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事業責任者の右腕を目指す。HRBP室が描く、戦略人事の未来像
こんにちは、マネーフォワードビジネスカンパニーのHRBP室です。
「HRBP(HRビジネスパートナー)」という言葉を聞いたことはありますか? 昨今注目されることも多いためご存知の方も多いと思いますが、経営戦略にひも付いた人事戦略の策定と実行を担う存在のことをいいます。
マネーフォワードグループの売上高の6割以上を占めるBusinessドメインを運営する「マネーフォワードビジネスカンパニー(以下、ビジネスカンパニー)」には、「HRBP室」という組織が存在します。
HRBP室が目指す、戦略人事のあり方とはーー。HRBP室のメンバーに詳しく聞いてみました!
事業の未来をHRの力でともに描きたい
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マネーフォワードビジネスカンパニー HRBP室 室長
早川 直樹(はやかわ なおき)
2005年、30人規模のアーリーベンチャーで新規事業立上げを経験したのち、2009年から株式会社ワークスアプリケーションズで人事を経験。その後、2014年に新卒採用領域で起業し、2018年に売却。2019年、代表退任、売却先企業へ転籍、そして2020年に退職。その後、ITミドルベンチャーで人事責任者として人事部門を管掌。2022年、マネーフォワードに入社。
――HRBP室の役割について教えてください。
早川:HRBP室は、各事業部門と密に連携し、HRの視点から事業成長を支援する組織です。
目指すのは、事業責任者の「右腕」として伴走すること。事業責任者が描く戦略を成果につなげるためには、その戦略を理解し、実行できるメンバーが不可欠だと考えています。
どのような人材が、どれだけ必要なのか。どう採用し、支援・評価すれば最大限の力を発揮できるのか。HRBPは文字通り“パートナー”として、これらの問いに向き合い、実行まで伴走して行くことを目標にしています。
HRBPが事業の方向性を理解し並走することで、実現の可能性が少しでも広がり、非連続的な事業成長に貢献できる状態を理想としています。
――一般的な人事部門とは、どのような違いがありますか。
早川:HRBP室は、ビジネスカンパニーにおける事業戦略と人事戦略を連携させ、人や組織に関する課題を解決し、事業成長に必要な施策を企画・実行する組織です。
一方、マネーフォワードにはビジネスカンパニーに限らず全社横断の人事施策を担当するPeople Forward本部があります。こちらの組織では、人事制度の設計や人材育成、労務管理など、全社レベルの仕組みを構築し運用する役割を担っています。
HRBP室は、「事業成長にコミットし、HR領域からアプローチする組織」とイメージしてもらうと分かりやすいでしょう。
もちろん、全社人事との連携は不可欠です。HRBP室は現場の事業戦略に即した人事施策を担い、全社人事にそれを共有する。一方で、HRBP室が全社的な施策を実施する際は、全社人事と連携しながら進める。HRBP室と全社人事は、強固なパートナーシップのもとで機能しています。
――HRBP室はどのような経緯で立ち上がったのでしょうか。
早川:マネーフォワードでは、事業ドメインごとに組織を分け、それぞれを一つの会社のように運営する「バーチャルカンパニー制」を採用しています。
HRBP室が立ち上がった当時、各事業は急成長フェーズにあり、採用ニーズが爆発的に増加していました。そこで、ビジネスカンパニーCOOの竹田さんが主導し、事業により密着した支援を実現するためにHRBP室を設立しました。
当初のミッションは、事業成長に必要な人材の確保、すなわち中途採用がほぼ100%。それが事業戦略と最も密接に結びついたHR課題だったからです。
しかし、組織が拡大するにつれ、採用以外の課題も多様化していきます。
組織の課題は、表面化してから対処していては手遅れになることが多い。だからこそ、1年先、2年先を見据え、先回りして施策を打ち続けることが、持続的な成長には欠かせません。
「事業成長を阻むHR課題を包括的に解決する組織」として、支援領域の拡大に着手し始めています。
――今後、HRBP室が目指す姿を教えてください。
早川:事業のフェーズは変わりつつあります。単純に人を増やせば成長できるフェーズは終わり、収益性を高めながら、より強い事業組織へと進化していく段階に入っています。
この変化の中で、「どのように人事計画を立て、それをどうコントロールするか」という事業側の要請がますます高まっています。
そのため、「現在、どのような人材が、何名いるか」だけでなく、「1年後、2年後にどのような組織を目指すべきか」を可視化し、組織・人材戦略を構築していくことが重要です。
HRBP室は、立ち上げ時は5名ほどのチームでしたが、現在は15名規模に拡大しました。HRという手段を用いながらも、事業戦略への深い理解と、事業の成長に並走できる力を持った組織でいるために日々精進しています。
