFXIIIが2009年に始めた神話にトドメを刺し、自分自身の手で解放者という役割を解き放った。


・FINAL FANTASYシリーズポータルサイトLIGHTNING RETURNSページ
https://www.jp.square-enix.com/game/detail/lrff13/

・STEAM版

・FINAL FANTASY XIIIシリーズについて
FFXIII編:https://note.com/reddot/n/n4fa6e0895e04

FFXIII-2編:https://note.com/reddot/n/na1c4b1a4370b

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