私自身、事業マネジメントの経験があり、事業サイドでの経験が豊富なメンバーも在籍しています。事業側と同じ視点で議論ができるからこそ、「事業を理想の姿へと導くために、この先の組織・人材をどうするべきか」と相談をされるパートナーでありたいと思っています。
「仲間」を集めるための、カルチャーマッチ重視の採用
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マネーフォワードビジネスカンパニー HRBP室 BP部 部長
錦織 友也(にしきおり ゆうや)
新卒で日本生命相互保険会社に入社。リテールを中心に個人・法人営業を経験。その後、ビズリーチにてインサイドセールス業務を担った後、マネージャー業務を経て、マネーフォワードのHRBP室の立ち上げに参画。2023年より現職。
――HRBPの関与により、採用に好影響があったと伺っています。
錦織:FY24の入社数は前年と比較して、大きく伸ばすことができました。しかし、採用市場やトレンドは日々変化し、採用難易度は年々高まっています。そのため、定量・定性の両面から継続的に分析を行い、最適な採用手法や採用チャネルの見直しを進めています。
もちろん、「採用できれば成功」ではありません。入社した方が事業の中で活躍し、事業成長につながることが真のゴールです。さらに、事業が成長することで、よりチャレンジングなミッションに挑戦できる機会が生まれる。これは、個人の市場価値向上にも繋げていただけるのではないかと感じています。
早川さんが言っていたように、ビジネスカンパニーの各事業は、売上高の高い成長率を維持しつつ、利益を生み出せる組織体への変革を目指しています。そのため、今まで以上に「採用の質」が問われるフェーズに入っています。
――採用の「質」とは、具体的にどのような点を重視しているのでしょうか。
錦織:私たちが採用において最も重視しているのは、「スキル」や「経歴」ではなく、カルチャーマッチです。これは、マネーフォワードの強さの源泉でもあります。
例えば、マネーフォワードには「Respect」というカルチャーがあります。「自分さえ良ければいい」ではなく、お客さまや同僚などステークホルダーに感謝と敬意を持って誠実に向き合う姿勢を意味します。
マネーフォワードのメンバーは、純粋にユーザーに向き合い、誠実に価値を提供しようとする人がとても多い。そこがお客さまに選んでいただける理由のひとつだと感じています。ですので、採用プロセスでの判断においても「Respect」を体現してくださる方かどうかは大きなポイントです。
時には、「入社いただければ、事業の重要ポジションを埋められる」と感じる方と出会うこともあります。しかし、どれほど優れたスキルや経験を持っていても、マネーフォワードのカルチャーと共鳴できない方であれば、採用を見送ることもあります。
長期的に事業成長に貢献できる方にご入社いただくために、カルチャーとのフィットを最優先しているのです。
――採用活動において、マネーフォワードならではの特色はありますか。
錦織:特に特徴的なのは、事業サイドが「仲間を集める」という意識を強く持っていることです。
一般的に、「採用は人事の仕事」と認識されがちですが、ビジネスカンパニーの事業サイドは、決して人事任せにはしません。むしろ、HRBP室と事業部が共にオーナーシップを持ち、「この採用プロジェクトを成功させよう」と並走する文化があります。
HRBP室としても、採用戦略の提案や採用ナレッジの提供を行いますが、それはあくまで伴走の役割。事業部とHRBP室が強いパートナーシップを築き、同じ方向を向いて採用に取り組めることが、マネーフォワードの採用力の強さにつながっています。
これは、カルチャーが浸透しているからこそ実現できるスタイルだと感じています。
オンボーディング支援で早期の立ち上がりを実現する
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マネーフォワードビジネスカンパニー HRBP室 企画部 リーダー
高野 麻奈未(たかの まなみ)
新卒でITミドルベンチャーに入社。新規人材事業の立ち上げでCA/RA業務に従事した後、人事へ異動し、採用(新卒/中途)マネージャーと人事企画(カルチャー・ブランディング)を経験。その後ITメガベンチャーにて新子会社立ち上げの1人人事として、採用/育成/組織活性化/労務など幅広く携わり、2023年10月に当社に入社し現在に至る。
――採用段階でカルチャーマッチができていると、スムーズな受け入れにつながりそうですね。
高野:入社する方と受け入れる事業部側が、早期の活躍に向けてプロセスを同期できるかどうかで、事業への貢献度は大きく変わると考えており、オンボーディング支援の強化に重点的に取り組んでいます。
採用時点でカルチャーマッチができていても、事業フェーズや職種・レイヤーによって最適な受け入れの形は異なります。事業の成長が加速するほど、必要な人材の要件はより精緻化され、求められる役割も変化していく。そのため、単なる「入社手続き」ではなく、採用した方を最短距離で戦力化し、事業成長に直結させるための仕組みとしてのオンボーディングが不可欠です。
HRBP室は、事業を横断してオンボーディングのベストプラクティスを蓄積・最適化し、各事業に展開する役割を担いたいと思っています。現在は、入社確定時点で事業側と連携し、オンボーディングプランを策定するフローを標準化。フォーマットの整備も進め、遅くとも入社初日には、戦力化までの明確なロードマップを提示できる状態を目指しています。
このプロセスを積み重ねることで、事例を増やし、改善点を蓄積しながらオンボーディングの精度を高めているフェーズです。
――理想的なオンボーディングの形とは、どのようなものでしょうか。
高野:理想は、ポジションがオープンになった時点で、オンボーディングプランが完成している状態です。
そもそも、採用はゴールではなくスタートライン。採用活動の本質は、「事業成長につながる人材を迎え入れ、適切な役割を果たせるよう支援すること」です。そのため、ポジションごとに求められる人物像、スキルレベル、ミッションを明確化し、それに基づいたオンボーディング計画を事前に策定することが理想的です。
このプロセスが確立されていれば、入社3ヶ月後の理想的な状態を事業部側とHRBP室が共通認識として持ち、必要なサポートを事前に用意できる。これにより、入社後の立ち上がりがスムーズになり、結果として新たな人材がいち早く価値を発揮し、事業成長へ貢献する好循環を生み出せます。
さらに、オンボーディングの精度が高まることで、事業計画の達成に必要なポジション設計と、人材戦略の連動が強化される。単なる「受け入れの仕組み」を超え、組織の中長期的な成長戦略と密接に結びついたオンボーディングを実現することで、採用から育成、配置転換に至るまでの一連の流れがシームレスにつながる。
この仕組みを突き詰めていくことで、事業の非連続的な成長にも大きく寄与できると考えています。
ミドルマネジメントの早期活躍を伴走型移行支援で支えたい
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マネーフォワードビジネスカンパニー HRBP室 BP部 副部長
福村 知久(ふくむら ともひさ)
新卒でエン・ジャパン株式会社に入社。法人営業を経て人事部門に異動し、新卒・中途採用マネージャーに従事。大手総合電機メーカーへの出向を経験した後、SaaS型リファレンスチェック事業の責任者として事業開発に携わる。以降、新規事業領域のHRBPに従事し事業譲渡も経験。2024年7月に当社に入社し現職に至る。
――採用×オンボーディングの相互作用は、事業に大きなインパクトを与えそうですね。
福村:その通りですが、非連続的な事業成長を持続的に実現するためには、ミドルマネジメント層の活躍支援が重要なトリガーの1つになると感じています。
半期ごとに大きな組織再編が行われる中、新たに部長クラスのポジションに就いていただく社員のみなさんへの移行支援は、その後の事業の成長曲線を大きく左右します。多様なバックグラウンドを持つタレントが活躍しており、初めてマネジメントに挑戦するケースも少なくありません。
ミドルマネジメントが現場で実践しながら役割へ順応し、早期にパフォーマンスを発揮できる支援体制を整えていくことが大切だと考えています。
――いわゆる階層別・役職別の研修とは異なるのでしょうか。
福村:もちろん、研修も実施しますが、支援方法の拡大を目指しています。
マネーフォワードとして大切にしている考え方やマネジメントのインストールを通じて、部署や職種を超えて求められるケイパビリティの獲得支援を、「研修」と「伴走」のハイブリッド型で実現したいと構想をしています。
例えば、月1回以上の1on1をHRBP室と実施。この場では、単なるマネジメントスキルの学習にとどまらず、1年間をかけて役割に対する課題に伴走し、ハンズオンのサポートを含めて実行支援します。組織や事業のフェーズによって求められるマネジメントスタイルは異なるため、HRBPが壁打ち役となり、状況を分析・整理しながら適切なアクションプランのサポートをすることも重要な役割です。
また、ミドルマネジメントと経営層・上位マネジメントの橋渡し役も担いたいと考えています。プレイヤーからマネジメントに役割が変わると「マネジメント業務や自身のキャリアについて相談できる相手がいない」と感じるケースは決して少なくありません。そこで、HRBP室がミドルマネジメント層の上長にあたる副本部長陣を巻き込みながら、相互理解を深め、より解像度の高いコミュニケーションを促進する機会の提供にも着手しています。
通常業務ではあまりない同レイヤーの他組織メンバーとの交流機会を創出し、ナレッジ共有を通じたシナジー効果の最大化にも着手をしています。特にマネーフォワードはマルチプロダクト展開をしているため、事業ごとの最適解は一つではありません。現場への貢献性を最大化するための伴走支援をアップデートし続けられるように努めています。
今後は、支援対象の拡大を視野に入れ、レイヤーや職種ごとの伴走支援を体系化し、採用×オンボーディングといった複数の人事施策を連動させて現場への貢献度を高めていければと考えています。
解像度の高いタレントマネジメントに挑戦する
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マネーフォワードビジネスカンパニー HRBP室 BP部・企画部兼務
萩原 香織(はぎわら かおり)
新卒でメーカー営業を経験したのち、大手人材エージェントにてCA/RA業務に従事。ITベンチャーにて人事としてのキャリアをスタートさせ、2022年3月に当社へ入社。採用だけでなく人事企画を兼務し、主にエンゲージメントサーベイの推進に寄与。2023年12月から現部署にてBP部と企画部を兼務。
――複数の人事課題を同時に解決するのは、非常に高い難易度を伴うのではないでしょうか。
萩原:HRBP室がハブとなり、各人事施策やプロジェクトを単独で動かすのではなく、有機的に統合して事業をバックアップできる姿が理想です。特に、採用・オンボーディング・マネジメント移行支援を連携させるだけでなく、働く社員のみなさんが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境づくりと事業成長を両輪で回す仕組みへと磨き上げる必要があります。
その一環として、現在HRBP室が取り組んでいるのがタレントマネジメントの高度化です。鍵となるのは、「何のためにタレントマネジメントを行うのか」という目的の明確化と、人材データを単なる情報の集積ではなく、事業成長の意思決定に資する情報へと昇華させること。
適切な人材データとポジションの深い理解を掛け合わせることで、最適な組織設計を可能にするだけでなく、個々の人材のスキルや能力の変化を予測し、適切なタイミングで次世代リーダーの育成を仕掛けることもできます。
こうした仕組みを確立することで、外部採用への依存度を下げ、強い組織を内製する基盤を築くことができると考えています。
――人材データを「意味のある情報」へと進化させるために、必要な要素は何でしょうか。
萩原:重要なのは、単にデータを収集するのではなく、「何を満たせば意味のあるデータとなるのか」という基準を定義し、それをもとにデータの収集・整理・管理の仕組みを設計することだと考えています。
そのためには、個々のスキルや経歴に加え、評価データを評価とは異なる文脈で再解釈する視点が求められます。この実現に向けて、「人材戦略会議」の設置にチャレンジしています。ここでは、社内のどのポジションにどのような人材が存在し、それぞれがどのような期待を背負っているのかを整理することで、評価とは異なる軸でのタレントマネジメントの最適化を図っています。
タレントマネジメントが理想的に機能すれば、事業全体の変革を促し、成長を大きく加速させることができる。特に上位ポジションにおいては、事業部を横断した最適なポスト設計や、事業の要請に基づいた戦略的な人材配置が欠かせません。
そうした精緻なタレントマネジメントの実現が、事業の持続的な成長を支える基盤となると信じています。
人事の枠を超えた事業成長パートナーを目指して
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――最後に、HRBP室のメンバーに対して抱く期待をお聞かせください。
早川:現在、HRBP室として目指すべき姿が明確になり、それが実現したときの事業・組織への貢献度も具体的にイメージできるフェーズに入ったと考えています。
そのため、今後は各施策の実現可能性を高め、「どうすれば理想の状態に近づけるか」というロードマップを描いていくことが重要になります。
その上で、メンバーに大切にしてほしいのは、「機能」ではなく「事業」に向き合うことです。HRBPは人事の枠を超え、事業の成功を直接的に支えるポジション。事業成長に向けたさまざまな課題に対し、フラットな視点で広域に見立て、幅広いソリューションを提供してほしいと考えています。
この視点を見誤ると、目指すべき世界観には到達できません。もし、人事の機能に特化したり、そこに固執したりすると、HRBP室は「機能を提供する組織」にとどまり、本質的に事業に向き合えなくなってしまうからです。
もちろん、誰もが得意な分野や専門性の高い領域を持っており、そこにフォーカスすることは自然なことです。しかし、HRBPの価値は、あくまで「事業」を軸に考え、その上で最適な人材戦略・組織戦略を設計することにあります。
機能ではなく「事業」に向き合うからこそ、HRBPの存在価値は生まれます。それは、事業サイドからの信頼へとつながり、「相談の質」が上がることで、その手応えを実感する場面も増えていくはずです。
HRBP室が「事業責任者の右腕」を目指し続けるために、ともに歩み続けてもらえることを期待しています。
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「人事の枠を超えた、事業成長の鍵」とされるHRBP室。その役割と期待の大きさに、ワクワクしたインタビューとなりました。
HRBP室では、「事業部の右腕」をともに目指してくれる仲間を募集中です!HRBP室のミッションに、少しでもご興味をお持ちいただけましたら、是非お気軽にご連絡ください!